日本固有種<シュレーゲルアオガエル>は可愛い鳴き声が特徴 アマガエルやモリアオガエルとの見分け方とは?
こどものころからニホンアマガエルが大好きで、見つけた時には手のひらに乗せて遊んでいました。
でも大人になってから、ふと「アマガエルに似ているけど、鳴き声が少し違うカエルがいるな」と気づきました。それが私と「シュレーゲルアオガエル」との出会いです。
ちょっとマニアックだけど身近なカエル、シュレーゲルアオガエルの魅力と、シュレーゲルアオガエルと似ているアマガエルやモリアオガエルとの違いについてご紹介します。
シュレーゲルアオガエルの生態や暮らし
シュレーゲルアオガエルは、日本の本州・四国・九州に広く分布するカエル。一見して外国風の名前がついていますが、日本にしか生息していない、日本の固有種です。
ちなみにこの名前は、このカエルの標本を研究したオランダの学者ヘルマン・シュレーゲル氏が由来となっています。
シュレーゲルアオガエルは、アマガエルのように水田や用水路などの水辺に生息し、特に春から初夏にかけて活動が活発になります。体の色は明るい緑色で、肌はなめらか。地味な印象ですが、よく見ると目が金色がかっていてとてもきれいです。
彼らは夜行性で、主に夜に活動し、「コロコロコロ……」という柔らかく響く鳴き声を発します。春の田んぼでこの声を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
また、誕生の仕方もアマガエルとは異なります。アマガエルは水の中で卵から孵化しますが、シュレーゲルアオガエルの産卵は水の外で行われます。
池の周りの草や田んぼのあぜ道など水辺に近い陸上に、まるで「泡の塊」といった見た目の卵塊を産みつけます。親ガエルが作った泡の中に卵があり、その中でオタマジャクシに孵化したあと、雨によって流されて下にある水に移動する──という少し変わった生まれ方をします。
シュレーゲルアオガエルも他のカエル同様、寒い時期になると水辺の近くの地面の下や倒木の陰にじっと隠れて冬眠に入ります。そのため、毎年暖かくなるといつの間にか鳴き声が聞こえてくるというわけですね。
よく似ているアマガエルやモリアオガエルとの違い
シュレーゲルアオガエルは、見た目がニホンアマガエル、モリアオガエルととてもよく似ていて、間違えられることがよくあります。ですが、いくつかのポイントを押さえれば、十分に見分けることができます。
まず注目したいのは瞳の瞳孔。アマガエルはクリっとした真っ黒な瞳が特徴ですが、シュレーゲルアオガエルの瞳孔は横に長く、ヤギやタコなどの目に似ています。ちなみにモリアオガエルも横長の瞳孔なので、シュレーゲルアオガエルかモリアオガエルか迷った際には次のポイントで判断しましょう。
シュレーゲルアオガエルとモリアオガエルを見分ける際のポイントは、瞳の色と体の大きさにあります。
シュレーゲルアオガエルは瞳が黄色なのに比べ、モリアオガエルは瞳が赤みがかった橙色なのが特徴です。また、成体の大きさもシュレーゲルアオガエルは最大5センチ程度ですが、モリアオガエルは8センチとかなり大きく成長します。ちなみにアマガエルは大きくなっても、シュレーゲルアオガエルより一回り小さい4センチほどの大きさです。
モリアオガエルも地上で泡を使って産卵しますが、2種の産卵場所には大きな違いがあります。シュレーゲルアオガエルは前述のとおり、水から少し離れた地上付近で産卵しますが、モリアオガエルは水面に張り出した枝など、木の上で泡の卵塊を作って産卵します。
どちらも、水中で他の生き物に卵を食べられないようにするために編み出した生存戦略なのかもしれません。
シュレーゲルアオガエルに出会うためのヒント
シュレーゲルアオガエルを見つけやすいのは、4月から6月にかけての田植えシーズン。夜の田んぼや水辺に耳をすませば、「コロコロ……」とやさしく響く鳴き声が聞こえてきます。夜にそっと田んぼ沿いを歩いてみると、じっと葉っぱにしがみついているシュレーゲルアオガエルに出会えるかもしれません。
水の豊かな日本には多様な種類のカエルが生息しています。どのカエルも、それぞれに違った生態や暮らしぶりを持っていて、知れば知るほど面白く、そして愛着がわいてきます。
観察の際には、そっと見守るように自然と命の不思議に想いを馳せてみてください。
(サカナトライター:halハルカ)
参考
両生類(カエル・イモリ)図鑑ー地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所