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空から見るニッポン。ただいま、広島県瀬戸内海の上空です!

さんたつ

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300万年前、長大な断層である中央構造線の横ズレによって生み出された巨大なシワは、のちに本州中国地方と四国に挟まれた美しい瀬戸内海となる。その名のとおり、陸が迫り出して瀬戸(海峡)が多く、海が広がる灘も散在し、奥行きのある豊かな景観を生み出している。気候も穏やかで、日本海や太平洋から吹きつけるモンスーンの水分が、中国山地、四国山地でそれぞれ雨や雪となってしまうため、雨が少ない。一方で、近代では本州に近くかつ隔絶した島の環境から、毒ガスの兵器工場があった島や、軍の検疫所が置かれた島、さらには国の強制隔離政策によるハンセン病患者の収容施設が造られた島など、光り輝く絶景の影となった島もある。

瀬戸内海に浮かぶ大小さまざまな島は、そのプロフィールもさまざま

仕事などで遠方に行くときは、せっかくなので自分の作品撮りをするために寄り道をすることが多い。

広島県の三原を訪れたのも、九州での撮影の帰り道。モーターパラグライダーで離陸できそうな場所があったので、空撮していくことにした。

もともとここで空撮するつもりだったわけではないので、風の具合など問題ないかの確認をしながら、どこを目指して何を撮るかも決めず、とりあえず飛んでみる。

離陸して高度を上げていくと、広島県と愛媛県の間の、瀬戸内海に浮かぶ大小さまざまな島が次々と見えてきた。

車で海岸線の道路を走っているときに見えていた対岸の陸地は、広々として島には思えなかったのに、上から見ると実は大きな島だった。

深い藍色をした穏やかな海の上で、島々の間を船が行き交っている。ちょっとガスっている影響もあって四国本土までは見えず、瀬戸内海は思った以上に大きいんだなと感じた。

三原市の南側、瀬戸内海の上空から東の尾道方向の眺め。

本州側では大きな造船所が目立つ。その先には霞んで尾道方面が見えた。

西側を振り返ると、かつて毒ガスを製造していた大久野島がある。この島は第二次世界大戦時、軍事機密として地図から消されていたという。飛んでいるときにはそんなことは知らずに写真を撮っていた。あとで知り、写真を見返してみると、火力発電所跡や毒ガス研究室跡らしきものもうっすらと写っていた。

行き当たりばったりで飛び、空撮してみたら思いがけずおもしろいものが撮れていた、というのもモーターパラグライダー空撮ならではだろう。

写真中心部にあるのが大久野島。毒ガス工場があった時代は、その製造過程の事故で多くの犠牲者が出た。いまはうさぎの島としても知られる。

取材・文・撮影=山本直洋
『旅の手帖』2024年8月号より

山本直洋
空飛ぶ写真家
1978年、東京生まれ。モーターパラグライダーによる空撮を得意とする”空飛ぶ写真家”。現在、世界七大陸最高峰を空撮する、成功すれば世界初のプロジェクト「Above the Seven Summits Project」を計画中。

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