驚きで読者を引き込むには?【プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑】
NO.10 驚き【おどろき】[英:Surprise]
【意味】
予想外のことが起こったときに、衝撃を受けること。
【類語】
驚愕 びっくり 感嘆 愕然 仰天 瞠目 動転 震撼 震天動地 青天の霹靂など
体(フィジカル)の反応
腰が抜ける目が点になる全身が固まる息をのむきょとんとした表情素っ頓狂な声が出る言葉を失う口があんぐり開く動きが固まる首をすくめる鳥肌が立つ頭が回らないビクッと肩が跳ねる飛び上がるその場に立ちすくむ涙が溢れ出る
心(メンタル)の反応
パニック状態慌ててあたふたする面食らう寿命が縮んだような気分衝撃におののくどぎまぎするあまりのことに毒気を抜かれる動揺を隠し切れない信じられない興奮するテンションが一気に上がる、もしくは下がる虚を突かれる平常心を失う頭が真っ白になる
直後の具体的な心情であり物理的状況を文章で説明する
物語を動かす機動力――それが「驚き」です。空から人が落ちてきた。悪霊が現れた。氷山に船がぶつかった。死人が生き返った。それらの状況で登場人物はまず「驚き」ます。「驚き」はストーリーを急展開させるプロットポイントの象徴であり、読者に転換点の場面を印象づける必要があります。よって「驚き」の様子をあっさり書き終えてはいけません。
たとえば、『突然、トムが撃たれ、ジミーは驚いた。』
これだけではどう驚いたか伝わりませんし、イメージできません。
『突然、トムが撃たれ、ジミーはパニック状態で全身が固まった。』
このように改稿すると、驚き具合が頭に思い浮かびます。
「驚き」には千差万別のリアクションがあるうえ、程度や種類はじつにさまざまです。帰宅したら自宅が火事だった、という「驚き」と、起きたらもう昼だった、という「驚き」は明らかに異なりますね。
さらに書き手は、驚いた本人がどうなったか? という直後の具体的な心情であり、物理的状況を文章で説明する必要があります。
たとえば、
『首のない死体を発見して、私はとても驚いた。』
これだけでは表現が足りません、一歩踏み込んで書くなら、
『首のない死体を発見して、私はその場で跪き、胃のなかのものをすべて嘔吐した。それでも吐き気は収まらないうえ、涙が溢れ出る。』
「驚き」のなかに衝撃と悲哀がごちゃ混ぜになった、カオスに近い心情が読み取れます。物語が動こうとする気配も濃厚です。「驚き」を描写する際は、一歩も二歩も踏み込んでみましょう。
【出典】『プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑』著:秀島迅