コンクリートにもエコを 国内でも希少「再生セメント」
世界的な人口の増加により、食料や資源の不足が懸念されている。6月の環境月間に合わせ、藤沢市内の環境に特化した「ふじさわSDGs共創パートナー」を紹介する連載の第2回は、余った生コンクリートから再生セメントを製造している「三和石産(株)」(菖蒲沢)に、資源循環の取り組みについて話を聞いた。
ビルなどの建設工事に欠かせないコンクリートは、セメントと水、砂利や石、少量の薬品で作られる。練ってから使用できる時間に限りがあり、強度や耐久性など、目的にあわせて配合は多岐にわたるため、そのまま再使用や他の現場への転用ができない。
出荷量の2〜3%が余るといわれ、固まる前の余ったものは廃棄処分が一般的だが、砂利の除去や脱水など費用面でも環境面でも負荷が大きい。
コンクリートの製造販売を手掛ける同社では、現場から戻ってきたものを活用するため、ゼネコンや大学と再生セメントを製造する技術を共同開発。15年ほど前から再生事業を行っている。大規模な設備投資が必要なため再生セメントは全国でも数が少なく、担当の大川憲テスティング事業部長は「事業化されているのは希少」と胸を張る。
砂利などの除去や脱水はこれまでの廃棄手順と同じだが、脱水後にすぐに専用の設備で破砕と乾燥を行い、セメントに再生する。同社では余った製品は全てこの工程に回されているという。
独自の取り組みは産学官連携功労表彰や環境大臣表彰も受賞。現在は年間約3600tの再生セメントを製造する。
再生した素材は、新たな生コンクリートやドライモルタルなどに生まれ変わり、ホームセンターにも出荷されている。需要は順調に伸びているが、「まだ廃棄処分がゼロになったわけではない」と大川事業部長。「建材以外の利活用なども視野に、販路の多角化を図ってこれからも社会に貢献していきたい」と青写真を描く。