【藤沢市】羽鳥在住 竹ノ下さん 87歳の現役生保外交員 人生は「感謝」と「恩返し」
米寿の誕生日を目前に控えてなお、職場で現役として活躍する女性がいる。藤沢市羽鳥在住の竹ノ下律子さん(87)は今年、日本生命保険相互会社湘南支社で勤続50年を迎えたベテラン外交員だ。15日(月)の敬老の日に合わせ、顧客に「感謝」と「恩返し」の気持ちで寄り添う竹ノ下さんに、働き続ける理由を聞いた。
「恩返しだから、やめられない。今の仕事は全く苦じゃない」。明るく語る竹ノ下さんだが、これまで涙する日も多くあったという。
鹿児島県で生まれ育った。地元で結婚し第4子を出産した翌年、夫の仕事で縁のあった藤沢に家族で移住。そんな折、夫の知人が住宅ローンを抱えたまま亡くなり、家族が路頭に迷うのを目の当たりにした。引っ越してきたばかりで、周囲に頼れる知り合いが少なかった竹ノ下さんは「もし夫に万が一のことがあっても子どもたちを育てられるように備えなければ」と、自らも働きに出ることを決意。先の出来事で保険の重要性も思い知らされ、38歳で日本生命に入社した。
保育園に空きがなかったため、乳飲み子をおぶって自転車で地域を回り、飛び込み営業をする日々。エリア内の家を一軒一軒訪問営業する中では、心無い対応を受けることもあった。ある時、顧客が勢いよく閉めたドアが子どもに当たり、頭をけがしてしまった。泣きわめく子どもを前に、「ここまでして働かなきゃいけないのか」と心が折れかけたという。
人として向き合う
しかし、そんな竹ノ下さんに手を差し伸べてくれたのも顧客だった。子連れで働く姿を見て「本当はそのつもりがなかったけれど、あなた頑張っているから契約するよ。その子に鉛筆でも買ってあげなさいね」と声をかけてくれた顧客がいた。「私の原点。お客さまに助けられて仕事していると実感した。いい加減なことはできない」。この顧客はすでに亡くなっているが、竹ノ下さんは今でも墓参りに訪れる。
顧客と向き合う上で大切にしているのは、「まず人として向き合うこと」。「人の話を聞いてあげられる人でありたいから」と、いきなり契約の話はせず、通って信頼関係を築く。顧客の悩みや家族の相談に親身に耳を傾けることを心掛け、時には嫁姑の仲を取り持ったこともある。
「いいことはいい、悪いことは悪いとはっきり言うことが大切」。そのかいもあってか、今では「竹ノ下さんじゃないと嫌だ」と子や孫まで含め、何世代にもわたって担当している家庭や、転居後もわざわざ遠方から訪ねてくる顧客もいるそうだ。
長年勤めてきた中で、仕事に対する捉え方が変わったという竹ノ下さん。以前は泣き虫だったと振り返るが、「人間が生きていく上では、やっぱり人さまに感謝の気持ちを持っておくべき」と話す。お客さまから「ありがとうね」「感謝しているよ」と言われると、うれしくてたまらないのだという。「本当にいい仕事なんですよ、お金では買えない仕事です。これからも健康でいられる限り続けたい、今度は100歳を目指せたらいいね」
市の調査によると、市内に住む100歳以上の長寿者は20年前と比べ、右肩上がりに推移しているという。
100歳以上20年で3.3倍いきいきシニアが増
もうすぐ敬老の日。藤沢市内では緩やかに高齢化が進む一方で、長生きしている人など元気な高齢者も増加傾向にある。
市の調査によると、市内に住む100歳以上の長寿者は267人(8月1日時点)おり、20年前の同時期と比べると、185人、約3・3倍増えている。また75歳以上の後期高齢者は6万6577人で、20年前の2万6389人と比べ、約2・5倍増。長寿者は後期高齢者の増加割合を上回っていることが分かる。
市の人口に対する65歳以上の高齢化率は24・79%。日本の高齢化率29・3%(昨年10月時点)や近隣の茅ヶ崎市26・66%(一昨年時点)、鎌倉市30・27%(同)と比べると、比較的低い値にある。
市内13地区をそれぞれ見ると、最も高齢化が進んでいるのが湘南大庭地区の33・72%。大規模団地がある地区で、20年前は11・96%と最も高齢化率の低い地域ではあったものの、建設当初の入居者が高齢者世代となり、急激に増えた結果だ。
最も高齢化率が低いのは湘南台地区の19・59%。13地区の中で唯一20%を切っている。20年前と比べ、65歳以上の人口は倍増しているものの、若い世帯の流入もあって大幅な上昇には至っていない。
市は、2050年には人口の36・3%が高齢者になると推計しており、今後の人口構造の変化で社会保障関係経費増も見込まれる。市高齢者支援課は「年齢を重ねても住み慣れた地域で、本人の尊厳が守られ、自分らしく安心して暮らせるよう、地域包括ケアシステムをさらに深化、推進したい」とコメントした。
市長が長寿者訪問
市では毎年、100歳以上の長寿者宅を鈴木恒夫市長が訪ね、花束の贈呈などを行っている。今年度は17人のもとを訪問(9月10日時点)。9月から来年3月までに107人が100歳となる予定で、そのうち希望者に対し訪問が行われる。