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TMG、20年越しで実現した2回目のジャパン・ツアー!!! LIVE 2024 -Still Dodging The Bullet- 2024.10.12 東京ガーデンシアター

YOUNG

TMG 2024年10月12日公演 松本孝弘

本誌2024年9月号で松本孝弘に表紙巻頭を飾っていただいた際は、アルバム『TMG II』の発表に1ヶ月以上先駆けての取材だったこともあり、筆者はインタビュー前に「CRASH DOWN LOVE」「ETERNAL FLAMES」「GUITAR HERO」の3曲しか試聴できていない状態だった。その時点で既に名作となりそうな香りがふんぷんと漂ってはいたが…改めて9月18日にリリースされた『TMG II』を耳にした時、想像を大きく上回る会心作となっていたことに驚かされた記憶がある。ちなみにこの新作に伴うジャパン・ツアー“TMG LIVE 2024 -Still Dodging The Bullet-”は、リリースの翌日(9月19日)から開始するという異例のスケジュールだったが…収録楽曲群の素晴らしいキャッチーさから考えると、憶え切るのに時間が足りない!という不満もおそらくなかったのではないか(…というのは筆者の勝手な憶測)。ここではそんなツアーの最終日、10月12日に行なわれた東京ガーデンシアター公演の模様をお届けすることにしよう。

最強メンバーによる無敵のコンビネーション

今回のツアーに連れ立った顔ぶれは松本孝弘(g)、ジャック・ブレイズ(b vo)、エリック・マーティン(vo)という20年前からの3人に、『TMG II』でドラムを叩いたマット・ソーラム(dr)、同作で編曲を担当したYukihide “YT” Takiyama(g)というサポートの2人を加えた計5人。メンバーの中に元ガンズ・アンド・ローゼズのマットがいるからなのか…開演の直前には「Welcome To The Jungle」(1987年『APPETITE FOR DESTRUCTION』収録)が大音量で流され、会場の期待感を一気に高める。SEは続いて新作からの「THE STORY OF LOVE」の和太鼓と琴の音色に変わり、ステージ前面に張られた紗幕にアジアンでサイバーな映像が映し出されると、まさに雰囲気は『TMG II』の内容に通じるミクスチャー感そのものだ。

歓声に導かれて5人が登場、演奏がスタートすると、想像を超える超ヘヴィなサウンドがいきなり飛び出す。チューニング的には全弦半音下げだと思われるが、それ以上の重さに感じられるのが不思議だ。そんなオープニングから松本が携えていたのは、アルバム制作時にもメイン級として活躍していたブラウン・サンバーストのギブソン“Tak Matsumoto Double Cutaway”で、そのタイトかつソリッドなサウンドも迫力の一因となっているはず。そこから立て続けに、2曲目以降も『TMG II』の楽曲が繰り出され、オリジナリティあふれるハード・ロックで観衆の耳目を楽しませる彼らである。「ENDLESS SKY」のシンセによるリズム・トリックから始まるイントロはアルバム通りだが、迫力は生で聴くとより大きく、キャッチーさよりもギター・リフの音色の強靭さが印象に残る。それを引き継ぐ「THE GREAT DIVIDE」も楽器隊のサウンドは強烈。マットのグルーヴィーなドラムが全体を支える中、松本はアンプの壁の前で仁王立ちになりながら演奏に集中し、その反対側でジャックは重いベース・ラインを弾きながら縦横無尽に動き回って、エリックは中央で自由にブルージーな歌声を聴かせる…というコンビネーションの良さも魅力的だ。「DARK ISLAND WOMAN」ではツイン・ギター編成ならではの利点が活かされた場面も多く見られ、中間のギター・ソロでは前半をYTが切れ味鋭く弾き、後半を松本が粘りのあるメロディアスなプレイで聴かせるという絶妙な掛け合いもあった。いかにもギター・ファン向けなアレンジに、思わず拳を握った人は多かったはず。

「JUPITER AND MARS」「FAITHFUL NOW」という、『TMG II』の中でも特に和の雰囲気をたたえたバラード2曲で空気を徐々に変えると、ショウはいったん新作から離れた特別なセクションへ。琴を思わせるエキゾティックなギターのSEが流れると、「Everything Passes Away」のイントロだと気付いた観客から自然と大きな手拍子が起こる。耳に残る変拍子リフにエリックとジャックの掛け合いヴォーカルが乗るこの曲は、1stアルバム『TMG I』(2004年)の中でも特に個性的で、20年経って聴いてもその色は褪せていない。松本の和風アルペジオから始まるテクニカルなギター・ソロも心地よく決まる。そして間髪を容れず続くのは、このバンドの最初の音源となった「OH JAPAN 〜OUR TIME IS NOW〜」で、キャッチーなメロディと骨太リフの組み合わせは年月を感じさせない魅力をたたえている。曲が進むにつれて会場の熱がグッと高まり、中盤のハイライトとなっていた。

さらにエリックが一時的にステージ袖へはけて、始まったのは松本のソロ・アルバム『Bluesman』(2020年)からの「Waltz in Blue」。5月に行なわれた彼のソロ・ツアーでも披露されていた、ゴールドトップのレスポールによるロング・トーンが映える美しいナンバーだが、マットのドラミングのおかげでパワフルさが加わっているのが面白い。そしてメンバー紹介を挟み、ドラムの周囲にメンバー全員で集まってアットホームな雰囲気で始まったのは、ご存知MR.BIGの代表曲の1つである「To Be With You」(1991年『LEAN INTO IT』収録)で、観客の間から当然のように大合唱が起こる。原曲ではポール・ギルバートがバシバシとリズミカルに奏でていたギター・ソロを、松本はしっとりと落ち着いた大人の余裕で爪弾いており、「名ギタリストによる名演の再現」という意味ではここももう1つのハイライトだったと言えよう。

これ以上ないほどド派手に迎えるクライマックス

ショウは後半へ突入し、いい具合にクールダウンした会場の熱を、力強いロック・ナンバー群で再び上昇。後期ビートルズを思わせる浮遊感ある曲調の中でツイン・リードが映える「COLOR IN THE WORLD」、一転して超シンプルなリフで押す「MY LIFE」、そして華やかかつ爽やかなコーラス・ワークが素晴らしい「CRASH DOWN LOVE」…と、新作『TMG II』からの楽曲を連発した後は、『TMG I』からのスピード感あふれる「KINGS FOR A DAY」、メロウな旋律をパワフルに聴かせる「NEVER GOOD-BYE」が続く。いずれの曲も発散されるエモーションがアルバムより強烈に感じられるのは、ライヴならではのダイナミクスのおかげもあるだろうが、もちろんレジェンド級のミュージシャンたちによる生の表現力がとてつもないからでもあろう。

本編終盤、事前にゲスト参加が告知されていたBABYMETALの名前がエリックの口から紹介されると、会場の盛り上がりは最高潮に。一瞬登場が遅れ、「ちゃんと彼女たちに電話した?」とエリックが松本を冗談めかして責める一幕もあったが、そんな寸劇(笑)も緊張を緩和する良いスパイスだ。SU-METAL、MOAMETAL、MOMOMETALの3人が加わり、8人編成の大所帯バンドとなってまずプレイされたのは、彼女たちの3rdアルバム『METAL GALAXY』(2019年)からの「DA DA DANCE」で、音源にて松本がギター・ソロを弾いていたのはご存知のとおり。今回のヴァージョンはTMGらしい正統派ハード・ロックなギター・リフを軸としたアレンジが施されており、本ツアーのタイミングだけで披露されたヴァージョンという意味で、両方のファンにとって貴重な体験だったに違いない。続いてドラム&シンセによるユーロビート風の特別なイントロから始まったのはもちろん、『TMG II』の中でも特に大きな存在感を放っていた「ETERNAL FLAMES」だ。エリックとSU-METALのデュエットを、美しいギターのハーモニー・リフが左右から包み込み、最強のリズム隊が真下から力強く支える…HR/HMの究極形とも言うべき極上のコンビネーションで魅せ、最後にはパイロもガンガンに立ち昇らせて、クライマックスはこれ以上ないほどド派手に迎えられた。

本編がラストとなっても当然、まだすべての見せ場が終わったわけではないことを、集った人々の誰もが知っている。バックに日米両国の旗がドでかく映し出され、会場中の期待を煽る中、アンコール1曲目に披露されたのはナイト・レンジャーの「(You Can Still) Rock In America」(1983年『MIDNIGHT MADNESS』収録)。ここではジャックがステージ中央に陣取って、ベースを弾きながらヴォーカルも同時にとる。自身のバンドでのいつもの役割…とはいえ、エリックとは質の異なる巧みな歌は本当に素晴らしく、諸手を挙げて喝采したくなるほど(そのエリックはコーラスに回るという、何ともぜいたくな状態)。ピンク色のミュージックマン“E.V.H.”を構えてリフを刻む松本の表情も嬉しそうだ。中間部ではまず松本がブラッド・ギルスのアーミング・ソロを元に色気をまぶしたTAK節で聴かせ、YTがジェフ・ワトソン風のエイト・フィンガー・タッピングで引き継ぐ…という一幕もあり、雰囲気はまさに’80年代。そしてそんなテクニカル・ギター黄金期の空気を引き継いだまま、アンコール2曲目を飾ったのは、これ以上ないほど流れにピッタリな「GUITAR HERO」だ。極上のサウンドを轟かせる“ギター・ヒーロー”の姿を会場中の人々の目と耳に刻みつけ、20年越しのTMGジャパン・ツアーは幕を下ろした。

TMG @東京ガーデンシアター 2024.10.12 セットリスト

1. THE STORY OF LOVE
2. ENDLESS SKY
3. THE GREAT DIVIDE
4. DARK ISLAND WOMAN
5. JUPITER AND MARS
6. FAITHFUL NOW
7. Everything Passes Away
8. OH JAPAN ~OUR TIME IS NOW~
9. Waltz in Blue [Tak Matsumoto]
10. To Be With You [MR.BIG]
11. COLOR IN THE WORLD
12. MY LIFE
13. CRASH DOWN LOVE
14. KINGS FOR A DAY
15. NEVER GOOD-BYE
16. DA DA DANCE [BABYMETAL]
17. ETERNAL FLAMES

[encore]
18. (You Can Still) Rock In America [NIGHT RANGER]
19. GUITAR HERO

(レポート●坂東健太 Kenta Bando 写真●©VERMILLION ©Dynamic Planning・TOEI ANIMATION)

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