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チャート上位に毎年ランクイン!「ラスト・クリスマス」と「クリスマス・イブ」の嘆き節

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1984年12月15日 ワム!のシングル「ラスト・クリスマス」発売日

12月に世界中で流れる「ラスト・クリスマス」


今年もまた、街に山下達郎が流れる季節がやって来る。そう、クリスマスだ。「クリスマス・イブ」(1983年)は “38年連続オリコンTOP100入り” という前人未踏の記録を更新中で、完全限定生産の “2024年バージョン” は12月11日にリリースされる。今年は追加で3曲のライブ音源が収録されるそうで、間違いなく39年連続チャートインの偉業を達成することだろう。達郎ファンにとってはもはや、クリスマスケーキを予約するのと同じ感覚なのでは。

「クリスマス・イブ」同様、12月に世界中で流れる曲が、英国のポップデュオ・ワム!の代表曲「ラスト・クリスマス」である。「クリスマス・イブ」の翌年、1984年にリリースされ、日本では12月15日に発売された。こちらも超ロングセラーになっていて、英国ではクリスマスの時期になると再発され、毎年チャートの上位にランクインしている。

驚くのはこの曲、発売からなんと37年後、2021年1月1日の全英シングルチャートで初めて1位に輝いたのだ。旧世代のファンだけでは、こんな快挙は達成できない。新たに若いファンがついたからで、“世代を超えた不朽の名作” という言葉はこういう曲のためにある。

リリースからちょうど40年、ファンにとってはたまらないクリスマスプレゼント


今年は「ラスト・クリスマス」初リリースからちょうど40年ということで “40周年記念EP” が12月13日に発売される。オリジナルの7インチ、12インチの全バージョンに加えて、2006年、ロンドンのウェンブリー・アリーナでジョージ・マイケルが歌った同曲のライブ音源も収録されるとのこと。CD以外にスノーフレーク・ホワイトカラーの12インチアナログ盤など限定盤も何種類か出るそうで、ファンにとってはたまらないクリスマスプレゼントである。

ワム!は来日の際、NHK『レッツゴーヤング』に出演したり、世間的には “アイドル枠” のアーティストだったが、彼らの曲は音楽的にもレベルが高かった。ジョージ・マイケルが書く楽曲は実にキャッチーで、私も受験勉強をしながら「Wake Me Up Before You Go-Go」をよく口ずさんだものだ。「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」といういかにも80年代風の浮かれた邦題がついていたこの曲、ハナ歌で歌うと、不思議と勉強がはかどるのだ。

フラれた男の未練がましい “嘆き節” ?


「ラスト・クリスマス」が世に出たとき、私は17歳だった。そのときの英語力ではどんな内容の曲なのかわからず、「たぶん、モテ男がクリスマスに愛の言葉を囁いてるんだろうな」ぐらいに思っていた。その後、大学生になって、私は貸しレコード店で「ラスト・クリスマス」が入ったレコードを借り(80年代は今みたいにWebで過去曲を簡単に聴けない時代だった)歌詞カードを見て、この曲の内容を初めて知った(和訳は筆者)。

 Last Christmas
 I gave you my heart
 But the very next day
 You gave it away

 去年のクリスマス
 僕は君に心を捧げた
 でも翌日すぐに
 君は僕の愛を捨て去ったね

 This year
 To save me from tears
 I’ll give it to someone special

 今年のクリスマスは
 涙にくれないように
 ほかの誰か大切な人に心を捧げるよ

… そう、この曲、フラれた男の未練がましい “嘆き節” なのだ。“ほかの誰か大切な人” なんて、たぶんいない(笑)。“チキショー!来年のクリスマスはもっといい女を彼女にしてやる!” と心に誓ったものの、そのまま1年経っちゃった、というパターンである。

ジョージ・マイケルの甘い歌いっぷりにすっかり騙されていた大学1年生の私は “エッ? そんな歌だったの!?” と驚いた。ヒアリングもままならなかった当時のつたない英語力には恥じ入るばかりだが、同時に “気持ちわかるわー!” と、この曲の主人公につい共感したのを覚えている。私も独り寂しくクリスマスを過ごしたクチだった。

思うに、この “嘆き節” こそ、本曲が世界的なロングセラーになった最大の理由じゃないだろうか。 “愛が実ってハッピー!” という歌は、たしかに耳障りはいいが、しょせん他人事。“あー、ハイハイ、よかったね” で終わる。でもこういう “心の痛み” を赤裸々に歌った曲はグサッと刺さり、いつまでも心に残るのだ。恋愛に限らず、世の中うまく行かないことのほうが圧倒的に多いのだから。

そういえば「♪きっと君は来ない」と歌う「クリスマス・イブ」も同様に “嘆き節” である。日本人が「クリスマス・イブ」を聴いて感じる “切なさ” を、英語圏の人も「ラスト・クリスマス」を聴いて感じているはずだ。そして思いが叶わない “切なさ” は、いくら時代が変わろうと不変であり、共感できる。だからこの曲には新しいファンがつき、古びることもないのだ。

ジョージ・マイケルの底知れぬソングライティング能力


歌詞の面だけでなく、今聴き返してあらためて感じるのは、ジョージ・マイケルの底知れぬソングライティング能力である。全編にそこはかとなく漂う “優しさ”。聴いていて、まるで何かに心を包み込まれているような感じがしませんか? 繊細な心を持つジョージは、人の痛みがわかるからこそ “思いが叶わなかった人” に寄り添ってあげたい… そんな思いを胸に、この曲を書いたに違いない。だから、歌詞の内容が直接わからない日本人にも刺さったのだ。

「ラスト・クリスマス」には有名な創作エピソードがあって、ジョージはある日、相方のアンドリュー・リッジリーを連れて、両親が暮らす実家を訪れた。そのときに “ハッ!” とインスピレーションを得て、すぐに自分が使っていた部屋にこもってこの曲を書き上げたそうだ。その間、アンドリューはリビングでMTVやサッカー中継を観ていたという(笑)。

クリスマスにこの世を去ったジョージ・マイケル


作詞・作曲・編曲・リードボーカルもジョージで、シンセとリズムマシンのプログラムもジョージが担当。スレイベル(鈴の音)もジョージだ。“アンドリュー、ちょっとは仕事しろよ!” と言いたくなるが、でもアンドリューが変に張り合わず、引き立て役に徹する性格だったからこそ、ジョージはその才能をいかんなく発揮できた。ソロになってから薬物やアルコールに溺れていったジョージを見ていると、アンドリューのような存在が側にいたら… と思わずにはいられない。

クリスマスソングの枠を超え、人に寄り添い、心の痛みを救ってくれる「ラスト・クリスマス」。本曲のシングル盤ジャケットでジョージはサンタクロースに扮している。ジョージは2016年12月25日、クリスマスに53歳の若さでこの世を去ったが、癒やしをプレゼントしてくれる “ジョージサンタ” は、今年も来年もその先も、永遠にやって来る。すべての人に、メリークリスマス。

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