福岡県民溺愛のうどんチェーン『因幡うどん』が東京進出! 現地在住ライターの熱血レポートで魅力を予習だ!
人気ラーメン店『一風堂』などを運営する力の源カンパニーは、『因幡(いなば)うどん』の新店舗を東急プラザ原宿『ハラカド』に4月21日にオープンすると発表しました。 『因幡うどん』は福岡県内に8店舗を展開しており、福岡県外には初進出です。最近ファンが増えつつある博多うどんですが、まだ東京では食べられるお店が多くなく、認知度アップはこれからといったところ。そこで、福岡在住の私Mr.tsubakingが、幼い頃から慣れ親しんだ『因幡うどん』の魅力を、福岡のうどんの歴史とともにを徹底レポート!一体どんなお店で、どんなメニューを食べればいいのか? 原宿の新店舗に出かける前に、予習しておきましょう!
福岡でうどんを食べるなら「ごぼう天」
『因幡うどん』は1951年、現在の福岡市の中心部である天神1丁目で生まれたお店。店名は、その場所の当時の地名が因幡町だったことに由来します。
今回、筆者が訪れたのは1963年にオープンした博多一番街店。駅直結で便利な立地にあるので、地元民は気軽に通います。
注文したのは、看板メニューの「ごぼう天うどん」。
うどんのトッピングといえば、エビ天などがメジャーですが、福岡のうどん店では「ごぼう天」がおなじみ。その中でも、『因幡うどん』のごぼう天は個性的です。
棒状のごぼうに衣をつけている、よくあるごぼう天とは対照的に、そぎ切りにされたごぼうが、かき揚げのような円状の衣に包まれています。
一見、衣が多くて油っぽさが強すぎるようにも見えるかもしれません。しかし、しつこさのない油が使われていて、サクサクと食べ進められます。
そして、ごぼうを噛んだ時の歯ごたえと、立ち上がってくる風味ががたまりません! さらに、後半になると衣に出汁が染み込んでくるので、食感も味わいも変わって最後まで飽きずに楽しませてくれるのです!
博多のうどんは「出汁を食べる」
関東では、かつお節と醤油を軸にした出汁が一般的です。一方で、福岡のうどんは独特な文化を形成していて、「出汁を食べる」と言われるほどのこだわりを見せます。
『因幡うどん』では、厳選された素材にこだわり、北海道羅臼産の昆布を使用。数種類の煮干しは、個別に粉砕機にかけそれぞれの味が引き立つよう独自のバランスで調合しています。また、因幡うどん専用醤油も開発し、創業当時の味を守りつつ、その時代時代に求められる味を追求しています。
関東の出汁に比べて色が薄いのが特徴ですが、出汁がしっかりきいていて物足りなさは一切ありません。むしろ、カドの取れたまろやかな香りと、九州らしい甘めの醤油のおかげでコクも感じられます。
最初はビックリ!? 柔らかい麺が博多たい!
福岡のうどんは麺も個性的。コシの強い讃岐うどんと対照的な「柔らかい麺」なのです。福岡出身のタモリさんも、事あるごとに「うどんにコシという概念はいらない」と語っています。
これも、こだわりの出汁がよく絡むように柔らかく仕上げられているもので、単に伸びた麺とは一線を画します。食感で言えば、ツルツルはもちろんのこと、フワフワという、他の麺ではあまり体感できない口当たりを感じられるでしょう。「博多ラーメンはカタ麺なのに、うどんはなぜヤワなの?」と思われるかもしれません。
一見、真逆にも見えますが、根底には同じ理由が存在していました。
博多ラーメンは、市場などで働く忙しい人のため、細麺にして茹で時間を短くしサッとすすれるカタ麺の文化が広がりました。
一方、柔らかいうどんも、忙しい博多商人が茹で時間を待ちきれないため、“茹で置き”をするようになったのです。そして、注文が入るともういちどサッと茹でて素早く提供。この方法にマッチしたのが柔らかい麺でした。
食べ慣れないと最初は驚くかもしれませんが、多くの方がハマること間違いなしの柔らかい麺、ぜひ味わってみてください!
福岡のうどんの歴史は想像以上に古かった!
実は博多が「日本のうどん発祥の地」だって知っていましたか?
西暦1200年代、宋(現在の中国)で仏教を学んでいた日本のお坊さんが、うどんの技術を持ち帰ったのが、博多のお寺だったとも言われています。
博多駅近くの「承天寺」の境内には「饂飩蕎麦発祥之地」という石碑も。
そこから独特のうどん文化を発展させ、最近では『資さんうどん』の東京進出(2025年2月)のニュースが東京でも大きな話題を呼びました。
現在ではそんな『資さんうどん』と、『牧のうどん』『ウエスト』が“福岡3大うどんチェーン”と呼ばれる存在になっています。
福岡で“長く”そして“変わらず”愛されてきた
その3店が昭和41年(1966)~51年(1976)に創業しているのに対し、『因幡うどん』の創業は昭和26年(1951)。福岡で“長く”愛されてきた名店なのです。
そんな『因幡うどん』が東京に進出するとのニュースで、筆者が最初に感じたのは「因幡うどんって、一風堂と同じグループだったんだ!」ということ。
『因幡うどん』は後継者不足などもあり、事業の更なる発展の可能性を持つ会社へ受け継ぐことを検討。その結果、2016年に『一風堂』などを運営する力の源カンパニーが事業を継承したのです。多くの福岡市民も驚きがあった様子で、SNSでも「因幡うどんって一風堂の系列になってたんか⁉」「知らんかった!」といった声が続出。
筆者は、この反応をポジティブに感じました。
なぜなら、「大きな企業のものになったら味が落ちる」という偏見ともいえるようなイメージが広まっている現代ですが、多くの市民が気がついていなかったということは、「おいしさがきちんと継承されている」という証拠だと思うのです。
福岡で“長く・変わらず”愛されてきた味が原宿に! 『資さんうどん』と『因幡うどん』の東京進出、2025年は福岡うどん飛躍の元年なのかもしれません。
そんな歴史の転換点、ぜひ原宿で『因幡うどん』を味わってみてください!
写真・文=Mr.tsubaking
Mr.tsubaking
ドラマー/放送作家/ライター
Boogie the マッハモータースのドラマーで、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌など担当。BS朝日「世界の名画」の構成、週刊SPA!、週刊プレイボーイなどに寄稿・執筆。温泉ソムリエ・仏教検定1級。