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岡田有希子「哀しい予感」竹内まりやが提供した失恋ソング!2年目は “大人の恋” 路線?

Re:minder

1985年07月17日 岡田有希子のシングル「哀しい予感」発売日

岡田有希子デビュー40周年!7インチシングル・コンプリートBOX 発売記念コラムvol.6

A面:哀しい予感
作詞:竹内まりや
作曲:竹内まりや
編曲:松任谷正隆
B面:恋人たちのカレンダー
作詞:竹内まりや
作曲:竹内まりや
編曲:松任谷正隆

極めて理想的な岡田有希子と竹内まりやの関係性


竹内まりやさんが岡田有希子―― ユッコに提供した楽曲は全部で11曲である。

▶︎ ファースト・デイト
▶︎ リトル プリンセス
▶︎ さよなら・夏休み
▶︎ 憧れ
▶︎ ‐Dreaming Girl‐ 恋、はじめまして
▶︎ 気まぐれTeenage Love
▶︎ 哀しい予感
▶︎ 恋人たちのカレンダー
▶︎ ロンサム・シーズン
▶︎ ペナルティ(*作詞のみ)
▶︎ 二人のブルー・トレイン(*作詞のみ)

これは、ユッコが楽曲提供を受けたアーティストの中で最多を誇る。一方、竹内まりやさん自身が楽曲提供したアイドルの中でも、最多は岡田有希子である。そう、岡田有希子と竹内まりや―― 2人はアイドルとアーティストの関係性において、極めて理想的だった。

これらの11曲は、大きく2つのグループに分けられる。デビュー曲の「ファースト・デイト」から「気まぐれTeenage Love」までリリース順でアタマ6曲が、いわゆる “ティーンエイジラブ” 路線。そして「哀しい予感」以降が、“失恋ソング” あるいは “大人の恋” を描いた楽曲たち。前者が1年目、後者が2年目であることから、これは制作元のキャニオン・レコード(現:ポニーキャニオン)の戦略だろうと思われる。

ちなみに、竹内まりやさんが作詞のみ担当した2曲は、いずれも作曲は、彼女の慶大時代の先輩・杉真理さんである。共に60年代の欧米ポップスをオマージュする2人だけに、まりやさんの作品と言われても違和感のない作風(実際、竹内まりや作詞作曲と勘違いしてる人も少なくない!)に仕上がっている。紛うことなき名曲である。

ユッコ初の失恋ソング「哀しい予感」


さて―― そんな中で、今回取り上げるのは、岡田有希子6枚目のシングル「哀しい予感」(作詞・作曲:竹内まりや、編曲:松任谷正隆)である。リリースは1985年7月17日。1年目で学園三部作を書いたまりやさんが、実に3曲ぶりに登板した会心の一作だが、同曲はマイナー調で、その捉え方が少々難しい。

 お願いよ ほんとのこと
 打ち明けてほしい
 眠れない 夜が続き
 哀しい予感に
 揺れてる私

タイトルからも分かる通り、ユッコにとって初の失恋ソングである。個人的には、キャニオンの渡辺有三プロデューサーが1年目のユッコにつけたコンセプト “6大学野球を観に行く山の手のお嬢さん” を体現した学園三部作が好きだったので、まりやさんが書くなら、その発展形―― それこそ、まりやさん自身のセカンドアルバム『UNIVERSITY STREET』(同盤は “キャンパスライフ” をテーマにしたコンセプトアルバム)のような世界観を想像していただけに、少々意外だった。とは言え、これもまた2年目のユッコの可能性を広げる戦略の1つと思えば、分からぬ話ではない。

同曲はイントロからして、何やら不穏な空気を “予感” させる。ユッコの楽曲には珍しい、ロックテイストな強めのギターリフ。一聴して、前年(84年)にヒットした、フィリップ・ベイリー&フィル・コリンズの「イージー・ラヴァー」を彷彿とさせる。個人的には、楽曲の世界観を守りつつ、イントロで期待感を醸成する松任谷正隆さんの気持ち控えめなアレンジが好きなだけに、「ちょっと強いナ」というのが正直な感想だった。

 二度目の夏が 過ぎた頃
 あなたは 突然 変わったの
 電話の声も
 少し冷たい

タイトルを含む印象的な頭サビのあと、次のAメロでストーリーが語られる。このあたり、安定の “まりや節” である。ここで “二度目の夏” というフレーズが出てくるので、おそらく前年の学園三部作で知り合った初恋の彼とのアフターストーリーだと想像できる。

「さよなら・夏休み」のアンサーソング


ちなみに、1年目の夏の終わりを歌った曲が、ユッコのファーストアルバム『シンデレラ』のリード曲「さよなら・夏休み」である。個人的には「恋はじ」(サードシングル「‐Dreaming Girl‐ 恋、はじめまして」)と並ぶユッコ史上最高傑作と思っていて、こちらは夏の終わりの切なさに触れつつも、2人の思い出を回想して “次の夏もあなたと一緒に” と締めている。その意味では、「哀しい予感」はそのアンサーソングと言える。

 不安な気持ちのまま
 飛び出して来たけれど
 好きよ 好きよ
 こんなにも好きよ

Bメロは彼への一途な思いを引きずりつつも、抑えきれぬ不安がさく裂している。「♪好きよ 好きよ こんなにも好きよ」―― ここまでストレートに感情を吐き出す、まりやさんの詞も珍しい。言い方はアレだが、今風の言葉で言えば “重い女” とも。いつものまりや節なら、ここでもう少し “物語” が語られそうだけど、やや彼女らしからぬ感じもする。

 お願いよ うわさなんか
 嘘だと言ってね
 私だけ愛してると
 誓った言葉を
 信じたいから

そしてサビに戻る。そう、この重さの裏返しにあるのは、既に彼女が恋の終わりを予感しているからだろう。前年の学園三部作を引き合いに出すと、2人の仲が上手くいっている時は、心情よりも情景のほうが多く語られる。一方、同曲はまりや節の割には、ストーリーを補完する情景が少ない。それ即ち、語れるだけの2人の思い出がないからである。ある意味、まりやさんの “確信犯” とも――。

深読みすれば、“二度目の夏” ―― あるいは2人は一度もデートしていないのではないか。リアルな年齢で言えば、ユッコはこの年、高校3年である。つまり受験生だ。高校3年の夏休みと言えば、一般には塾や予備校などの “夏期講習” に申し込む。仮に、そんな2人がユッコの故郷の名古屋在住の設定なら、彼は東京の大学を目指し、彼女は地元の短大に進学する(80年代はよくあった)。だとしたら、夏期講習も別々だ。そして―― その夏期講習で、彼は “あの子” と出会ったのだ。

 明日からこの道も
 あの子と歩くのでしょう
 風に散った 私の初恋

大胆に髪を切った岡田有希子


そんな風に新しい試みとしてリリースされた「哀しい予感」は、確実にユッコの表現者としての可能性を広げた一方、セールス的には残念ながら、彼女の歴代シングルでは低調に終わる。考えられる要因として、マイナー調の失恋ソングが影響したのかCM等のタイアップがなく、露出が少なかったこと。もうひとつは―― この年、ユッコは春先(3月末)に大胆に髪を切り、曰く “人生で初めて” ショートにしたこと。時期的には「Summer Beach」のリリース前に髪を切っていた(筆者も4月初旬のコンサート『ハートにキッス』で目撃している)が、シングルジャケットに “ショートユッコ” が登場するのは、同シングルからである。

個人的には、なで肩のユッコには、首が全開になるショートより、「リトル プリンセス」から「恋はじ」の前半あたりのシンプルなボブが一番似合っていたと思う。彼女が髪を切った真意は分からないが、もしかしたら前年の新人賞レースを総なめしたことが重荷になっていたのかもしれない。サンミュージックの元専務の福田時雄さんは、当時をこう回想する 「自分だけ賞をもらうと嬉しそうな顔をしないんだけど、吉川(晃司)さんと2人一緒にもらうと(安堵感から)ニコニコしている―― 」

誤解を恐れずに言えば、彼女はアイドルとしては少々、やさしすぎたのかもしれない。

アダルトなスローバラード「恋人たちのカレンダー」


そうそう、B面の「恋人たちのカレンダー」も語らなくちゃいけない。作詞・作曲・編曲の座組は、A面・B面とも共通である。こちらはアダルトなスローバラードで、耳馴染みのいいメロディに物語性のある詞と、もう “まりや節” がダダ洩れしている。構成は、レベッカの「ガールズブラボー!」などでも見られる、ロシア民謡でお馴染みの “1週間ソング” である。

 Friday
 デイトの約束交して
 Saturday
 あなたの車でドライブ
 雨に降られて ひき返した
 その途中で 初めてのキッス

歌詞を見ても分かる通り、ドライブデートで初めてのキッスと、少し背伸びしたユッコが垣間見える。先に挙げた、まりやさん自身のアルバム『UNIVERSITY STREET』の世界観(キャンパスライフ)に近い。個人的にはこちらをA面にとも思うが、曲の空気感で言えば、むしろ同曲はアルバム曲にこそ相応しいと思う。

ちなみに、ユッコのディレクターを務めた飯島美織(旧姓)さんは、上司の渡辺有三さんから、事実上、2年目のユッコのディレクションを一任された。そんな彼女はミュージシャンの一面も持つだけに、ユッコのアルバムはどれも本当に完成度が高い。反面、曰く “シングルはアルバム候補曲から選んだ” そうなので、ややシングル特有のインパクトが薄いのは、そういう事情である。

主演ドラマ「かぐや姫とんで初体験!? 」の主題歌に起用


最後に、「哀しい予感」のちょっとしたエピソードを。同曲はリリース直前の同年7月1日に、フジテレビ系の月曜ドラマランド枠で、岡田有希子主演ドラマ『かぐや姫とんで初体験!?』の主題歌に起用された。まぁ、同枠のカラーを思えば、特段そこに語るものはないけど(察してください)、一点、同ドラマは十二単を着た、平安時代の髪型の “かぐや姫” に扮したユッコが冒頭に登場する。ロングのストレートヘアーにナチュラルメイク、屈託のない笑顔―― これが、思いのほか可愛いのだ。

そこにいたのは紛れもない、僕らが出会った、あの頃のユッコだった。彼女の素顔は、何も変わってなかったのである。

幻のラストシングル「花のイマージュ」の初アナログリリース含む、全7インチシングル9枚を収録したコンプリートBOXセット。各ディスクに、別カラーを使用したカラーヴァイナル仕様でリリース!詳細はこちらから。

2024年8月22日発売      
品番:PCKA-18
価格:¥19800(税込)
限定生産商品

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