Vol.56 神戸で考える日本のドローンビジネスのこれから[ Drone Design ]
国内のドローンビジネスはどのような広がりを見せているのだろうか。神戸で毎年開催されている、国内企業を中心に多数のドローン関連ブースが出展する「国際フロンティア産業メッセ」から考えてみる
日本でも自治体を中心にドローンの活用が広がりつつあり、わが拠点である神戸市ならびに兵庫県も、早くからドローンビジネスを盛り上げようとしています。情報発信と共有、勉強が定期的に開かれていますし、いろいろな分野で活用するアイデアの募集や事業連携なども積極的に支援しています。
撮影や物流、点検、マッピング、空飛ぶクルマなどなど、その対象はどんどん幅広くなり、スピーカー搭載にハチの巣駆除といったユニークな用途もあったりします。
また、ポートアイランドで毎年開催されているビジネスイベント「国際フロンティア産業メッセ」では、2022年に「第1回ドローンサミット」が同時開催されたのをきっかけに毎回数多くのドローン関連ブースが出展されるようになりました。
9月5、6日に開催された今回も、手術支援ロボット「hinotori」や変形型月面ロボット「SORA-Q」、自動車が人型ロボットに変形する次世代ロボット「SR-01」などと一緒に、たくさんのドローン関連ブースが出展されておりました。
https://www.drone.jp/special/2022090514370557286.html
毎年秋に開催される総合展示会「国際フロンティア産業メッセ」は話題のテクノロジーが集まり、ドローンビジネスに関する展示も多い
会場ではロボットに変形するクルマや手術支援ロボットも見られた
ドローン関連の展示は神戸国際展示場の2号館にまとまっていて、入口を入ってすぐ、水素バイクやAI搭載ミニショベルなどと一緒に展示されていたのが、アラセ・アイザワ・アエロスパシアル社が開発する無人航空機専用エンジン「國男」とそれを搭載した産業用ドローン「AZ-1000」です。
長時間飛行と搬送力を備え、限界まで小型軽量化された1000CCの「空飛ぶエンジン」は、振動を抑えながら4本のローターへダイレクトにエネルギーを伝え、ペイロードの積載可能重量は150kg、航続距離は6時間以上(無積載時)という性能を実現します。
1000ccエンジンを搭載した「AZ-1000」は現在開発中とのこと
ドローンはクリーンモビリティの観点から電動で飛ばすのがポイントになっていましたが、ビジネスで活用するとなると、やはりもの足りないというのが現実です。
海外ではエンジンの形式にこだわらず、短時間に遠くまでそれなりの重量を搬送できて、気象条件の悪い中でも安定して運ぶことができるパワフルなドローンを運用しようという動きもあり、クリーンで静かなエンジンをつくる日本のものづくり技術がこれから求められるようになるかもしれません。
これからドローンに求められる機能というところで気になったのが、神戸に本社があるスウィフト・エックスアイ社の展示です。その用途とは空の観測で、親会社であるSwift Engineering社製のテイルシッター型eVTOL機「Swift Crane」と、24時間連続飛行できる「SULE:Swift Ultra Long Endurance」のモックアップ、そして提携先のHyperKelp社の海上観測機が展示されていました。
SULEは低高度人工衛星よりも精度の高いデータ観測が可能になり、世界で大きな問題になっている異常気象の観測で活用が期待されています。搭載しているカメラやセンサーの精度も上がっていて、防災や警備でも無人観測の利用が広がると見込まれています。
スウィフト・エックスアイ社のブース
「SULE」はNASAのバックアップにより開発がすすめられている
定点観測や警備目的としては、解禁に向かっている目視外飛行による遠隔でのドローン利用を促進するドローンポートもいろいろなタイプが展示されておりました。
その一つが今年3月に日本で発売開始になった「DJI DOCK 2」で、軽量コンパクトで設置も運用も比較的簡単なうえに連続して使えるので、「試しに使ってみたい」という声が増えているのだとか。そうした無人運用に対応する性能を持つ自律飛行ドローンも登場しているので、期間限定での貸し出しビジネスが今後いろいろ出てくるかもしれないということでした。
ドローンポートは会場のあちこちで出展されていた
さらに、特別車両を製造する名古屋の新明工業社からは、可動式ドローンポートといえるドローン飛行支援車が参考出展されていました。機体の搬送はもちろん、メンテナンスやデータの処理といった作業が車内でできるようになっているのが特長で、ニーズにあわせたカスタマイズできるとのこと。
こちらの車両はドローンビジネスに関わる知り合いから「どんな仕様だった?」と質問されることが多く、普段の搬送や現地での運用に苦労してることが多いのかな、という印象です。もしかしたらドローン専用レンタカーなんてのも登場してくれるのではないかと、気になるところです。
右奥の車両は国際ドローン協会による中学校の集団下校をドローンで見守りにも利用されました
他にも会場では、特許出願中の高圧洗浄清掃用ドローン、ドローン専用パラシュートとセットになった新しいドローン保険、市街地の高層建造物を有線ドローンで撮影するラインドローンシステムの実証など、これからビジネスとして広がりそうな展示がいろいろ見られました。
タンクの代わりにホースを使って建物の壁面などを手軽に高圧洗浄できるのがポイント
ドローンの落下による機体損傷や事故を防ぐパラシュートと保険がコラボに
有線で高層の垂直撮影が安全にできるシステムを開発中
今回も見どころがいろいろあったのですが、ブースを回って感じたのが、ドローンのビジネスといってもドローンということにあまりこだわらず、空飛ぶツールを使っていろいろなアイデアを実現してみようという流れになってきているなということでした。
有線やバッテリー以外の動力も使われていて、空飛ぶ○○という表現も増えているので、これから市場を成長させていくのであれば、もしかしたら何かドローンに変わる新しいキーワードがあったの方がいいのかもしれない…なんてなことを思ったのでした。