七沢、蛇とのゆかり深く 宇賀神や蛇形の像点在
金運など幸運の象徴として神聖視されてきた蛇は、水神とも深いつながりがあるとされる。東丹沢に抱かれた温泉街として厚木有数の観光地である七沢も、蛇とゆかりが深い土地だ。2025年の巳年に当たり、霊験あらたかな同地を歩いた。
大沢川の渓谷にたたずむ「大釜弁財天」は、雨乞いの象徴として地域の信仰を集める。洞窟の内部には、弁財天を祀るほこらの隣に蛇形の石像が安置されている。
弁財天は、五穀豊穣をもたらす水の神として崇められてきた。七沢の地では、蛇が弁財天の使いとされたことから、このような石像が置かれたと考えられている。
県道64号の広沢寺温泉バス停そばにある「弁財天宇賀神社」にも、ほこらの左右に小さな白蛇の置き物が安置されている。丹沢山地から注ぐ豊富な水が潤す七沢では、弁財天や蛇が古来から信仰の対象であったことをうかがわせる史跡だ。
宇賀神祀る七沢観音
七沢の古刹「七沢観音寺」も、蛇とのゆかりが深い。
観音堂に隣接する勢至堂には、「富士浅間大菩薩」の左右に宇賀神の石像が祀られている。林慈照住職によると、二体の宇賀神はかつて大釜弁財天に安置されていたもので、いつのころからか観音寺に移されたという記述が日本石仏図典に残されているという。
宇賀神は当初境内の弁天松の足元にあり、その後本堂に移され、昭和40年代には勢至堂に遷座されたと推察される。この勢至堂は伐採・製材された弁天松の売却金で建立されたもので、「弁天松で作られた勢至堂にあるのがふさわしいと思った」と林住職。
向かって左側の宇賀神は、享保年間(1716〜36年)に七沢石で作られたものという。右側に鎮座する宇賀神は弁財天の顔を持つ県内でも珍しい作で、頭の上に鳥居を頂いているのが見える。
林住職によると、七沢にはほかにも人頭蛇身の石像が人知れず点在しているという。「巳成金(みなるかね)」(干支の「巳」、十二直の「成る」、五行の「金」が重なる日=実のなる金)という言葉もあるように、「巳年にお参りをしていただくことで、皆さまにとって実りある年になれば」と話した。