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日本のキング・オブ・アスリート|限界に挑戦し続ける十種競技のパイオニア右代啓祐

Sports

常に自身の限界に挑戦し続ける十種競技のパイオニア。
ロンドン五輪、リオ五輪に2大会連続出場、日本人で初めて8000点の大台を超え、現日本記録8308点を樹立した第一人者である右代啓祐選手(以下、右代)。「キング・オブ・アスリート」を決める過酷な競技に挑戦する右代さんに、これまでの競技人生や、味の素株式会社『ビクトリープロジェクト®』とともに歩む挑戦について、また「チーム啓祐」としてともに取り組んでいる『ビクトリープロジェクト®』メンバーにお話を伺いました。

十種競技とは…

2日間で合計10種目を行い、各記録を得点に換算し、その合計得点を競う陸上競技の種目。1日目には100m・走幅跳・砲丸投・走高跳・400mの5種目、2日目には110mH・円盤投・棒高跳・やり投・1500mの5種目が行われる。

いきなり全国2位!世界を目指せると感じた経験

キング・オブ・アスリートと呼ばれる十種競技のチャンピオン。その日本記録を持ち、37歳になった今も限界に挑戦し続ける右代啓祐選手(以下、右代)。

高校3年生から混成競技(十種競技など、複数種目で競う競技の総称)に本格的に取り組んだ右代選手は、初めての試合で高校の北海道記録を叩き出し、2戦目のインターハイでは全国2位に。
「努力を積み重ねていけば、世界を目指せるかも」という思いと、きつい競技でありながら競技後に味わう達成感や爽快感に魅了され、大学進学後もキング・オブ・アスリートの称号を目指し、その道を突き進むことになります。

「ビクトリープロジェクト®」栗原氏との出会い「まだやれることがある」

日本記録、日本人初のオリンピックに2大会出場など、十種競技において輝かしい歴史を歩んできた右代選手ですが、33歳で集大成となるはずだった東京2020は新型コロナウイルスの影響で延期になり、その後2021年の大会への出場権を獲得することができませんでした。
大きな喪失感を味わい、引退も考えた右代選手が再び立ち上がるきっかけとなったのが味の素株式会社の『ビクトリープロジェクト®』でチームリーダーを務める栗原秀文氏(以下、栗原)との出会い。東京2020後に行われた、味の素社主催のイベントでのことでした。

栗原)お会いしたときの印象はまず、体の大きさの迫力がすごい、そしていい男だなということです。人間性が滲み出ていますよね。当時オリンピックに出場できず、失意の底にあったということは聞かされていなかったのですが、お話してみて「この人とのプロジェクトならおもしろいことになる」と直感で思いました。

その後、アポイントを取ってお話させていただきながら感じたのが、「当初の印象とは違って、右代啓祐があまり大きく見えない」ということでした。それまでは“自信に満ち溢れている日本チャンピオン”という印象だったのですが、彼にとって試合は楽しいものではなく、歯を食いしばって耐えるような感情だと話していました。「どうせだったら楽しくて、みんなを食い潰していくような、そんな試合をしよう!力になるから!」とその場で言っていましたね。

右代)栗原さんから「右代啓祐、まだやれるじゃん!」と言っていただいたのはすごく印象に残っていますね。
お話の中で、自分としても栄養に対してやれていたこととやれていなかったことがあることもわかりました。一番大きかったのは“米を全然食べてこなかった”ということです。「お米を食べる=太る」というネガティブなイメージもあり、最初のうちは罪悪感も感じていたのですが、しっかりとお米を摂りながら過ごした合宿の最終日、疲労困憊の状態でのバイクトレーニングで過去最高の数値が出たんです。糖質という“ガソリン”が体にしっかり入った状態だったからこそ力を出し切ることができたと実感し、日常生活でもお米をしっかり食べることを意識するようになりました。そこからは怪我もしにくくなりましたし、風邪も引かなくなり、非常に大きな効果があったと感じています。

食事だけでなく“技術”へのこだわり

実は右代選手、大学入学時にはとにかく食事で体を大きくして記録が伸び、大学時代に日本選手権に初出場、全日本インカレでも3位などの実績を残した経験をしています。
卒業後さらに記録を伸ばしたのは、十種競技の先輩 武井壮さんからの身体操作の指導。単純な“逆立ちをする”というシンプルなことからスタートし、技術に対して正面から向き合えるようになりました。「陸上競技をやるだけでは、強くなれないぞ」という武井さんの言葉は、今も右代選手のベースになっています。

味の素株式会社の『ビクトリープロジェクト®』の一つとして始動した右代選手のための専門家集団『チーム啓祐』は、食事だけでなく陸上競技の“技術”にも向き合うトータルサポートのチームです。

右代)十種競技の種目の中で、僕がずっと苦手としているのは、100m・400m・110mH・1500mの“走る”種目です。ここを改善することでほかの種目にも好影響を出せると考えており、科学的に何が足りないのかなどを相談するところから技術面でのサポートもスタートしました。

最初の頃は、チーム啓祐の皆さんが考えてくださるメニューをなかなかこなすことができませんでした。ウォーミングアップの段階から、「今日の練習はこれで終わりにしたい」と思ってしまうほど、自分の苦手な動きに対してのトレーニングはきつかったです。しかし、これまで自分が向き合いきれていなかった部分に対して、逃げ場を作らずに向き合わせてくれたことは自分にとってすごく助かりました。

栗原)右代選手にとって、結果を出すためのサポートをと考えてチームを組みました。そもそも、日本に十種競技の教科書はあるのか?と聞くと、「右代啓祐が教科書です」という言葉が陸上関係者から返ってきます。この選手の思考の礎を作らないと、日本の陸上界のためにもならないと思いました。
論理的に必要なものを、栄養だけでなくトレーニングにも取り入れて、よりポジティブに、シンプルに考えていくために、各所にお願いし最高のメンバーを揃えました。

『チーム啓祐』メンバー(右端から、三富陽輔さん、石井和男さん、右代啓祐さん、栗原秀文さん、柿木克之さん)

ボブスレーで冬季オリンピックに出場経験のある石井和男さんは、テクニカルディレクターとし参画し、走りの部分の指導をリードしています。チーム啓祐に加入当初の右代選手の印象は、「体はとにかく一級品。でも動きはバラバラで、よくこれで日本トップレベルにいるな」というものでした。

石井)チーム啓祐として動き始めて、そうした技術面は短期間で崩れていったわけではなく、徐々に変わっていき、間違った体の使い方が定着してしまったということがわかりました。思考や体の使い方、左右差などを長い時間を掛けて直し、現在は技術的にみても体の部分でも一番いい状況になってきています。

右代)目標管理もチームでKPIを定めて、その達成のためのアクションに落とし込んでいくような、ビジネス的なアプローチをしています。ピークの記録を出したときのテスト数値を目指してきた結果、そこに近いレベルの力が発揮できるような体のスペックに戻ってきました。

心強い仲間『チーム啓祐』

合宿にも帯同するなど、普段からコミュニケーションもとる機会も多いチーム啓祐。合宿では、右代選手にとっての課題を一から洗い出し、各分野の専門家であるチームメンバーからの指摘を受けるだけでなく、選手としての立場からの意見をぶつけ合い、お互いにオープンにさまざまなディスカッションを重ねてきました。

合宿でのディスカッションの様子

右代)心の中でずっと抱えていた思いや、感情、考えを共有する場所は、これまでなかなかなかったのですが、このチームのメンバーはいろいろなことを最後まで聞いてくれて、それに対してさらに真剣なコメントを返してくれます。
【右代啓祐を強くする】というミッションに僕自身を含めた全員が本気で向きあう。心強い仲間を手に入れることができたなと思います。

ーーこの先の日本選手権に向けて、ご自身にどんな期待感を持っていますか?

右代)日本選手権はパリ五輪の選考会にもなりますが、今、自分自身が求めているのは「自分を超える」ということです。その上で、日本選手権でいい結果が出せると理想的ですよね。
先日、日本選手権での記録の目標値を定める、というミーティングをチームで行った際、「この目標値でいくと、優勝もあるかもしれない」となりました。
日本の頂点に返り咲いて、まずは自分自身を褒めてあげたい。そしてこのプロジェクトが大成功だったと、喜びをチームのみんなで分かち合いたいですね。

ーーありがとうございました!

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