上越市の「斜めの家」が一般宿泊開始 同市出身の渡邊洋治設計 5月28日にガイド付き内覧会
新潟県上越市出身の建築家、渡邊洋治(1923〜1983)が設計し、全体が“斜め”に建っているように見えることで知られる同市大豆2の「斜めの家」(1976年完成)で、一般向けの民泊体験がスタートした。一般宿泊の開始に合わせ、2025年5月28日にはガイド付きのミニ内覧会が開かれる。
《画像:斜めの家》
独特の力強い造形で異端とも呼ばれた渡邊は、旧直江津市の大工の家に生まれ、高田商工学校(現在の県立上越総合技術高)を卒業後、戦時中は船舶兵を務め、戦後に上京。建築事務所勤務や早稲田大研究室助手などを経て、独立した。代表作は「軍艦ビル」と呼ばれた第3スカイビル(東京都新宿区)や善導寺(糸魚川市)などがある。「航空母艦」と呼ばれた旧新潟労災病院(上越市)も渡邊の設計だった。
斜めの家は、同市柿崎区の建築家、中野一敏さん(50)が代表を務める「ナナメの会」が保存・活用に取り組み、長らく空き家だった建物を改修。2024年4月から「泊まって学べる名住宅」として、民泊が可能になった。これまでは改修費用を募ったクラウドファンディング(CF)の協力者を対象としていたが、2025年3月から一般向けの宿泊体験も受け付けている。
《画像:斜めの家の特徴的なスロープ》
ガイド付き内覧会は、地元住民の関心を高め、保存活用の活動への参加者を増やそうと、企画された。
1回目の5月11日には子どもを含む7人が参加。渡邊が見学した世界的建築家ル・コルビュジエの作品との共通点もうかがえる特徴的なスロープや、雨戸、ガラス戸、簾(す)戸、障子戸が順にはめ込まれた南向きの大きな窓、差し込む日光が赤いじゅうたんに反射して部屋の中やスロープの壁を赤く染める様子などを、中野さんが解説した。
《画像:ガラス戸や簾戸などを紹介》
中野さんによると、完成当初は斜めの家ではなく、「銅の家」と雑誌などに発表していたことが最近分かった。渡邊は設計時に「潜水艦を造るぞ」という言葉を残しており、銅箔張りの下の部分は黒く塗られていたことから、斜めに傾いた箱が空中に浮かんでいるように見える効果をもたらしているという。
《画像:斜めの家の裏側》
参加者の一人で、渡邊の後輩に当たる上越総合技術高同窓会関東支部長の千葉県の藤沢勝一郎さん(83)は「地元にこんな建築がありびっくりしている。人の住んでいない家の保存活動は大変で、ご苦労さまという思い」と話していた。
斜めの家の民泊料金は、最大6人まで宿泊でき、人数や日程により1泊当たり約4〜6万円程度。予約は公式ホームページ( https://sites.google.com/view/nanamenoie )から可能。
5月28日のミニ内覧会は午後1時から同3時30分まで、参加費は無料。保存活動に継続的に参加の意思があり、ナナメの会への入会(入会費、会費不要)が必要。新規入会と合わせ、申し込みフォーム( https://docs.google.com/forms/d/16g7gEW2ZBjReP_mIh4Tqjt1HM8lZg_Pme9oe-2nwhgM/viewform?edit_requested=true )で受け付けている。
中野さんは「建築関係者や外からの注目と地元での関心にギャップがある。保存活動に参加してほしい」と話している。問い合わせはメールで中野さんまで(naname023@gmail.com( mailto:naname023@gmail.com?subject=件名 ))。
泊って学べる名住宅( https://sites.google.com/view/nanamenoie/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0?authuser=0 )