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Crystal Kay『ALL TIME BEST 25th Anniversary』インタビュー――25周年イヤーに贈る初のオールタイムベストアルバム

encore

──初のオールタイムベストアルバム『ALL TIME BEST 25th Anniversary』にはソニーミュージック時代の楽曲も含む全32曲が収録されていて、クリスタル・ケイさんの25年間の集大成と言える作品になっています。選曲はどのように行われたんですか?

「ファンの方の声や社内の声、それから自分が“絶対に入れたい!って思う曲(笑)。あとはソニーミュージック時代の昔の曲と今のユニバーサル・ミュージックの曲、どちらも聴いてほしいかったので、バランスを取りながら選曲しました」

──そういう中で、意外な楽曲だったり、逆に入れたいのに入れられなかったりっていう楽曲はありましたか?

「“意外だな”っていう曲はあまりないかな…。でも、「ONE」(2008年)や「月のない夜 道のない場所」(2001年)はかなり前の曲なのに、好きと言ってくださる人も多くて、それはうれしかったです。逆に、“入れたいのに入れられなかった“っていうのは、もう、たくさん!(笑) 「Candy」(2003年)や「Kirakuni」(2006年)とかは、みんなも“なんで入ってないの!?”って思うんですけど(笑)。でも、“25周年の軌跡”として選曲しているので、ピンポイントで選ぶっていうこともできなくて…。他にも(入れたくても入れられなかった)曲はいろいろありますね」

──25年分の楽曲をまとめて聴く機会ってクリスタル・ケイさん自身にもなかなかないことだと思うんですけど、今回聴いてみてどんな気持ちになりましたか?

「自分で言うのもなんなんですけど、いい曲が多いなぁって(笑)。それもタイムレスな曲が多いって印象があって、デビュー当時の曲から聴いていても古い感じがまったくしなくて。 “ずっと聴いてもらいたい”と思って作ってきたので、そこはすごくうれしいです。あと、最近は若い世代の子が私の曲を知ってくれているんですよ。“なんで?”と思ったら、お母さんと一緒に聴いていたとか…。当たり前ですけど、歳を重ねると(聴いてくれる人の)ジェネレーションも少しずつ広がっていって。TikTokで「Sweet Friends」(2005年)を使ってくれていたりして不思議ですけど、すごくうれしいです。でも、私の昔の曲が今の若い子たちにはどういう風に刺さってるんだろう?」

──当時ティーンだった子とたぶん同じ気持ちだと思います。『ALL TIME BEST 25th Anniversary』を聴かせていただくと、前半には失恋ソングだったり、片想いの切なさを歌ったりした楽曲が多いので、そういう曲は今のティーンの子たちにも変わらず刺さる部分があると思いますよ。

「確かに。切ないですよね、私(の曲)って(笑)」

──(笑)。そういう楽曲の方向性というのは、当時のプロデューサーやディレクターの方々が、クリスタル・ケイさんの声とのバランスを見ながら決めていったのでしょうか?

「それはあったと思います。デビュー当時は音楽ヘッズばかりのチームだったので、音作りにもすごく凝っているし、歌詞もぶっ飛んでるし(笑)。でも、サウンドプロデュースが本当に素晴らしくて。だから、私の声に合うとか、私に歌わせると“意外性があってより刺さるかも“っていう楽曲の選び方をしていたかもしれませんね」

──その一方で、ユニバーサル・ミュージックに移籍したタイミングから、楽曲のテイストやメッセージ性が変わってきた様子が見てとれます。そこはご自身で意図的に変えていった部分もあるんですか?

「当時はダンスミュージックがかなりアツかった時期だと思うんです。だから、“歌って踊れるクリスタル・ケイを見せていこう”って方向性ではありました」

──曲調が変わることで、伝えるメッセージも変わってきますよね。

「そうですね。音もかなり激しかったりしたので、キャッチーなフレーズやメッセージ性の強い歌詞でインパクトを狙っていたと思います。そのあと、ドラマ『オトナ女子』の挿入歌だった「何度でも」(2015年)があって、“女子に向けた応援ソング“にフォーカスしていた時期もありました」

──全32曲中、「月のない夜 道のない場所」と「Boyfriend -part II-」(2003年)、「恋におちたら」(2005年)、「ONE」の4曲が再録されています。これらの楽曲を歌い直してみようと思ったのはどうしてですか?

「ライブでよく歌う曲っていうのもありますし、4曲の中でも「恋におちたら」は本当にたくさんの人に聴いていただいているので、リリースから20年経って、“今の、39歳の私が歌ったらどうなるだろう?”と思って。「月のない夜 道のない場所」や「ONE」はシングル曲ではなくアルバム収録曲ですけど、みんながすごく聴いてくれているディープカッツ的な曲で。それを歌い直してみたかったので」

──今回、改めて録り直しをしてみて、どういう変化を感じましたか?

「オリジナルを聴くとすごくいいんですよ(笑)。10代の自分の声って、やっぱりそのときにしか出せない初々しさとか、透明感があって。でも、今回は(テイラー・スウィフトの)テイラーズ・バージョン(Taylor’s Version)的な感じでRe-recordingをしていたので、なるべくオリジナルに沿った感じにしたかったんです。でも、当時の透明感はなかなか…。大人になったからといって大人っぽい感じに歌うっていうのもやりたくなかったので。そのときの良さっていうのかな? 自分の“歌声“という楽器が歳を重ねた分、味が出た感じはします。ただ…Re-recordingするときは緊張感がありました。ずっと聴いてもらって、みんなの耳になじんでいるのはオリジナルだから、Re-recordingでそのレベルまで持っていけるのか?、きちんと今のベストをのせられるのか?、すごく緊張しました」

──そこは、クリスタル・ケイさんにとっても挑戦だったんでしょうか?

「そうですね。今回、トラックも完璧にオリジナルを再現してもらったので」

──そうだったんですか!

「はい。やっぱり、オリジナルの存在が大きければ大きいほど、それを作り直すって結構なプレッシャーだったから…。トラックメイカーの方々にかなり頑張ってもらいました」

──また、クリスタル・ケイさんといえば、さまざまなアーティストとコラボレーションされてきたことも特徴的な活動の一つかと思います。1人に絞るのは難しいと思うのですが、特に印象に残っている方はいますか?

「まずは、この間のKT Zepp Yokohamaでの25周年記念ライブ(『CKニーゴー〜25TH ANNIVERSARY』)にも来てくれたBoA。彼女、今はもう滅多に表舞台には出ないんですけど、あの日は“友達だから!”って参加してくれました。今回のアルバムに入ってる「Girlfriend」は新録ではないですけど、ライブでは15年ぶりに一緒に歌えたので、エモかったですし、言葉も重く聴こえましたし…」

──これまでの二人の関係性というのも歌に乗りますよね。BoAさんとのお付き合いはいつ頃から始まったんですか?

「初めて会ったのは14歳かな? お互いの振付師が一緒だったんです。BoAとはデビューが一緒で、同世代ですし、お互い韓国にルーツがあるっていうので仲良くなったんです。世間的にはもしかすると“意外なコラボ”と思われたかもしれないですけど、実は共通点が多くて、“戦友”みたいな存在です」

──他にも心に残っているアーティストはいますか?

「やっぱり安室奈美恵さんですね。だって、私はアムラー世代ですし、ずっとCDを買って聴いていました。まさかコラボできるなんて思っていなかったんですけど、その後、引退されてしまったので、その前にコラボできて本当によかったです。しかも、ライブでも一緒に歌わせてもらって!」

──それも、安室さんのライブで、でしたよね。

「そうなんです! 私名義の曲なのに、安室さんのライブのセットリストに入れてくださって。シークレットゲストとしての出演だったんですけど、ステージに出たときの地鳴りのような歓声は一生忘れられないです」

──BoAさんが“戦友”なのに対し、安室さんはどのような存在ですか?

「私にとってはアイドルです。だって、歌って踊れる人の元祖じゃないですか! 今、ソロであんなに歌って踊っているアーティストって、なかなかいない気がします」

──そういった安室さんの姿勢から影響を受けたこともありますか?

「この間の『CKニーゴー〜25TH ANNIVERSARY』のときに、いろんな人から“安室ちゃんじゃん!”って言われたんです。“今って安室ちゃんみたいな人がいないから、クリがあの存在を継いでいけばいいんだよ”みたいなことを言ってくれる人もいて。そんなふうに言ってもらえるのはうれしいですし、“頑張らなきゃ!”って勇気をもらいました」

──自分の新たな一面を発見できるっていうのも、さまざまなアーティストとコラボレートする魅力の一つでしょうか?

「そうですね。私が初めてコラボしたのはVERBALで、そのあと☆Takuとやって、さらにm-floのlovesがあって…っていう意味ではm-floとの出会いもすごく大きいです。それはなんていうか…自分のインターナショナルな側面を楽しく見せていく…“英語をガンガン入れてもいいんだ”、みたいな(笑)。彼らと一緒にやったことで自由に遊べるというか、自分の国際的なところを使って全然いいんだっていう自信にもなりました」

──ラストに収録されているのが新曲「Best Version Of Me」。こちらはドラマ『純喫茶つながり、閉店します』の主題歌として流れていましたが、ドラマ用に書き下ろした曲ですか?

「いえ、もともとあった曲を“主題歌に使いたい”と言っていただきました」

──この楽曲で歌われる“誰かと比べない、自分にとっての最高の自分を見つけよう”というメッセージは、前作「Love Myself」とも通じるものがあると思いながら聴かせていただきました。

「ありがとうございます。でも、実は「Best Version Of Me」のほうがずっと前からあった曲なんです。7年前くらいに書いた曲なんですけど、時が経っても伝えたいメッセージが全然変わらないなと思って。それに、これって女子には必ず刺さるんじゃないかな?って(笑)」

──しっかり刺さりました(笑)。それにしても、7年間も温めてきた楽曲が、今回、満を持してのリリースとなるんですね。

「そうなんです。やっぱり、常に自分のベストバージョンを目指していますし、30代からはセルフラブのジャーニーもあって。でも、それってきっと私だけじゃなくて、“自分が胸を張れる自分になろう”って、みんな頑張っていると思うんですよ。ただ、そこで、“ベストバージョンになろうよ!”ってプレッシャーをかけるのではなくて、ボソボソと独り言を言ってるくらいのユル〜い刺し方がいいかな?って(笑)」

──アコースティックなサウンドにはそういう狙いが(笑)。

「ユルいんだけど、しっかり刺さるっていう(笑)」

──(笑)。でも、今の時代性にもピッタリ合うメッセージだと思いますし、それを7年も前からしたためていたクリスタル・ケイさんの先見の明もすごいです。

「これは私にとっても、時代的にも、終わらないテーマかもしれないですね」

──そんなクリスタル・ケイさんが思う、現在の“ベストバージョン”ってどういう状態ですか?

「健康!」

──大事です(笑)。

「まずは健康第一で、それから自分の身体が気持ちいい状態であること。いい状態に保てていたら、周りにも伝わるじゃないですか。“頑張ってるんだな”とか、“輝いてるな”って。すごい単純なんですけど(笑)。でも、自分の身体をいい状態にキープしておくっていうのも、わかりやすいきっかけなのかな?って思います。それから、常に胸を張っていられる、後ろめたいことが何もない気持ちに突入したいです。たぶん、“自分は一生懸命やっているし、悔いないし“っていうのが、ベストバージョンだと思います。そうすると、”他人と比べる“っていうのもなくなっていく気がします」

──では、最後の質問ですが、デビューから25年。今、クリスタル・ケイさんから見えてる光景って、かつて自分が想像していたものと同じですか? それとも違う、意外性のある景色ですか?

「え〜、全然わからない! だって、自分が30歳になるなんて思っていなかったし(笑)。子供のときって30がすごく遠く感じるじゃないですか。でも、もうすぐ40…怖っ! ていう感じで、25年後のことなんてまったくわからなかったですね。もちろん、“歌っているだろうな”とは思ってましたけど…」

──何か目標を決めたり、そこに向かって頑張るタイプですか?

「それが、そうじゃないんです(苦笑)。デビューが学生をやりながらのスタートだったので、当時は目の前にあることを一生懸命やるしかできなくて。それが身に付いちゃっていまだにそうだから、これからはもっとうまく時間を使えるようになりたいです(笑)。あと、これからの目標があるとしたら、これまで自分、自分だったのが、歳を重ねて、どんどん年下の後輩たちが増えてきて、ミックスカルチャーの子たちも増えてきている中で、その子たちにとってのロールモデルになれたらいいなっていう気持ちは出てきています」

──25周年という節目を経て、また新たなフェーズに入っていくんでしょうね。そこでは何を大事にしていきたいですか?

「後悔のない生き方をしたいです。自分に嘘をつかないで、常にオープンで。ステージでもパーソナルでも、自分のすべてを捧げられるアーティストでいたいですね」

取材・文/片貝久美子
写真/野﨑 慧嗣

RELEASE INFORMATION

2025年6月25日(水)発売
2CD+Blu-ray+トレカ5枚セット+三方背スリーブケース/TYCT-69353/6,900円(税込)
2CD+DVD+トレカ5枚セット+三方背スリーブケース/TYCT-69354/6,900円(税込)

Crystal Kay『ALL TIME BEST 25th Anniversary』

2025年6月25日(水)発売
2CD/TYCT-60248/9/3,900円(税込)

Crystal Kay『ALL TIME BEST 25th Anniversary』

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