木造駅舎の宝庫・津山線と因美線をなつかしの国鉄型車両でめぐる!
中国山地を横断する津山線と因美線。現在も国鉄時代の車両が走り、明治から昭和にかけて建てられた木造駅舎の宝庫でもある。いまや貴重な鉄道情景が残る2路線を訪ねた。
乗ってきたルートはこちら!
【津山線(岡山~津山間)】時を止めた木造駅舎の宝庫
岡山から津山線、因美線を乗り継ぐ1泊2日の旅に出た。目的は懐かしい木造駅舎を訪ねること。両線とも鉄道開業当初からの古い木造駅舎が数多く残されている。
まずは津山線に乗車。ホームで発車を待つのは、国鉄型ディーゼルカーのキハ47形。津山線は、国鉄型車両と木造駅舎の組み合わせが見られる、貴重な路線になった。
国鉄型車両がこんなにも!
普通列車で約40分の建部(たけべ)で下車。「古い駅だからねぇ」と、地元の方に声をかけられた。駅の開業は津山線開通から約2年後の明治33年(1900)。地域住民の請願で駅が設置されたのだという。待合室の片隅に置かれた掃除用具や、花瓶に生けられた生花に、ほっこりとした気持ちになる。
建部駅は文化財の駅舎
津山線ではほかに玉柏(たまがし)、福渡(ふくわたり)、弓削(ゆげ)、誕生寺(たんじょうじ)が開業時からの木造駅舎だ。建物自体は大幅に改修されているが、駆体は当時のもの。全体を眺めれば沿線の歴史を感じとることができる。
玉柏駅
弓削駅
亀甲駅
因美線(津山~鳥取) 寅さんが最終作で訪れた駅も
2日目は早朝の列車で因美線へ。那岐(なぎ)を訪ねたのち、折り返して美作滝尾(みまさかたきお)を訪問。ここは山田洋次監督が気に入り、『男はつらいよ 寅次郎紅の花』のロケに起用された駅である。昭和3年(1928)に建てられた駅舎は窓枠も木製のままで、寅さんがいまにもフラリと現れそうだ。
那岐駅
寅さんも最終作で訪れた美作滝尾駅
いったん津山に戻り、お昼前の列車で知和(ちわ)へ。出入り口扉も窓枠も木造で、駅が開業した昭和6年(1931)当時のまま。きっぷ売り場のカウンターや、待合室のベンチは、人々が触れることで自然に磨かれ、淡い光沢を放っている。いまは時を止めたような無人駅だが、随所に掌(たなごころ)のぬくもりが感じられる。
知和駅
次に乗る予定の列車が来るのは約3時間半後。隣の美作河井駅までは徒歩移動とした。ハイキング気分で歩くこと約1時間、山の中腹にポツンと美作河井の木造駅舎が見えてきた。背景の山並み、集落のたたずまいと相まって、その凜々しい姿に胸を打たれた。鉄道のある、日本の原風景と出会えた気がした。
美作河井駅
津山駅で下車したら、ここにも行きたい!
圧巻の扇形機関車庫&貴重な車両が勢ぞろいの『津山まなびの鉄道館』へ
『津山まなびの鉄道館』では、蒸気機関車からディーゼルカーまで13両の国鉄型車両を展示。昭和11年(1936)に造られた車両を格納する扇形機関車庫は、旧津山機関区で使用されたもの。機関車収容線は17線あり、現存するなかでは京都鉄道博物館に次いで2番目の大きさを誇る。大規模な機関車庫の存在は、津山が古くより鉄道の要衝だった証し。
国内で一両のみの試作機関車
大馬力! 急勾配で活躍
SLの王者、デゴイチも!
【津山まなびの鉄道館】
☎0868-35-3343
9:00~16:00、月(祝の場合は翌日)休。310円
岡山県津山市大谷
津山駅から徒歩10分
取材・文・撮影=米屋こうじ
『旅の手帖』2024年5月号より