強烈な生命力で悪魔に変貌することもある「帰化植物」とは何者!?【眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話】
Q 帰化植物が大暴れするワケは?
A 強烈な生命力で悪魔に変貌することも
帰化植物の正確な意味は、単に国外から入った植物というだけでなく、野外でどんどん増えて生育している植物のことです。
帰化植物の身近な例は、セイヨウタンポポです。生命力がとても強く、どこかに芽が残っていれば、そこからどんどん増えます。今や日本各地で見られるタンポポは、ニホンタンポポよりセイヨウタンポポのほうが多くなりました。セイヨウタンポポは、ヨーロッパ原産の帰化植物で、キク科タンポポ属の多年草、つまり同じ株が数年にわたって咲き続ける花です。
環境省が指定している「要注意外来生物」で、日本生態学会発表の「日本の侵略的外来種ワースト100」のひとつに選定されています。海外から日本に持ち込まれたタンポポは無性生殖で増える3倍体です。ですからセイヨウタンポポは無性生殖によって、自分の力だけでどんどん増えていきます。
3倍体だから種子ができないと思ったら大間違いです。なんと、花粉に関係なく、自分だけで種子をつくる、すごい生命力の持ち主なのです。
またセイヨウタンポポは、葉が動物に食べられても、芽が残っていればそこからも増えます。その旺盛な繁殖力で全国に広まり、特に市街地に多く進出していますが、まだ在来種の勢力が強い地方もあります。このことから、セイヨウタンポポが多く咲いていれば、都市化が進んだ目安となるといわれています。そのため、街の中でタンポポを見たら、セイヨウタンポポがほとんど、ということになります。
帰化植物は、キク科がもっとも多く、ほかにセイタカアワダチソウ、チョウセンアサガオなども帰化植物の例です。 逆に、日本のススキ、クズなどは、海外で帰化植物となって問題化しています。
形で見分けるタンポポ
ガク(総苞片)に注目
セイヨウタンポポが広がる理由
日本に生息する植物約6400種のうち1200種が帰化植物
セイヨウタンポポ → 自分で種子をつくることができる二ホンタンポポ → 昆虫が花粉を運ばなければ種子ができない
このサバイバル術がすごい!
身近で有名な帰化植物はクローバー(シロツメクサ)、クレソン、コスモスなど。要注意外来生物としてはセイヨウタンポポ、オオブタクサ、ハルジオンなど。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』監修:稲垣栄洋
【編集部メモ】「3倍体(トリプロイド)」とは?
3倍体(トリプロイド)とは、細胞の核に通常の2倍体(2セットの染色体を持つ)ところ、3セットの染色体を持つ生物のことを指します。3倍体は減数分裂時に正常な配偶子を作りにくいため、不稔(種ができにくい)になりやすい特徴を持ちます。そのことから種なし果実の生産にも利用されています。