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有澤樟太郎インタビュー アメコミネタが盛りだくさん&誰もが共感できるミュージカル『ヒーロー』

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有澤樟太郎

脚本/アーロン・ティーレン、作詞・作曲/マイケル・マーラーのコンビによる心温まるオリジナルミュージカル『ヒーロー』の日本初演が、シアタークリエで上演される。演出・訳詞・翻訳は『next to normal』、ミュージカル『この世界の片隅に』などを手がけた気鋭の演出家・上田一豪。主人公の青年・ヒーローは、『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』をはじめ、『グリース』、『ジャージー・ボーイズ』、『のだめカンタービレ』といったミュージカルにも数多く出演する有澤樟太郎が演じる。また、山下リオ/青山なぎさ(Wキャスト)、古屋敬多/寺西拓人(Wキャスト)、宮澤佐江、吉田日向/木村来士(Wキャスト)、佐藤正宏といったキャストが集結している。

歌稽古がスタートしたタイミングで、主演を務める有澤樟太郎の合同インタビューが行われた。

有澤樟太郎


■日本人も共感しやすい、等身大の物語

ーーまずは今の思い、歌稽古をしてみての感想を教えてください。

台本をいただいて読み、今まで出演した中で一番好きなお話かもしれないと思いました。音源を聴きながら読みましたが、曲も素晴らしかったのでモチベーション高く稽古に入ることができました。

『ヒーロー』というタイトルですが、人間ドラマ。登場人物がみんな素晴らしいです。僕が演じる主人公・ヒーローだけじゃなく、家族や友人の人生、恋愛模様も描かれている。何かを抱えている人たちが前向きになっていく物語は、共感しやすいのかなと思います。物語の舞台であるウィスコンシン州ミルウォーキーも、いい感じにこぢんまりとした街。こういう作品をミュージカルで見たかったと感じました。

ーー日本初演に対する意気込みはいかがでしょう。

この題材を見つけてきてくださったプロデューサーさんに感謝しています。好みの作品で主演を務められる嬉しさもあります。去年はオリジナル作品が続いていましたが、今年は翻訳物をやる機会が続きます。日本初演の『ヒーロー』を信頼できる上田一豪さんの演出でできる。楽しみなことだらけです。

有澤樟太郎

ーー上田さんとは『グリース』や『のだめカンタービレ』でもご一緒しています。演出、クリエイションにおける魅力を教えてください。

これまで一豪さんとご一緒した作品は、『グリース』も『のだめカンタービレ』も学園ものでした。時代や国といった背景を作るのがすごく上手で、自然とその世界に連れて行ってくださる演出家さんです。翻訳における言葉選びもしっくりきますし、素晴らしいなと思います。

あとは、『グリース』の時はハンバーガーを差し入れてくださったり、通し稽古の前のオーバーチュアで踊り出したり(笑)。ハンバーガーを食べて革ジャンを着て……みたいな、ザ・アメリカという舞台だったので、作品に合った空気を作り、テンションを自然と作品の世界に持って行ってくれるのが素敵だなと思いました。

■身近なひとたちとリンクするキャラクターが魅力

ーー今回はWキャストの方も多くいらっしゃいます。今までにない経験ではないでしょうか。

ジェーンにカーク、ネイトとすごく絡む役が全員Wキャストなのは新しいです。皆さんほぼ初めましてですし、僕より遥かに年下の子もいるし。僕は『17 AGAIN』というミュージカルで、当時17歳だった福澤希空くんとすごく仲良くなったのですが、またさらに歳を重ねた状態で17歳の子と仲良くできるのかなと(笑)。ちょっと心配もありますが楽しみです。

ーー今回演じるヒーローという人物の魅力はどこに感じますか?

普通の人というところですね。ヒーローは28歳で、僕の年齢とも近い。でも過去の事件にトラウマがあって前に進めなくなっている。

また、12歳のネイトという少年がヒーローの父と仲良しで、台本を読んで小さい頃のことを思い出しました。ご近所付き合いが密でみんな仲良しなマンションに住んでいて、僕の家に自由に遊びに来る5歳くらいの男の子がいたんです。僕は当時小学5年生くらいだったけど、その子とすごく対等に遊んでいました。この作品でも、12歳の子と対等に仲のいい28歳というところにヒーローの人柄が出ていると感じました。ネイトとの関係性がキーポイントになると思うので、役作りを大切にしたいなと。今作の登場人物はみんな、僕の周りにいた人たちとどこかリンクする。自分の人生に近いのも、この作品をすごく好きだと感じる理由かもしれません。

ヒーローは、現実世界でも現実逃避し、傍観者になっているような人間。自分が絵日記に書く漫画の世界にも自分は登場しない。自信がないのか周囲に対する思いやりがあるのかわからないけど、お客様にも共感していただけるキャラクターだと思います。同じ主人公でも、今後僕が『キンキーブーツ』で演じるチャーリーとは全然タイプが違うのですごく楽しみですね。

有澤樟太郎

ーーヒーローを見守り、背中を押そうとする父・アルの関係も印象深いです。

アルは息子に期待したり「もっとできるよ」と言ってくれたり。親って子供にすごく期待してくれるけど、子供はその期待の意味がわかってなかったりしますよね。

僕は野球が好きで、本格的にやるためにクラブチームに入りたかったんです。けど母には「現実的には無理だから、野球の強い私立の学校を受験したらいい」と言われて。今考えたら母の言うことを聞いて良かったと思うけど、親が子供を導くってすごく大変だと思いますし、大人になってから「あの時のことがこう繋がるんだ」と気づくことだらけです。

今回は等身大の男の子とお父さんの話。お父さん自身も「自分の生きがいはヒーローだから、ヒーローが立派になったら俺も一歩踏み出してみるよ」と言い訳にしてしまっているところがある。親子がすごく対等だと思います。

■様々なヒーローの言葉が歌詞やセリフに入っているのも楽しい

ーーご自身も幼少期、ヒーローに憧れていたそうですね。

スーパー戦隊と仮面ライダーが大好きでした。自分の将来の夢を見返してみても、消防士さんとか警察官とか、スーパー戦隊のモチーフになっている職業に憧れていました。自分がこの世界を目指したきっかけもヒーローにありますから、大きな存在です。

ーー作中ではアメコミがたくさん登場します。思い入れのある作品があれば教えてください。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が大好きです。あと、『ヒーロー』は2008年の物語という設定で、『アイアンマン』が公開された年。アメコミの実写化がすごく盛り上がった時期の話なので、マーベルが大好きな僕としてはすごくテンションが上がりました。

セリフや歌詞にもたくさん出てくるので、『グリーン・ランタン』や『スーパーマン』など、作中に登場するヒーローを全部チェックしています。 正義の味方が言うセリフって教訓にもなるし、大人目線で見ても素晴らしい。あと、日本だとコスチューム的な印象があるけど、アメコミってスーパーマンもハルクもスパイダーマンも、そのビジュアルになる理由がある。その面白さにハマりましたし、それを題材にした作品に出演できるのが嬉しいです。

ただ、後輩とご飯に行ったときに「次『ヒーロー』ですよね。戦うんですか?」と言われたので、もしかしたら内容をわかっていない人もいるかもしれません(笑)。

有澤樟太郎

ーー有澤さんが考える“ヒーロー”の定義はなんですか?

日本では、正義の味方・ピンチの時にやってきて助けてくれるのが王道ヒーローだと思います。でも、海外のヒーローはいい奴もちょっと嫌なところがあったり、例えばアイアンマンなら大企業の社長だったり、もう一つの顔があるんですよね。人間ドラマを丁寧に描いているところに惹かれました。あとはSF要素も好きです。と言っても、今回は全然SF要素はありません。

僕が戦うと思ってチケットを取ってくれた方がいるかもしれませんが、そういう話ではなく人間ドラマ。ヒーローに心を打たれた僕のような人がどんな人生を歩んでいくかという話なので、皆さん共感できると思います。

ーーセリフの中に「スーパーヒーローライフ」というものがありますが、有澤さんにとっての「スーパーヒーローライフ」とは。

ヒーローに憧れてこの仕事を目指したところもあります。また、ファンの方から「私のヒーローです」と言ってもらえることがあって、すごく嬉しいです。若い頃は子供達に憧れられる存在になりたいという夢があったけど、僕が舞台に立って演じることや、僕の何気ない言葉で救われてくれているファンの方がいると思うと、すごく責任感のある仕事だと思いますね。お手紙に「すごく大変な時期にこの作品・言葉で救われました」ということを書いてくれる人もいて、すごくありがたいです。

ーーアメコミでも特撮でも、ヒーローには戦う理由やパワーの源があります。有澤さんにとって、頑張る力の源になっているものはなんでしょう。

もちろんファンの皆さんの声もありますが、悔しい経験や反骨精神がエネルギー源になっています。生きていると楽しいことだけじゃなく悔しいことや辛いこともあるけど、それが今後の糧やモチベーションになりますし、そういった経験がないと役者を続けられていないと思います。壁にぶち当たっても、次に活かそうというポジティブなエネルギーにして頑張っています。

ーー最後に、楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。

素晴らしいキャストのみなさんが集結しています。登場するキャラクターも音楽も、いいものを作ってみなさんに届けますので、劇場でライブ感を楽しみながら観ていただけたら嬉しいです。

有澤樟太郎

ヘアメイク=池上豪(NICOLASHKA)
スタイリング=山田安莉沙

取材・文=吉田沙奈      撮影=荒川 潤

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