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マジンガーZに心が高ぶる! スーパーロボットの美学

Dig-it[ディグ・イット]

断言しよう。「ロボットが嫌いな男子はいません!」と。なぜならば、いまだに新作ロボットアニメが作られて続けているし、プラモデルやフィギュアのマーケットは拡大を続けているからだ。ゲームクリエイター・寺田貴信氏に、ロボット愛遍歴とフィギュアの造形美について聞いた。

マジンガーZのフィギュアがXで大バズリ

リボルテック アメイジング・ヤマグチ マジンガーZ(海洋堂) ●仕様:彩色済み可動フィギュア●サイズ:全高約150㎜ ●原型制作:山口勝久1万2,100円●発売:2025年10月予定

2024年12月16日、ゲームクリエイター・寺田貴信氏の次のようなポストが大きな反響を呼んだ。

『海洋堂さんまで伺い、リボルテックアメイジング・ヤマグチ「マジンガーZ(12月18日から予約開始)」のテストショットを見せていただきました。』

テストショットの画像を添えたこの一文がどうして多くの耳目を集めたのか理解していただくには、いろいろと説明が必要かもしれない。

「リボルテック」とはフィギュアメーカー、海洋堂のブランドのひとつで、リボルバージョイントを採用することで、広い可動範囲を有するフィギュアシリーズのこと。次に「アメイジング・ヤマグチ」は、可動フィギュア原型師・山口勝久が〝キャラを魅力的に動かす〞ことをコンセプトに生み出したシリーズで大変な人気を獲得している。要するに、自分の思い描いたカッコいいポーズを自由に作れるフィギュアである。この度「リボルテックアメイジング・ヤマグチ」のラインナップにマジンガーZが新たに加わる。

そして、寺田貴信氏ーー本誌読者にはお馴染みである『スーパーロボット大戦』シリーズなど数々のゲームのプロデューサーを務め、スーパーロボットをこよなく愛する御仁である。

海洋堂にてテストショットと遭遇した時の興奮を綴った寺田氏の公式X ⒸGo Nagai/Dynamic Planning

隠れてロボットアニメを観続けた青春

寺田氏がどうして「マジンガーZ」のテストショットにそこまで心を動かされたのか。まずは、氏とスーパーロボットの関係のさわりを聞いてみよう。

「僕は昭和44年生まれなので、テレビアニメ『マジンガーZ』を観ていたものの記憶にあるのは後半のストーリーです。ただ、劇場版の『マジンガーZ対暗黒大将軍』はよく覚えています。僕のスーパーロボット遍歴の原点はそこからですね。ポピーさんから発売された初期の超合金のブームを体験しています。あの頃は超合金を持っていることは、子供の間でのステータスでした。学校の裕福な友達が、『超電磁ロボ コン・バトラーV』の5体合体セットを持っていたので、見に行きましたもん」

『マジンガーZ』の大ヒットはロボットブームを引き起こした。『マジンガーZ』の続編である『グレートマジンガー』をはじめ巨大ロボットの新作アニメが多数制作された。テレビ雑誌では毎号そうしたロボットアニメの特集が組まれ、新製品のおもちゃは間断なく販売されていた。

「コン・バトラーVの合体セットは無理でしたけど、ゲッターロボ、鋼鉄ジーグ、ボルテスV ボルト・イン・ボックス…と誕生日やクリスマスのプレゼントで結構買ってもらいました。案外うちはお金持ちだったのかもしれない(笑)。そうやっておもちゃを買い続けていると『いつまでおもちゃで遊んでいるんだ』って言われました。僕は後の人生でこの手の小言を4回ぐらい言われることになるんです(笑)。ガンプラに夢中になっていると、『いつまでプラモ作ってんだ』みたいな。まぁ、それらは後で全部仕事にするんですけど」

そのガンプラーー『機動戦士ガンダム』の洗礼を寺田氏はもちろんリアルタイムで受けている。

「それこそクラス中みんなが劇場版『ガンダム』を観てガンプラの話をしていました。ただ、その後はロボットアニメやガンプラを卒業してファミコンへ移行する友達が多かったですね。『Ζガンダム』の頃は僕が通っていた高校の前に模型店があって。あの当時僕の周りでは高校生でロボットのプラキットを買うと冷やかされるんで、個人の趣味としてひたすら内圧を高めていました」

アニメと同じ形のプラモが欲しかった

幼少期にロボットのおもちゃを集めていただけに、プラモデルにハマるのも自然だった。

「テレビアニメでは、プラキットを宣伝するじゃないですか。僕もロボットが好きだから、アニメに登場するロボットのプラキットをおもちゃ屋に買いに行く。ガンプラだけでなく、他のロボットアニメや僕が住んでいる地区で放送されていない作品の商品まで買いました。安価なものだと1個が300円程度なので、自分でこづかいを貯めてとにかく売ってる物を片っ端から買うみたいな。当時は、自分のこづかいと新商品の販売されるペースと入手のしやすさが全部そろっていた、いい時期だったんです。今はプラキットを買っても作る時間がなかなかないのですが、それは自分でなんとかしろって話ですよね(笑)」

ロボットのプラモデルならなんでも買うが、好きだからこそ造形には強いこだわりがある。

「小学生の頃にミリタリーブームがあって、戦車や戦艦、戦闘機などのプラキットが大流行して、ミリタリー物をちょっとかじっていました。昭和の時代、模型店ではミリタリー物が圧倒的に多かったです。僕が行っていた店だとアニメ関連のプラキットは隅っこに置かれていました。『宇宙戦艦ヤマト』や『ガンダム』以前のプラキットはミリタリー物に比べて形状的に物足りないとずっと思っていました。というのも、アニメと同じ姿をした商品が少なかったからです。 ゼンマイ走行のギミック入りの物が多くて、それがないプラキットは〝ディスプレイモデル〞などと呼ばれていました。僕はそのアニメどおりの形の商品が欲しかったんです。持っていたボルテスVの超合金は設定に近い姿をしていましたが、アニメとはボディバランスが違っていたりしました。

宇宙戦艦ヤマトのメカコレクションというプラモデルシリーズは設定画準拠だったので喜んで買いあさりましたね。ただ、あの頃はすべてのアニメプラキットが設定画どおりの形をしていたわけではなかったです。たとえば初期のガンプラだとコアブースターなどは今見てもすばらしいんですが、設定画と比べてバランスやイメージが違うキットもありました。模型誌などでは〝ザクの肩はハの字に切るべし〞みたいな感じで改造してましたが、小学生だった自分にそれができる技術はありませんでした。塗装すらままならなかったんです。形も色も設定画に近いプラキットが出てくるようになってきたのは『逆襲のシャア』(88年)ぐらいから。あのプラモデルシリーズのなかでは1/144ジェガンがいちばんデキがいいと思いました。 特に手首。そのパーツだけを目当てにいくつも買いました(笑)」

筆者の個人的な感想だが、寺田氏が評価する『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の完成度の高さには同意だ。私は劇場で同作を観てすぐに、「1/144νガンダム」(87年11月発売)を購入した。このデキに満足してしまったのか、プラモ作りの熱が次第に失われていった。

その私に対して寺田氏が推薦してきたのは、現在BANDAI SPIRITSより発売されている「ENTRY GRADE 1/144νガンダム」であった。

「成形色でだいたいの色分け済み、工具不要で1100円。プラモデルを作らなくなった人の理由ーー『高いから』…安いですよ、『作るの手間だから』…工具いらないですよ、『時間がないから』…1時間もかかりませんよ、としっかり対応しています。思い出に残っている昔のνガンダムよりも、最新モデルの方が間違いなくカッコいい」

寺田氏の話を聞きながら、少しずつ前のめりになっていく私。

「ただ、完成度の基準は自分のなかで〝よし〞と思ってください。人と見比べると〝あんなに上手く作れない〞とか思っちゃうか らダメなんですよ。あなたが展示会に出すというならどこまでもこだわってどうぞ。でも、家でそれを眺めてニヤニヤしてるだけなら、もういいじゃないですか」

ちょうどいいリアルさをまとうアレンジ

寺田氏のロボット愛の原点が『マジンガーZ』であること、そして造形へのこだわりについては理解した。それが冒頭のリボルテックアメイジング・ヤマグチ「マジンガーZ」のファーストインプレッションをポストした衝動のひとつと言えるだろう。それにしても、かように多数の人が反応した、この新商品の魅力はどんなところにあるのだろうか。

「僕は作品の記憶が合金トイやプラキットなどとひもづいているから、今のフィギュアも好きなんです。昭和50年男のなかには、『マジンガーZ』のリアルタイムに生まれていないからなじみが薄いと考える方もいるでしょうね。でも、むしろ関係は深いんですよ。マジンガーの名を冠した『ゴッドマジンガー』(84年)は放送されていたし、ガレキのブームもありました」

ガレージキット(ガレキ)は、クオリティにこだわるマニアが、自ら造った原型をもとに型取りをして、レジンキャストで生産する手作りの模型のことである。手作りのため生産数には限りがあるが、少量生産だからこそ作れるキャラクターだったり、市販量販品ではできないこだわりの造形だったりを楽しむことができる。

「その頃、海洋堂さんやゼネラルプロダクツさん(※)などのガレージキットメーカーさんが、画面で観ていたそのものの造形で怪獣とかを出して、アニメロボットもその流れでいくつか商品化されていました。あとはマジンガーZを『スーパーロボット大戦シリーズ』を遊んで知ったっていう方が少なからずいらっしゃる。だから、アニメを全話観ていなくても、皆さんマジンガーZの形はわかるでしょ」

さらに、寺田氏は今回のマジンガーZのフィギュアこそ、昭和50年男に最適だと続ける。

「昭和40年代生まれの自分にとってマジンガーZのデザインは至高ですが、リアルテイストのロボットを見慣れた昭和50年男がマジンガーZのシンプルな形状にリアル味を感じないと言われるのも理解できます。でも見てこのヒザ。原作にはないこのパーツで、理に適った稼働をする。そして、ところどころに入っているパーティングライン。実はこのマジンガーZは、原型を作った山口さんがもつ、いろんなマジンガーZのイメージが内包されているんです。細かい部分にアレンジをさり気なく入れることで、オリジナルのイメージを損なわないちょうどいいリアル感をまとっています。カッコよくまとめるあたり、さすがに山口さんは天才的」

曲げたヒザからのぞく関節パーツ。このパーツが「理に適った稼働」(寺田氏)を実現させる

寺田氏はXで、程よい大きさと重さで可動範囲も広いと評し、テストショットを2時間近くもいじっていたと綴っている。

「直感的に動かせるんです。最初に見本写真のポーズをひと通り取らせたら、自分なりのカッコいいポイントを探っていく。そこからはごっこ遊びです。エフェクトパーツを使って、ロケットパンチを飛ばしたり、ジェットスクランダーで飛行させたりしてね。キーンって飛ばして!(と言いながら手をぶんぶん回す)」

理想のカッコよさを追求するユーザーの熱意に応える豊富なパーツ群

何を言われても好きならええやん

2024年は『勇気爆発バーンブレイバーン』と『グレンダイザーU』が放送されて話題になり、現在も『新幹線変形ロボシンカリオン チェンジザワールド』が放送されている。とはいえ、80年代に比べてロボットアニメ作品は減少している。

「今は子供向けのロボットアニメがあまり制作されていないから、子供の頃にアニメに興味をもっても、ロボットにまで目が向かない。そのため『ロボット好きは少数派』だとか『観ている人が小ない』などと言われたりします。でもね…近年『鬼滅の刃』が大ヒットしていますが、もしその10年前に、『大正時代が舞台で着物を着た少年たちが鬼を倒す話が世界的にヒットする』と言っても誰も信じないんじゃないでしょうか。だから、流行っていないなんて言われると僕は『逆にこれから流行るチャンスを作れるじゃないか』って思っちゃう。アニメロボットの商品は近年ホビー業界で盛り上がっていますし、ロボットはロボット好きの人たちのなかにずっとあるんで、それでいいんじゃないでしょうか」

寺田貴信/てらだたかのぶ
昭和44年、京都府生まれ。バンプレストに入社すると、『第2 次スーパーロボット大戦G』のプロデュースを担当。以後、B.B.スタジオの取締役を経てフリーになり、プロデューサー、プランナー、ゲームクリエイター として活躍している。さらに、シナリオ執筆やトイ&プラモの企画や監修も行う

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