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佐々木朗希は2年前より劣化したのか?データ分析で浮き彫りになったメジャー挑戦前の課題

SPAIA

佐々木朗希,ⒸSPAIA

完全試合を達成した2年前と今季を比較

ロッテの佐々木朗希がポスティングシステムによるメジャー移籍を目指すことになった。プロで5年、シーズンを通してローテーションを守ったことのない右腕の挑戦に眉をひそめる向きも少なくないが、挑戦を決めた以上、批判的な声を封じ込めるためにも活躍するしかない。

佐々木の名を全国、いや、世界中に轟かせたのが2022年4月10日のオリックス戦だ。世界新記録の13者連続奪三振を含む19三振を奪って完全試合を達成。さらに次の登板となった同17日の日本ハム戦でも8回パーフェクトの14奪三振無失点で降板した。味方の援護に恵まれず、2試合連続完全試合はならなかったが、実力を知らしめるには十分だった。

あれから2年以上が経過し、今季も18試合で10勝5敗、防御率2.35と初の2桁勝利を挙げたものの、当時のような手も足も出ないといった投球は見られない。一体、何が違うのか、データから分析した。

球速が落ちたストレート…空振り率や被打率は悪化

完全試合を達成した2022年と2024年のストレートを比較したのが下の表だ。


ストレートの平均球速は2022年が158.3キロ、2024年は155.9キロ。最高球速も同様に164キロから162キロに落ちている。

球速の低下に伴い、ストレートの空振り率も9.8%から6.8%にダウン。被打率は.227から.302と悪化している。

高校時代から最大のセールスポイントだったストレートが遅くなっているのはデータが示す通りだ。それを意識してか、捕手のサイン通りなのか分からないが、ストレートの投球割合も56.1%から46.2%に減少。では、何の球種が増えているのだろうか。

フォークの空振り率低下、スライダーの投球割合は5倍以上

変化球も2022年と2024年のデータを比較してみた。


ストレートと並ぶ大きな武器のフォークは2022年の平均球速が143.5キロ、2024年は142.1キロとほとんど変わっていない。ただ、空振り率は29.4%から24.5%にダウン。そのためか、投球割合も33.7%から28.1%に減少している。

減少したストレートとフォークに代わって大きく増加しているのがスライダーだ。投球割合は5.0%から25.7%と5倍以上。ただ、多用する割に空振り率は21.1%から14.9%に低下している。

佐々木は2年前に5.2%の割合で投げていたカーブを今季は投げていない。緩急を活かすため完全習得に取り組んでいることは報道されていたが、実戦で使うには至っていないのだろうか。

スライダーの平均球速が141.8キロから134.5キロに落ちているのは、カーブを投げない代わりの意図的なものなのか、握りを変えたのか、何らかの工夫の結果なのかもしれない。

与四球が増えたのはコントロールのせいではない?

佐々木のスピードが落ちていることは分かった。もうひとつ気になるデータがある。下の表を見てほしい。


BB/9とは与四球率、つまり9イニング投げた場合に四球を何個与えるかを示す指標だ。見ての通り、2022年の1.60から2024年は2.59に悪化。同様にK/9(奪三振率)も2022年の12.04から10.46に低下している。

奪三振と与四球は守備や球場の影響を受けないため、投手の実力を測るものさしとしてMLBでもよく使われる「K/BB」という指標がある。奪三振と与四球の比率を示すものだが、佐々木は2022年の7.52から2024年は4.03に悪化。3.50を超えれば優秀とされるため2024年も決して悪い数字ではないのだが、2022年と比較すると落ちていることは確かだ。

ちなみにカブス今永昇太の渡米前年は7.25、ドジャース山本由伸の渡米前年は6.04、メッツ千賀滉大の渡米前年は3.18だった。

もしかして、佐々木はコントロールが悪くなったのではないか、という疑念が浮かぶ。そこで調べたのが表にある球種別のストライク率。ストレートとスライダーはほとんど変わっていないが、フォークのストライク率は70.2%から54.1%と大幅に悪化している。

フォークはその特性上、ボールゾーンに投げることが多いため、打者が振ってくれないとボールになる。先述の通り、空振り率は29.4%から24.5%に下がった。つまり、コントロールが悪くなったというより、フォークを見られたため四球が増えたと推察できる。

それも突き詰めれば、ストレートの球速が落ちていることに起因するのかもしれない。速いストレートがあるからこそフォークも活きるからだ。

もちろん、相手チームの研究、打者が慣れてきたことなど様々な要因が絡み合っているのだろうが、結果的に佐々木は2年前より落ちていることをデータは示している。

立ち上がりに打たれるケース増加

最後にもうひとつデータを紹介しよう。イニング別の防御率だ。


2022年に比べて、2024年に目立って悪化しているのが1回と2回。1回は1.35から3.00、2回は1.80から3.12と失点が増えている。

ストレートや変化球のデータとの因果関係は分からないが、立ち上がりに打たれるケースが増えているのだ。これもメジャーに行けば注意を払うべき点だろう。

佐々木が類まれなポテンシャルを持つ投手であることは疑いようがない。2022年に放った輝きがあまりに鮮烈だったため、どうしても現状に不安を抱いてしまうが、メジャーで雑音をシャットアウトするような快投を見せても不思議ではない。移籍には賛否両論あるにせよ、雑音を吹き飛ばすような活躍が期待される。

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記事:SPAIA編集部

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