扱いにくい感情語彙「憐れみ」を物語ではどう扱うべきか?【プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑】
NO.06 憐み【あわれみ】
[英:Pity ]
【意味】
可哀そうに思い、深く同情すること。
【類語】
哀憐 不憫 慈悲 惻隠 悲哀 哀切 憐情など
体(フィジカル)の反応
表情が暗くなる涙が流れる相手に寄り添うどういうべきか迷いながら、相手を慰めるうなずいて共感する目線を落とす唇を固く結ぶ腰を落とす優しく接するものや手をいじる胸が締めつけられる嘆息を漏らす険しい顔つきになる相手と肩を並べる体をぽんぽんと叩く
心(メンタル)の反応
悲しくなる辛くなる相手を労わりたいと思う心を痛める慈しむ心配になる嘆かわしい思いやりたい相手をおもんぱかる同情心にほだされる意識して気を配るしんみりするかわいそうに思う相手に理解を示すどう声をかければいいかわからず気まずい感じがする
「憐れみ」は優位な立場から見てかわいそうだという前提
心を司る独特の感情のひとつ「憐れみ」。優しい気持ちの一部のように捉えられ、実際に間違いではないものの、じつはなかなか扱いにくい感情語彙です。その理由は簡単。「憐れみ」は劣位の人に抱く感情だからです。
つまり「憐れみ」を施す人は優位な立場の自分から見てかわいそうだという前提があり、読者には〝嫌な奴〟に映りかねません。
一方、「同情」であれば優劣に関係なく、あらゆる人を対象に思いやる気持ちと優しさが含まれます。表現用途として無難かつベターなのは、「憐れみ」より「同情」だと覚えておきましょう。
実際、「憐れみ」はよい意味で使われません。《同類相憐れむ》とは、弱い者同士で傷を慰め合う、という意味ですし、江戸五代将軍徳川綱吉が発令した《生類憐れみの令》は犬猫などの生き物を対象に「憐れみ」の施しを命じています。不用意に誰もを「憐れむ」主人公は、お高い身分で共感されにくいキャラになるのでご留意を。
「憐れみ」よりも「同情」を意識すべき
【出典】『プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑』著:秀島迅