三宅香帆が選ぶ、新生活にそっと寄り添う3冊
新生活のはじまりは、期待と不安が入り混じる季節。入社、転職、異動など、環境が大きく変わるタイミングにこそ、自分と静かに向き合う時間を取ってみませんか。
今回は、新書大賞2025を受賞した話題作『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の著者であり、年間365冊の本を読む三宅香帆さんが、「働くあなた」に向けた3冊をご紹介。文学、ビジネス書、エッセイなど、ジャンルを超えて届けるのは、新生活にそっと寄り添い、背中を押してくれる本たち。
4月のテーマは、 「新生活を迎えたあなたへ」 。
新しい一歩を踏み出すあなたに、三宅さんの選書とメッセージをお届けします。
1冊目『朝のあかり』
著:石垣りん
発売日:2023年2月21日|出版社:中央公論新社
内容
働きながら続けた詩作、五十歳で手に入れたひとり暮らし。「表札」などで知られる詩人の凜とした生き方が浮かぶ文庫オリジナルエッセイ集。〈解説〉梯久美子
三宅香帆さんのおすすめコメント
三宅香帆
銀行員として働きながら詩人として活動した、石垣りんさん。彼女のエッセイ集である本書は、仕事や生活の中で生まれる、細やかな思考と感情を綴る。新しい生活にちょっと疲れてしまった時に読むと、生活の労働を両立しているのは自分だけじゃないんだ、とほっとできる。一編も短く、隙間時間で読みやすいところもおすすめポイント。
2冊目『野心のすすめ』
著: 林真理子
発売日:2013年4月18日|出版社:講談社
内容
「やってしまったことの後悔は日々小さくなるが、やらなかったことの後悔は日々大きくなる」をモットーとする作家・林真理子。中学時代はいじめられっ子、その後もずっと怠け者だった自分が、なぜ強い野心を持つ人間になったのか。全敗した就職試験、どん底時代を経ての鮮烈なデビュー、その後のバッシングを振り返り、野心まる出しだった過去の自分に少し赤面しながらも、“低め安定”の世の中にあえて「野心」の必要性を説く。
三宅香帆さんのおすすめコメント
三宅香帆
少し馬力がほしいときに読むべき、小説家の林真理子さんが「野心」について語ったエッセイ。いまの時代、実生活で他人から野心の持ち方について教えてもらう機会は稀かもしれない。が、林さんの思考に触れるだけで「自分ももっと高い目標を持ってもいいのかも」「人生、野心を持つべきなのかも」とわくわくしてくる。人生や仕事へのやる気を取り戻したい時に読みたい、ドーパミンの出るエッセイ!
3冊目『仕事の喜びと悲しみ』
著: チャン・リュジン|訳:牧野美加
発売日:2020年12月23日|出版社:CUON
内容
表題作「仕事の喜びと哀しみ」がチャンビ新人小説賞を受賞し、ネットに公開されるとたちまち読者の共感をよび40万ビューを記録。2020年11月には韓国KBSでドラマ化もされています。本書にはこのほか、ミレニアル世代の著者が同世代の人々を主人公に描いた、8篇を収録。
三宅香帆さんのおすすめコメント
三宅香帆
1986年生まれの韓国の小説家であるチャン・リュジンによる短編集。表題通り、仕事の日常をユーモアを交えつつ綴った物語が多く、読むと「私も頑張ろう」と思える。韓国の小説ではあるが、日本でもあるあると笑ってしまう仕事の失敗や、人間関係の葛藤が描かれているのだ。読むときっとどこかに自分の姿が見つかるはず。仕事について考えたい時に読みたい一冊。
三宅香帆さんから、新生活を迎えたあなたへ
新生活、いかがでしょうか?
私自身、新しいことを始めるのは全然得意ではなく、新生活は常に気が重いです。でもきっと人間、すべてにおいては慣れていきます!「いつか慣れる、いつか慣れる」と唱えつつ、がんばっていきましょう。何事も、始める時がなによりつらいものだと、私は思います。
まずは自分を大切に、そして周りの人も大切に。
新しい生活に疲れたら、ぜひ本でも開いてみてくださいね。もし本を読む時間がなかったら、書店へ足を運ぶのもいいと思います。面白そうな本を見つけられたら、これを読むまでがんばろう、と思えるものです。
応援してます!!
プロフィール
三宅 香帆 (Kaho Miyake)
1994年高知県生まれ。京都大学人間・環境学研究科博士後期課程中退。リクルート社を経て独立。主に文芸評論、社会批評などの分野で幅広く活動。著書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』『「好き」を言語化する技術』等多数。
X(旧Twitter) @m3_myk YouTube 三宅書店【本を読むモチベを上げるチャンネル】
次回もお楽しみに!