「にしはら」「にしわら」どっち? 名張市西原町の読み方の謎 行政も不ぞろい
三重県名張市西原町。同市北部に位置するこの地名の読み方について、読者から「道路の地名表示は『にしはら』だが、正しくは『にしわら』ではないのか」といった声が届いた。YOUが調べてみた。
市史によると、西原町は旧新田村の一部で、西原と呼ばれた小字が1954年の市制施行時に西原町と呼ばれるようになった。新田地区の古地名「美濃原」の西端に位置することが地名の由来とされている。市史では「にしわら」のルビを振っている。
県道伊賀名張線を桔梗が丘地区から北上すると、三差路に歩道橋がある。信号機横の地名表示の読み方は「にしはら」となっている。
歩道橋は県が管理しており、設置時期は72年。県伊賀建設事務所保全課の担当者は「当時のことは分からないが、一般的に設置時に地名の読み方を市町に確認している」と話す。
歩道橋付近と少し離れた十字路付近には、鉄柱に設置された「公共サイン」と呼ばれる地名看板があり、「にしはら」と読ませている。公共サインは、市が90年代半ばに市内100か所以上に設置したという。
ところが、市が統一している読み方は違っている。市内の地名の読み方をまとめた一覧表があり、表で西原町は「にしわら」と読むこととしている。この矛盾を記者が指摘すると、公共サインを管理する市維持管理室の担当者は「当時どうやって決めたのかはわからない」と話した。
日本郵便がホームページで公開している西原町の読み方は「にしわら」だが、現地に設置されている郵便ポストには「にしはら」と表示している。
国土交通省国土地理院がウェブサイトで公開している地図データには「にしわら」とあり、日本歴史地名大系(平凡社)などの地名辞典も「にしわら」、地区内にある北伊勢上野信用金庫の支店名も「にしわら」となっている。一方、歩道橋の近くにある三重交通のバス停は「にしはら」と振り仮名がある。
かつて地区に存在した旧伊賀線の「西原駅」の読みについても伊賀鉄道総務企画課に確認した。1964年に撮影された駅名看板の写真が残っており、大きく「にしはら」と書かれていた。
西原区長の森優広さん(66)は「子どものころは『にしわら』と言っていた記憶があり、年配の方に聞くと『にしわらが正式では』とおっしゃる」と話す。周囲の傾向について「地元では今、どちらかというと『にしはら』と呼ぶ方が多いと思う」と話した。
郷土史に詳しい人などにも取材したが、読み方が二通り混在してしまった理由は分からなかった。