【上海発】店名が強烈!話題の庶民派若者好みの甘辛醤油風味『毒蛇麺館』
出身地も食の好みもさまざまな人が集まる上海は、東京よりも食のブームが生まれにくい気がします。
ここ数年は特に人それぞれ好みも細分化していて、目に見える流行を見つけるのがさらに難しくなっているよう。「流行っているのかも」と思ってもすぐに収束してしまったり、SNSで気になったお店について現地の友人に聞くと「おいしくない。一時的だと思う」と一蹴されることも増えています。
そんななか、2022年ごろから本店が徐々に話題になり始め、今年1月に静安寺エリアの割と一等地に支店をオープンさせたお店がありました。
が、だからといって「波に乗っている」と思ってすぐ記事にするのは上海ではリスキーで、新しいお店を見つけても待つのが肝心。そう思ってしばらく寝かせることにし、半年以上経っても賑わっていたらここでご紹介しようと考えていたのですが、見事、2024年の秋現在も大盛況。記事にすることにしました。
※そのため、店内のお客さんたちの写真の服装は冬服です(2024年1月に撮影しました)。
上海の庶民的な麺料理をアップデートしたお店
相席でぎっしり満席の人気
お店の名前は『毒蛇麺館』。甘辛醤油風味がベースの純上海式麺料理店です。
気になる店名は、「独舌(唯一無二の味)」と「毒蛇」の発音が同じ「dúshé」ことと、オーナーの娘さんが巳年生まれだということでこの名前になったそう(それにしても……)。
しかも本店は上海でもっとも不吉なエリアと言われる西宝興路にあり、ダークな要素も満載。でも、逆にその辺が「どういう店なんだろう」と人を惹きつけたのかもしれません。
字面に二度見してしまう
人気の理由は、上海人の好みの味にとことん寄せた麺料理なところ。
上海の麺料理店というと、『滄浪亭』『呉越人家』などの蘇州系、『阿娘麺館』などの寧波系が主流でしたが、『毒蛇麺館』は新しいお店なりに、そのどちらでもない昔ながらの上海の味にこだわっているところが唯一無二だと感じます。
ジャンルも何も気にせずに、普段の食事として親しまれてきた市井の麺料理という感じです。
※蘇州麺についてはこちらをどうぞ。
https://deep-china.tokyo/restaurant-info/16188/
まずは看板メニューから。混ぜそば「毒家拌麺」(21元)です。
上海でよく食べられている「葱油拌麺(焦がしネギと醤油の混ぜそば)」では物足りないという声があったんだろうなとすぐわかる、ピリ辛ひき肉入りの混ぜそばです。
伝統的だけど新しいアレンジを加えている
もう一つの看板メニューは「西宝興路兜一圏湯麺」(80元)。
「西宝興路をひとまわり」のような意味の大盛り麺です(約2〜3人前)。腰(豚キドニー)、レバー、野菜などの甘辛炒めが乗った甘め醤油スープの麺。このスープの味は上海ならでは。こってりしているのに油っぽくなくしょっぱさもなく、不思議な旨味があります。
超大盛り。取り分けても独り占めしても可
私がいちばんよく頼む定番は「腰花蝦仁湯麺」(49元)。
エビと豚キドニーの麺です。ほかのお店でもこの麺を頼むことが多いのですが、味は『毒蛇麺館』がいちばんかも。炒め物の香ばしさと甘めの醤油スープが麺に絡んで絶品です。
甘口の醤油スープと炒めものの香ばしさの融合。上海麺ならではのおいしさ
サイドメニューのいちばん人気は「南乳炸猪排」(17元)。
豆腐よう風味の豚カツです。各テーブルに置いてある豚カツ用のタレは、泰康黄牌の「上海辣醤油風味調味料」。ウスターソースをちょっとピリ辛にしたような風味のタレです。これで串カツを食べたら絶対おいしいと思う……。日本の中華食材のお店でも売っているのかも?
薄切りなので重くない豚カツ
スーパーで見るこの調味料、豚カツ用だったのかと初めて知った
麺の付け合わせにできる小皿料理も充実。
この日は「鶏毛菜」(3元)と「藤椒双脆」(12元)を頼みました。シャキシャキの鶏毛菜炒めと、ホルモンの麻辣風味和えです。
おつまみ的にも食べられる。が、アルコールメニューはない
ほかにもメニューいろいろ。
浇頭(麺の上にのせる炒めもの)だけをいろいろ頼むこともできるので、タウナギガラスープのシンプル麺「鱔骨濃湯」(18元)を頼んでおかずを何種類か楽しむのも良さそう。
2022年頃に茶館をアップデートした『開吉茶館』や『Tea’s stone』が登場したように、『毒蛇麺館』は伝統的な麺館のアップデート版という感じ。より利用しやすく、若い人の好みに合わせた庶民派伝統料理のお店は今後も増えそうです。
「半斤(500g)」など大盛りメニューが豊富なのも特徴
(萩原晶子)
店舗情報
毒蛇麺館 静安寺店
上海市静安区愚園路140号
10:00-22:30