『新幹線変形ロボ シンカリオン』『新世紀エヴァンゲリオン』に『ゆるキャン△』も!アニメと鉄道の関係に詳しくなれるおすすめ本
SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は「アニメと鉄道の関係に詳しくなれる本」についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん
アニメと鉄道の歴史を知るにはこの本!
今日は「アニメと鉄道の関係」に詳しくなれる、2020年に交通新聞社新書から出た『アニメと鉄道ビジネス』(栗原景さん著)をご紹介します。
第1章はアニメと鉄道の関係史で、どんな鉄道がアニメに出てきたかという話がまとめてあります。その後の章では『新幹線変形ロボ シンカリオン』の企画がどう成立して、どう広がっていったのかという話が続き、さらに『シンカリオン』にも登場した山陽新幹線500系と『新世紀エヴァンゲリオン』がコラボした「500 TYPE EVA」がどんな経緯で成立したかも紹介されています。僕も「TYPE EVA」について取材したことがあるのですが、複数の自治体をまたいで通るので、自治体ごとに決められている公共の屋外広告の規制を全てクリアするデザインにしなくてはいけなかったと聞きました。
そのほか西武鉄道がどうしてアニメに力を入れるようになったのか、京都の叡山鉄道が「まんがタイムきらら」系の作品とコラボしてラッピング列車を走らせている背景などがギュッと詰まって紹介されています。ラッピング列車の歴史なども1章を割いてあり、とても勉強になって面白いです。
第1章では、国産アニメで最初に鉄道が描かれた作品も具体的に名前が挙げられています。それは1929年の村田安司制作の『太郎さんの汽車』だそうです。汽車のおもちゃを買ってもらった太郎さんが寝ているうちに動物たちと一緒にその汽車に乗るというメルヘンアニメでした。
1963年11月には『エイトマン』のオープニングに新幹線が登場。同書では、「現実の鉄道が描かれた初の国産アニメ」と紹介しています。ここでポイントなのは、東海道新幹線の開業が東京オリンピックに合わせた1964年だったということ。なので『エイトマン』では新幹線開業前に、エイトマンが新幹線を追い抜いて走るシーンを作ったということになります。
同書は、オープニングの新幹線は試作車両の1000形であるという指摘をした上、塗装や窓の形状からB編成の東京方先頭車であるという特定をしています。このように、すごく細かいところまで丁寧に書かれた本なので、読むと「アニメと鉄道」の関係に絶対に詳しくなれるのではと思います。
「旅鉄」の視点で見るアニメコラボ
『旅と鉄道』という鉄道雑誌があり、2017年頃からちょこちょこアニメ特集を組んでいるのですが、その特集を集めて大判のムック『アニメと鉄道』『アニメと鉄道2』を出しています。
新海誠監督の『秒速5センチメートル』でいろんな鉄道が出てくる描写や、『この世界の片隅に』の広島の都電、広島と呉を繋ぐ路線などを一つ一つ取り上げています。『ラブライブ!サンシャイン!!』も取り上げられていて、沼津の東海バスや伊豆箱根鉄道とのコラボなどについても出てきます。2016年の『ハルチカ〜ハルタとチカは青春する〜』は静岡市清水区が舞台ですから、おなじみ静鉄の話も出ています。
また、2021年1月には『エヴァンゲリオンと鉄道』、11月には『エヴァンゲリオンと鉄道:補完計画』というムック本も出しています。『補完計画』では、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』に登場する「第3村」で参照された天竜二俣駅がフィーチャーされています。さらに「第3村車両ファイル」では、画面に映っていた車両がどのようなものか、1つずつ書かれています。もちろん天竜二俣駅だけでなく、ラストで登場する山口県のJR宇部駅の特集も組まれていて読み応えがあります。ちなみにシンジくんがインナースペースで自問自答するときに出てくる客車にも、モデルになっているものがあるようで、そのあたりも考察されていて大変勉強になりました。
『旅と鉄道』2021年5月号では『ゆるキャン△ SEASON2』の特集がありました。『ゆるキャン△』というと天浜線の印象が強いかもしれませんが、それだけでなく身延線も含めて総合的に取り上げられています。ちなみにその号では「ジブリと列車」という特集もあり『千と千尋の神隠し』で出てくる水上を走る鉄道も、実際の鉄道とは関係ないけれど鉄道ということで取り上げられています。『旅と鉄道』から出てるアニメ関連の本やアニメ特集号は、鉄道という軸足をブラさずに作品に向かい合っているので、こういう見方があるのだとか、この切り口でこんなに楽しめるんだと思えますので、こちらもぜひご覧いただければと思います。