【尾上右近&松田元太】「声だけで絆を感じた」“けんけん&げんげん”ロング対談!【ライオン・キング:ムファサ】
壮大なアフリカの大地を舞台に“生命”をテーマに描き、映画、演劇、音楽と頂点を極めた一大叙事詩『ライオン・キング』。アニメーション映画として1994年に誕生した本作は、映画賞、音楽賞を総なめにし、奇跡の映像美、圧巻の楽曲、心震える感動の物語は全人類を熱狂させた。
【全写真】「尾上右近×Travis Japan・松田元太」画像ギャラリー
その原点にして、はじまりの物語『ライオン・キング:ムファサ』が、12月20日(金)に公開。ディズニー史上、最も温かく切ない“兄弟の絆”の物語が幕を開ける。
孤児から王へ自身の力で運命を切り拓くムファサと、王の血筋を受け継ぐ“弟”タカ(若き日のスカー)――血のつながりを超えた“兄弟の絆”に隠された、驚くべき秘密を描く本作。
超実写プレミアム吹替版には、主人公ムファサ役声優として尾上右近、タカ役声優として7人組グループTravis Japanのメンバー・松田元太が起用。本作参加決定時の気持ちから、『ライオン・キング』への想いや作品の思い出など、ふたりに話を聞いた。
右近「“サークル・オブ・ライフ”にシンパシーを勝手に感じていた」
――オーディションを経てムファサとタカという大役に決定した時のお気持ちを教えてください。
尾上右近(以下、右近):今回初めての声優の仕事となるのですが、声優や歌のお仕事をやってみたいという気持ちはずっとありました。その中でも特に、ディズニーファンでもある自分がディズニーの吹替えの声優を務めるということは、長年思い描いていた夢でした。
以前マネージャーさんと今後やってみたい仕事について話をした時に、ただひとつだけ「ディズニー作品の声優をやってみたい」という気持ちを伝え忘れてたんですよ……。
松田元太(以下、松田):ええっ! 忘れたんですね!?
右近:その後、「なんで言い忘れちゃったんだろう……」って自分にイライラした気持ちを抱えちゃって。そしたらその次の日にマネージャーさんから、「『ライオン・キング:ムファサ』のオーディションのお話が来ました」と言われて。「まさに昨日お伝えし忘れた唯一の大きな夢で、いやこれはもう絶対に受かりたいので、頑張ります!」とお伝えしました。
オーディションを受けた帰り道は、正直これはダメかもしれないな……という気持ちだったので、合格と聞いた時は、人通りの多い道を歩いていたのですが思わずガッツポーズでしたね。自分がこれをやりたいとか、夢について強く想うことはとても大事なんだなと思いました。
松田:僕は今世紀いちばんの嬉しさがありました。いつかはディズニーのお仕事を出来るようになりたいという夢があったので、もうとにかく嬉しかったですし、僕としてもグループとしても一段階エンジンがかかるなという気持ちでした。
原作ファンの方もたくさんいらっしゃいますし、これから『ライオン・キング』を知ってくださる方に向けても、自分の出来ることはもう死ぬ気でやろうという気持ちで。オーディションを受けている時は、もちろんまだ合否は分からないですけど、絶対受かって、絶対良いものを届けなくては!と気合い十分でした。
右近:僕も元々『ライオン・キング』という作品が大好きで。歌舞伎という伝統の世界に身を置いているので、自然界の大きな伝統の中で王位が受け継がれていくという“サークル・オブ・ライフ”にシンパシーを勝手に感じていました。
作品の中でムファサは伝統の始まりとなる王様なのですが、そのムファサが実は孤児だったという背景があって。そのストーリーを伺った時に、僕も歌舞伎俳優の息子ではないから、自分自身の力で頑張ろうという気持ちがずっと大きかったんですね。なので、ムファサの気持ちに寄り添えるのは僕のはずだという気持ちはあって。
さらに、松田くんがさっき言っていたみたいに……あ、“げんげん”って呼んでいい? 僕のことは“けんけん”で。
松田:めちゃくちゃ嬉しいです(笑)! けんけんって呼ばせていただきます!
右近:(笑)げんげんと同じく、これは絶対に受かりたい、受かったら全力でやるんだという気持ちで臨ませていただきました。
――役が決定した時の周りの反応はいかがでしたか?
松田:メンバーがまずいちばんに喜んでくれましたし、家族やファンの皆さんもたくさんのメッセージをくれました。あと、食事をご一緒したりとお世話になっている山田涼介くん(Hey! Say! JUMP)とLINEをよくしているのですが、僕がタカ役に決まったタイミングで連絡をくれて。「すげえじゃん、頑張れよ! 絶対に観に行くね」と励ましてくれました。
メンバーの(川島)如恵留は劇団四季の『ライオン・キング』のヤングシンパを演じていたこともあるので、「ライオン・キング同士だね」という話もしました。本当にみんな喜んでくれたし、祝福してくれましたね。
右近:歌舞伎界はみんな目の前の舞台や仕事に向き合っている世界なので、あまりお互いの仕事に言及をしないんです。それは冷たいというわけではなくて、“職人の世界”という感覚が強いのですが、今回は稽古場で色々な方に反応してもらって、“ムファさん”って呼ばれました。情報解禁になった日には(尾上)松也さんから「これでお前もディズニーファミリーだな!」と温かいLINEをいただきました。
松田「けんけんは自分にとってもお兄さんだしタカにとってもお兄さん」
――皆さんご自身のことの様に喜んでくださったのですね! オーディションに向けてはどんな準備は練習をしましたか?
松田:一生『ライオン・キング』の音楽を聴いていました。
右近:確かに僕もそうだな。頭の中でずっと流れていて。しかも(楽曲が)情報解禁前なので、自分だけが知っている曲というのも変な感じで。うかつに人の前で口ずさめないし、もどかしかったです。
松田:めっちゃ分かります! 俺もずっと楽屋でコソコソしていて……。
右近:歌舞伎の楽屋ってみんなで一緒にいる空間なので、イヤホンをする習慣があまり無くて。なので小さい音でスマホから流して耳をあてて一生懸命聴いていたりしました。
松田:歌に関しては、なるべく自分の要素を残したくないなという意識があって。“タカの歌”ということを強く出したかったんです。オーディションで上手に歌えたかは分かりませんが、その時に自分が出来るタカは全力で演じました。タカってました!(笑)
右近:タカってた(笑)? 準備というのはあまり出来ませんでしたね。「このセリフを言うにはこのくらいの秒数が必要だな」という心構えも、何秒から始まるということしか台本には書いてないので、備えようもないことを一生懸命備えてる感じでした。
松田:すごく分かります。限られた時間の中でどう感情を持っていって、次に繋げていくのか?という部分は、実写のお芝居と別の感覚だなと。字幕版の声と大きく変わってしまっては吹替えにはならないのかなとも思ったので、タカのキャラクターを考えながらオリジナルの声のことも意識して……すごく難しいなって。激パニックでしたね。
右近:あとは、バレない程度に松也さんと松たか子さんに「ディズニーのオーディションってどんな感じだったんですか?」と聞いたりもしました。
松田:すごい……! 雪の女王様からアドバイスが!
――ムファサとタカの絆が描かれる本作ですが、今日お会いしてお互いのご印象は?
右近:ムファサにとってのタカというのは表裏一体な存在ですよね。お仕事は何でも自分ひとりで出来ないものですし、本作については特にどんな方が兄弟のタカを演じられるのだろうというのはいちばん気になっていました。
げんげんが決まったと知った時はピッタリだと思ってめちゃくちゃテンション上がりましたし、はやくお会いして色々話したいなと思いました。
松田:タカにとってもムファサは大きい存在ですが、ブースの中で右近さんの声を聴いた時は、もう勝手に安心感を得たというか。けんけんは自分にとってもお兄さんだしタカにとってもお兄さんで。姿は見えなくても声だけで絆を感じましたし、声を頼りに信頼し合っていくという特別な現場でした。
――まだ完成版はご覧になっていない状態ですが(取材時)、お互いの声で特に魅力的に感じた箇所は?
右近:タカからスカーになる瞬間の声がすごく魅力的でした。ムファサはムファサで運命を背負うんだけど、タカはタカでスカーとして生きていくことを背負ったんだな、というのが声で伝わってきました。
松田:ムファサとサラビがお互いの愛を確かめ合うという楽曲が大好きなんですが、その曲のけんけんの声がとても素敵なので、(リリースされたら)絶対に買います!
――『ライオン・キング』といえば素晴らしい楽曲の数々も魅力的ですが、おふたりが歌う新曲もあるそうですね!
右近:もう本当に「僕でよろしいんですか?」という気持ちと、これまでディズニーの曲をたくさん聴いてきたので、そこに自分も仲間入りするっていうことは感無量ですよね。
ただ何のお仕事でも、謙虚に恐縮しすぎても自分の本来の力が出せない可能性もあるから、ある意味当たり前と思わなくちゃいけないという感覚もあって。最大限に恐縮している自分と、当たり前にやろうと思う自分がずっと反発し合っている状態でした。
松田:僕は東京ディズニーランドにある『ミッキーのフィルハーマジック』というアトラクションが大好きなので、「いつか『フィルハーマジック』やパレードで自分の歌が聴けたりするのかな……?」という期待が高まりました。作品として一生残るものですから嬉しさ以上に不安も正直ありながら、でも今けんけんが言ったように、ちゃんと自信を持って出来るように努めようというのは心がけていました。
松田「その話、もうめっちゃムファサですね……!」
――ストーリー展開や映像について魅力に感じた部分は?
右近:お互いが背負った運命だから仕方が無いという気持ちと、「もう、なんでだよ……!」という気持ちがありますよね。僕はタカに寄り添いたい気持ちが強いので、もっと違う道は無かったのか、という悔しさもあって。
でもどこかにちゃんと愛はあるというか、心の中で繋がっている感じもあってすごく切なくて……好きです。驚きと意外な展開もありましたし、腑に落ちるストーリーもあって。
松田:映像面も迫力が前作よりさらにマシマシですごかったです。俺、(映像の中に)“風”が見えましたもん。本当にこの目で風を見たんです! たくさんライオンが出てきますけれど、1頭1頭の容姿も違いますし、声が合わさるとよりキャラクターの違いも感じられて面白かったですね。
右近:ライオンなんだけど考えている目線がすごく人間っぽいっというか、切ない目をするんですよね。感情が伝わってくる絶妙なバランス感。リアルなだけではない表現力が素晴らしいと思ったので、皆さんにも期待していて欲しいです。
――おふたりにはムファサとタカの様な絆を感じる関係や瞬間がありましたか?
右近:歌舞伎の世界の中で小さい時からみんなと一緒にいて、家族の様な感覚で生きてきて。20代ではお互いに切磋琢磨しながら、それぞれが自分の道を探りながらやっていました。
そしていま30代になって、歌舞伎座などの大きな舞台で自分が主役をする時に仲間が一緒に出てくれたり、逆に仲間が何かやる時に自分がそっちに出たりという、刺激し合う間柄・感謝し合う間柄に変わったなと思っています。
20代までは“自分の城を築かなきゃ”と思っていましたが、30代になって“みんなで築く城なんだ”ということに気付けたのは、ずっと一緒にやってきたからこその絆のおかげというか、お互い真剣にやってきて良かったなと思います。『ライオン・キング』の世界観とも通じますよね。
松田:その話、もうめっちゃムファサですね……!
右近:ありがとうございます(笑)。それが歌舞伎界なんですよ。僕がどうこうというわけじゃなくて、歌舞伎ってそういうものなんだなと思います。血だけではなくて、同じ時代に生きながら誰とどういう歴史を作っていくかということが繰り返されて、“伝統”と言われるものになるのだなと思います。
松田:こんな素敵なお話のあとで恐縮ですが……、僕はメンバーとはそこまで絆を感じることはなくて。一緒にいるのがある意味当たり前というか、家族みたいな存在なんですよね。ひとりでお仕事をしたあとに帰れる場所というか。よく考えればそれはすごく幸運なことで当たり前ではないですけれど、これからの未来のために経験を共にできている戦友という存在ですね。
――おふたり共、ディズニー作品のファンでいらっしゃるとのことですが、改めて『ライオン・キング』に感じる魅力についてお聞きしたいです。ムファサとタカ以外にお気に入りのキャラクターは?
右近:ラフィキです。『ライオン・キング』の中でもラフィキの存在って特別だと思うんですが、本作ではムファサとラフィキの出会いが描かれていて、本作が『ライオン・キング』の始まりの物語だということをすごく実感させる存在でもあります。
ラフィキがすごくはしゃぐシーンがあるのですが、それがとても可愛くて。色々な想いをラフィキも抱えていて、そこから解放されるってどれだけの喜びなんだろうというのをそのはしゃぎ方から感じて、愛おしかったです。
松田:僕はティモンです。砕けた感じというか、楽しいキャラクターですし、ふざけている様で芯食ったことも言うところが良いですよね。声もすごく明るくて、ハッピーな気持ちになれるので大好きです。
――おふたりの『ライオン・キング』にまつわる思い出はありますか?
右近:『ライオン・キング』が30周年で、僕はいま32歳なので、同世代として一緒に育ってきた感覚があります。素晴らしいディズニーの作品の中でも、僕らの世代を代表するディズニー作品というと『ライオン・キング』だなと。
右近「“ジャパニーズ・ライオン”から歌舞伎人生が始まっているんです」
松田:僕もディズニーの中で特に好きな作品です。高校の行事で『ライオン・キング』の曲を使って踊るというものがあって、アメリカの学校のみんなとコラボしたんです。知らない人たちと急に舞台を作り上げるというのは、言葉の壁もありますし、人間と動物の壁もありますけれど、それを音楽で取り払っていくような体験で。
だから俺もこう……どこか「自分はライオンだ」という気持ちがどっかにあって。「サバンナ出身だぞ」という。
右近:(取材陣の)皆さんも思っていらっしゃると思うので聞きますけど、本当に「俺もサバンナ出身だ」って思ってる(笑)?
松田:思ってますよ! 6割、7割。
右近:おいおいおい! そこは10割できてよ(笑)!
松田:強い気持ちはあるんですけど、でも「俺は人間だ」という思いもあるので(笑)。
右近:(笑)。歌舞伎にも『春興鏡獅子』という演目があって、僕が歌舞伎の道を歩むきっかけになったのはその『鏡獅子』の舞踊作品なんです。ひいおじいちゃん(六代目 尾上菊五郎)が『春興鏡獅子』を踊っている映像が奇跡的に残っていて、それを3歳の時に見て、そこから「歌舞伎をやりたいな」と思ったので、“ジャパニーズ・ライオン”からこの歌舞伎人生が始まっているんですよ。
もうひとつ、親の獅子が子供の獅子を育てるというポピュラーな演目があって、まさに『ライオン・キング』みたいな話なんですよね。これまでも「『連獅子』という『ライオン・キング』みたいなお話だよ」とずっと紹介してきましたし、そういう意味でもすごく強く意識してきた作品です。
――素晴らしいエンタテインメントって、時代や国を超えてつながるのですね。
右近:ちなみにその六代目の『鏡獅子』を見て、ジャン・コクトーは『美女と野獣』を撮ったらしいですよ。
松田:すごい……!
――文化のサークルが続いていく、素晴らしい循環ですね。今日は楽しいお話をどうもありがとうございました!
作品情報
『ライオン・キング:ムファサ』
12月20日(金)全国劇場にて公開
©2024 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
(ディズニー特集 -ウレぴあ総研/中村 梢)