【まんがの日】編集部メンバーに聞いた「人生でもっとも影響を受けた作品」10選 / ドラゴンボール・ナルト・スラムダンクなど
今日11月3日は、公益社団法人日本漫画協会が2002年に制定した「まんがの日」である。漫画を文化として発展させたいという思いを込めて、この日(文化の日)に制定している。
そんな漫画の影響について、当編集部メンバー10人に尋ねてみたところ、それぞれ強い思い入れのある作品の名前が挙がった。メンバーの漫画への熱量の高いコメントをお伝えしよう。
・佐藤英典『ベルセルク』
私がもっとも影響を受けたのは、ダークファンタジーの金字塔『ベルセルク』である。1989年に連載を開始し、2021年に作者の三浦建太郎先生が他界して以降、現在も連載は続いている。これほど重厚で読み応えがある作品はほかにない。
主人公ガッツの苦闘もさることながら、作品を通して伝わってくる三浦先生の作品への情熱にも影響を受けた。純粋に自らの作品に向き合い、高い熱量でそれを形づくる。とてもじゃないがマネできないけど、憧れのようなものを抱かずにはいられない。作品を読み直す度に、三浦先生の息遣いをいつまでも感じることができる。
・原田たかし『SLAM DUNK(スラムダンク)』
『ドラゴンボール』と迷ったが、人生でもっとも影響を受けたのは『スラムダンク』だ。小学校のときにバスケを始めたのもこの漫画の影響だし、きっと同じような人は多いのではないだろうか。
数えきれないくらい読み返したことで名言や名シーンは頭に刻み込まれているし、日常生活の中で思い出すこともしばしば。この漫画がなければ、別の生き方をしていたとさえ言える。
・GO羽鳥『お父さんは心配症』
いまウチの本棚には、厳選に厳選を重ねた漫画しか置かれていない。数も少ないので羅列すると『ちびまる子ちゃん(さくらももこ先生)』、『漂流教室(楳図かずお先生)』、『サバイバル(さいとうたかを先生)』、『ブラックジャック(手塚治虫先生)』、『柔道部物語(小林まこと先生)』てな感じなのだが、中でも特に影響を受けたのは岡田あーみん先生の『お父さんは心配症』だ。
休む暇も与えないくらいに入れてくる多彩なギャグに、圧倒的な「抜き感」と「スピード感」。この漫画を読んだから漫画家になりたいと思ったし、その後の私の漫画の礎(いしずえ)にもなっている。漫画家としての私(マミヤ狂四郎)における “漫画の教科書” がこの作品だ。
・古沢崇道『地獄先生ぬ~べ~』
おそらくトラウマという概念を人生で初めて覚えたキッカケが『地獄先生ぬ~べ~』。小学生のときに読んだ “トイレの花子さんの回” は生涯忘れることはないだろう。
おどろおどろしい魑魅魍魎(ちみもうりょう)が見開きページにデカデカと描かれたシーンは永遠のトラウマである。怖いもの見たさでずっと読み続けた結果、大学を卒業するまで学校の個室トイレには入れなくなってしまった。
しかし、作品はすごくおもしろかったから後悔なんぞしていない。こんなことを書き綴っていたらなんだか懐かしい気分になってきた。これを機会に読み返してみようかな。
・P.K.サンジュン『クローズ』『WORST(ワースト)』
『北斗の拳』『魁!! 男塾』『サバイバル』『ミスター味っ子』『キングダム』……。ひとつに絞るのは難しいけど、今回は不良漫画の金字塔『クローズ』と『ワースト』を挙げたい。
俺は何事もネクストジェネレーションに惹かれる癖があるんだけど、クローズでは加東秀吉が好き! 狂犬よ、狂犬。キングジョーとのタイマンは最高だった!!
人間には言葉で表現し難い衝動とか情熱があるもの。特に若い頃は。俺はクローズ & ワーストから「男のカッコ良さ、ダサさ」とかの影響を少なからず受けてると思うな。
・あひるねこ『酒のほそ道』
もはや説明不要の呑兵衛バイブル。「酒」の何たるか、「酒飲み」の何たるかはこの漫画から学んだと言っても過言ではない。幕間に挟まれる力の抜けたコラムも参考になるが、真にスゴイのは「酒」をモチーフに30年も連載しているという事実である。
某松屋の某「ごろチキ」に関する記事を何十本も書き続けていると、「もう書くことなんかねぇよ! ただのチェーン店のカレーやぞ!!」と思うこともあるっちゃあるが(え?)、そういう時に本作を読むと、「いやいや、まだ書けることは残っているな」という心持ちになれるのだ。
まさに読む “酒の肴”。私もそういう仕事をしたいと思い、日々精進している。
・Yoshio『ドラゴンボール』
私はまさにドラゴンボール世代で、小学校の時は「カメハメ波」や「元気玉」が本当にできると思っていた。学校では、ドラゴンボールの話で持ち切りとなり、家に帰ればこっそりお風呂でカメハメ波の練習をしていた。いつか悟空になることを子供達がみな夢見ていた。
私の小学校低学年の娘2人もドラゴンボールにどハマり。家に帰れば「お父さん、クリリンがフリーザに!」「ドラゴンボール超の○話まで見ちゃったよ」「ギニュー特戦隊のオレンジ色の人の名前なんだっけ?」など話が尽きない。そしてカメハメ波が本当にできると信じ風呂で練習をしている。
「あ、これ昔の自分と一緒だ(笑)」
ドラゴンボールは世代を超えて夢を与えてくれている。そして、娘との繋がりも。ありがとう『ドラゴンボール』。
・御花畑マリコ『東京ガールズブラボー』
バイブルとなってる漫画……『ちびまる子ちゃん』とか『こいつら100%伝説』とか大島弓子の『バナナブレッドのプディング』とか色々あるんだけど、自分の人生への影響度を考えたらこれ。作者・岡崎京子自身の80年代サブカル少女の青春を描いた漫画。
80年代の音楽とかお店やブランドの名前がたくさん出てくるので、ディスクガイド的に使っていた。出てくるミュージシャンの作品をレンタルで聴いたり、当時(99年頃)は岡崎京子の漫画はほぼ絶版だったので、古本屋さんを巡って探し回ったり……。かっこいい音楽と本との出会い、それから街歩きはこの本のおかげ。
願わくば、90年代サブカルチャー版の『東京ガールズブラボー』が出ないかなって思ってます。
・中澤星児『NARUTO – ナルト – 』
マンガの影響を受けると言えば、必殺技の存在はデカイと思う。で、私がマンガ史上最も好きな必殺技は『NARUTO -ナルト-』の「八門遁甲の陣」(はちもんとんこうのじん)だ。
自分の命と引き換えに火影以上の力を一時期に手にする禁術であるこの技。リアルタイムで読んでいた頃は「なんとなくかっこいい」と思っていただけだったのだが、最近読み返していてキャラの生きざまに密接に絡む技であることを感じた。
この技の初出は中忍試験のロック・リーで、そのシーンも好きなんだけど、なんと言っても語る上で欠かせないのは69巻から70巻のガイ先生だろう。
『NARUTO -ナルト-』の世界観は、血継限界やチャクラなどの生まれ持った才能で上下が決まるかなり厳しいカースト社会。その中で忍術の才能がなく、子供の頃からバカにされながらも体術を極めているのがガイ先生だ。
天才のカカシをライバル視しているけど、半分流されててガス抜きみたいな存在のガイ先生。読者人気投票でも圧倒的にカカシが人気だったことを記憶している。
そんなガイ先生が、第四次忍界大戦で全員がやられて戦えないタイミングで八門遁甲の陣の最後の門「死門」を開くのが69巻から70巻。あくまで体術を押し通すところ、カカシの「本当に父さんの言った通りだったよ…ガイ!!」、うちはマダラに体術史上最強を認められるところ……ひとコマひとコマが人生だ。
バカにされたって良い。ただ、自分の信じる道を行く。そして、命を懸けた一瞬、作中で最も眩しく煌めくガイ先生のような男に私もなりたい。
というわけで、『NARUTO -ナルト-』を読んだことがないという人は、とりあえず70巻まで読んでみて欲しい。
・砂子間正貫『ハイスクール! 奇面組』
『こち亀』と悩んだが、もっとも影響を受けたのは『ハイスクール! 奇面組』だと思う。少年時代の私は、他人に笑われようとも自分の個性を堂々とさらけ出す奇面組のメンバーたちから非常に多くのことを学ばせてもらった。1番好きだったのは一堂零(いちどうれい)くん。
ロケットニュース24編集部のメンバーも良い意味で変態だらけで、奇面組に近いものを感じる。いくつになっても奇面組のように生きていきたい。同じ先生の『ボクはしたたかくん』もおすすめ。
以上、10作品である。皆さんが影響を受けたのは、どの作品だろうか? 協会が記念日制定に思いを込めたように、漫画は確実に日本の文化として根付いている。これから業界がさらなる発展を遂げることを、願ってやまない。
参考リンク:公益社団法人「日本漫画家協会」
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24