トップに聞く 地域経済活性化の道しるべは
2025年が幕を開けた。新型コロナが5類以降してから1年半が経過し、地域社会もポストコロナの生活様式が定着した一方、ダメージの尾を引く企業にとっては再起に向けた模索が続く。少子高齢化と人口減という共通の課題を抱える横須賀三浦両市の活性化の見通しは。両商工会議所のトップに聞いた。
三浦市「三浦らしさ」で誘客促進
――三浦市の経済について現状の受け止めは。
「コロナ禍の影響は依然として残りますが、観光需要は回復傾向にあります。ただ、インバウンド(訪日外国人観光客)を中心に観光客が鎌倉や葉山などに流れてしまう傾向が続いており、マグロや食の魅力といった三浦らしさを生かした誘致が課題です。漁業は船舶の減少、農業は後継者不足や天候不順による不作が続いています。全体的にはマイナス傾向で、課題は山積しています」
――観光需要に対し好材料になり得るものは。
「昨秋、三崎マグロの血合い肉を特産品化する取り組みで、愛称が『茜身(あかねみ)』に決まりました。茜身には未病改善に有効とされる抗酸化成分『セレノネイン』が多く含まれて、ブランド化を推進することでさらなる観光客誘致に繋がると期待しています」
――三崎漁港の利活用プロジェクトが公民連携で進んでいます。
「市の財政状況を考えると、民間の力を活用した再開発はやむを得ないでしょう。しかし、現状では計画の具体性に欠け、市民に不安が広がっていることは否めません。会議所としては、行政と連携し、市民や事業者双方にとってより良い計画になるよう、協力していきたいと考えています」
――再開発にあたり、重要だと考える点は。
「まずは道路整備を優先すべきです。施設を充実させても、アクセスが悪ければ渋滞が発生し、利便性が損なわれます。また、東京のような商業施設をそのまま持ってくるのではなく、三浦の特性やニーズを汲み取った計画であるべきです。地元の一次産業と消費者を繋ぐ場として、市民も利用しやすい施設を目指してほしいと思います」
――商工会議所として力を入れたいことは。
「人事の整備です。高齢化が進む役員の後継者を育成し、スムーズなバトンタッチができるように備えたいと考えています。課題は多いですが、三浦市の経済を活性化させるために、会議所としてできる限りのことをしていきます」
横須賀市「何で勝負するか」示す年に
──横須賀の景気状況をどう捉えていますか。
「原材料費の高騰、賃金上昇、人手不足と中小企業に大きな負担がかかっている状況です。被雇用者は待遇改善が図られていますが、中小零細が大半を占める横須賀では、大手との格差が鮮明になっています。企業は適切な価格転嫁を発注者に求めて経営を安定させることが必要となりますが、交渉は難しいでしょう。こうした実情を踏まえ、商議所として国・県・市などに補助金や補填、支援制度の拡充を強く要望していきます」
──商議所が頼みの綱となっている事業者は少なくありません。
「売上拡大や事業承継、創業など経営に役立つ公的な支援メニューが世の中にいくつも存在します。商議所には多くの情報があり、活用を積極的に推進しています。事業者と近い距離にいる職員が伴走支援することもあります」
──吉本興業所属のお笑い芸人を「特命職員」に迎えるなど、ユニークな取り組みが注目を集めています。
「芸人の発想力を商品開発や集客に活かしていく試みです。型通りではないアドバイスを期待しています。これとは別に吉本興業とのつながりを活かして、お笑いライブなどを切り口にした集客戦略を考えています。落語や漫才、演劇、音楽を多目的に使用できる空間を民間資本で開設できたらと。若者に向けた発信を強めている上地克明市長のエンタメ路線を側面支援するもので、こちらはシニア市場を強く意識しています。シニアマーケットの攻略は超高齢化社会の重要テーマです」
──全国信用金庫協会の会長に就任しました。
「全国の信用金庫を訪れるケースが増え、これまでに7つのエリアを視察しました。横須賀で人口減少の危機が叫ばれていますが、地方の状況はより深刻です。そうした中でも、地域の得意分野を磨き上げて、存在感を発揮しているまちがありました。『何で勝負するか』を戦略的に考えて行動することが大事です。商議所としての方向性を示していきます」