袴田巌さん再審で無罪判決 青木氏自身の見解語る「結構驚いたというか、裁判所がかなり踏み込んだ判断を示したな」
9月27日(金)、お笑い芸人の大竹まことがパーソナリティを務めるラジオ番組「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送・月曜~金曜13時~15時30分)が放送。大竹まことと壇蜜が夏休みでお休み。青木理と金子勝の2人がパーソナリティとなり放送され、朝日新聞の「袴田巌さん再審で無罪判決 地裁、自白調書など三つの証拠捏造認定」という記事を紹介し、大竹と青木がコメントした。
1966年に静岡県のみそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さんの裁判をやり直す再審で、静岡地裁は26日、無罪を言い渡した。判決は、「自白」した供述調書や犯行着衣とされた「5点の衣類」など三つの証拠捏造があると認定した。
太田アナ(アシスタント)「一連の審議での争点は袴田さん逮捕のおよそ1年後にみそ工場の味噌タンクから見つかった5点の衣類。確定審では血痕がついた衣類は袴田さんの犯行着為とされ、有罪の中心的証拠となりました。一方で、最新請求審で弁護側は血痕に残る赤みに着目。再現実験などを踏まえて「1年以上味噌漬けにされれば赤みは消える。衣類は袴田さんのものではない」と主張し裁判所がこれを認めて再審開始が決まりました。この日の判決も「タンク内で1年以上味噌づけした場合には赤みが残らない」と認定。衣類は発見直前に投入されたもので、捜査機関が血痕をつけるなどの加工をして隠したとしました。衣類のうち、ズボンから切り取られたとされる端切れも捏造だとしました。それから袴田さんが捜査段階でした自白を記録した検察官の調書も、警察と連携した連日長時間に及ぶ非人道的な取り調べで獲得されたもので実質的な捏造と批判しました。その上で、これらを証拠から排除すると他の証拠は証明力に乏しく、袴田さんが犯人とは認定できないと結論付けました。判決後、裁判長は袴田さんに代わって出廷した姉の秀子さんに「長く時間がかかってしまったことは申し訳ない」と謝罪しました。検察は10月10日まで控訴できるということです」
青木「これ、簡単に言うと最新公判は無罪を言い渡すに値する明白な証拠があった時に始まるので、基本的に無罪が言い渡されるのは、ほぼ間違いないだろうということで、それは無罪だった。ところが、今太田さんが紹介してくださったように 操作の証拠の捏造を相当強く、明確に打ち出したので、結構驚いたというか、裁判所がかなり踏み込んだ判断を示したなと」
金子勝「逆に懸念されるのが、普通は控訴はしないけど、面子にこだわって検察が控訴しちゃうんじゃないかちょっと心配なの」
青木「その点ちょっと言っておくと、ようするに太田さんが説明してくれた繰り返しの部分もあるんですけれども、まず5点の衣類。犯行時の袴田さんの着衣とされたものについてこう言っているんです。実は犯行時、最初袴田さんが来てたのは、パジャマだと言われていたんです。ところが、逮捕から1年も経ってから現場の 味噌タンクから5点の衣類、犯行時の着衣が見つかったんだけれども、それが1年も入っていたのに服に血痕がついていたと。ところがその血痕が最新請求審の過程でカラー写真の証拠が新しく出てきて、赤みが残っていた。1年も味噌に浸かってて赤みは残らないでしょうという話になって、再審開始になったんだけど、昨日の判決は捜査機関によって血痕をつけるなどの加工がなされて、放り込まれたんだと。しかも、もう一個の証拠とされたズボンの端切れも捜査機関による捏造されたものだと。更に自白も黙秘権を実質的に侵害し、虚偽自白を誘発する恐れの極めて高い状況下で肉体的・精神的苦痛を与えて供述を矯正する非人道的な取り調べによって獲得されたと。すなわち実質的に捏造だと」
金子「よく言う人質司法。2020年にあった大川原化工機の問題とか、いろんな問題に共通している問題ですよね」
青木「僕もいろいろ現地で、検察OBとか、裁判官のOBの方とかと話してみると 無罪は想定してるだろうと検察も。しかし、ここまで捏造したと言われちゃうと面子をかけて控訴をするんじゃないかという見立てもある。ところが、80年代に実は死刑確定事件の冤罪が4件あって、今回死刑確定事件で無罪が再審公判ででたのが5件目なんですね。その5件で再審公判の一審で無罪が出て控訴したケースはないんです。裁判官のOBの方に聞くと、死刑事件に限らず、再審公判で無罪が一審で出てそれを警察が控訴したケースってないんですって。ということはもし今回控訴したら初めてとみられるっていうことなんですよね。そうするとあれでしょ。検察も新聞各紙も解説記事なんかで控訴するな、すべきじゃないと出てる。袴田さん88歳ですからね。これ以上苦しめるべきじゃないという声もある。控訴した場合、警察は相当批判にさらされるだろうなっていうところもあるんですよね」
金子「でも、ちょっと残酷な言い方だけど、死人にくちなしを狙ってる可能性もあるよね。宙ぶらりんの状態で 袴田さんが亡くなるのを待っている」
青木「僕はあちこちで言っててきたんですけど、袴田事件が起きたのは、1966年なんですよ。 僕が生まれたのが1966年なんですよ。袴田さんが逮捕されたのが66年の8月かな。僕が10月生まれなんですけれど、もういい加減髪の毛も真っ白になって、腰も痛いみたいな中年の男の人生と全く同じ期間、彼は被疑者、被告人、死刑囚で48年間獄中にぶち込まれて、ようやく2014年に再審の開始決定で釈放されたけど、今も一応死刑確定囚のままでしょう。58年。これは本当にいい加減にした方がいいんじゃないのかという気はしますけどね」