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観光地も、旅人も、もっと心地よく。新しい沖縄の旅へ

ELEMINIST

沖縄は国内外から絶え間なくツーリストが訪れる人気の観光地だ。だからこそ、積極的に持続可能な観光地としての取り組みがなされている。今回はこうしたエシカルな旅をテーマとした「エシカルトラベルオキナワ」をELEMINISTが体験。新しい旅のかたちとして、ぜひ参考にしてほしい。

まだ見ぬ沖縄らしさに出合う「エシカルトラベルオキナワ」

「エシカルトラベル」の取り組みを実践する事業者が掲載されているガイド冊子。情報はオキナワ観光情報WEBサイト「おきなわ物語」内の特集ページにも掲載されている。

日本各地でオーバーツーリズムが問題になりつつある昨今。観光客の増加が地域の暮らしや自然環境に負担をかける一方で、旅人自身も混雑や観光公害によるストレスを感じることが少なくない。この状況から、徐々に旅のあり方が問われるようになってきた。

多くの観光客が訪れる沖縄県もこの問題に少なからず直面しているが、同時に「世界から選ばれる持続可能な観光地」を目指してさまざまな取り組みが行われている。その目標を達成するためのプログラムの一つが、沖縄のエシカルな旅を推進する「エシカルトラベルオキナワ」だ。

2022年に策定されたこの計画では、沖縄の自然環境や伝統産業の維持発展を重視し、観光客と沖縄県民がともに沖縄らしさを育むことを目指している。また、現在約60の事業者を「エシカルトラベルオキナワ」のWEBサイトで紹介しているほか、環境保護や伝統文化の継承など、23の具体的な取り組み項目が設定されている。

ポイントは、観光地または旅行者のどちらかが主体となる“一方通行”の試みではないということだ。観光地側はエシカルトラベルのコンテンツを積極的に発信し、それが旅行者側にとって地域の暮らしや自然環境に配慮した旅を心がける糸口となる。

“エシカルな旅”をテーマに巡る沖縄

今回筆者は「エシカルトラベルオキナワ」を実際に体験してきた。訪れた場所はほんの一部だが、この記事が旅のあり方を考えるきっかけになったら嬉しく思う。そして何よりも、沖縄の旅がより豊かで心躍るものになれば幸いだ。

Cookhal(クックハル)— やんばるの実りを味わうレストラン

名護市の「アグリパーク」内にあるCookhal(クックハル)は、沖縄本島北部・やんばるの食材を活かした料理を提供する地産地消レストラン。やんばる若鶏と羽地米を使ったランチプレートや、大きなソーセージが特徴のホットドッグといった看板メニューのほか、自社栽培のスパイスと名護市産「金川紅茶」を煮出したチャイも人気。地元の人も多く訪れる。

オーナーの芳野幸雄さんは農業を生業にしようと、2003年に東京から沖縄に移住。そこから見えてきた農業の課題を解消すべく、農家の希望額で野菜を買い取り販売する「流通一体型生産」に取り組んできた。また地域活性化のために「やんばる畑人プロジェクト」を発足し、やんばる産スパイスを栽培して商品化するなど、沖縄ならではの気候や人のつながりを活かして精力的に活動している。

「もともと “エシカル”という言葉を意識してお店のコンセプトを設定したわけじゃなかったのですが、地元の人に地元の野菜を一番いい形で食べてもらうことが、最終的に“エシカル”につながった。それによって、自分たちも自信を持って提供できるようになりました」(芳野幸雄氏)

芳野氏によると、やんばる(北部)で観光を終えると、食事をせずに南部や中南部に移動してしまう人々が多いそうだ。やんばるは素晴らしい自然だけでなく食材の宝庫でもあるので、ぜひその恵みを味わってみてほしい。

やんばるアドベンチャーフィールド — 世界自然遺産の森を体感

ジップラインは全5コースで、所要時間は約90分。コース名はすべてやんばるに生息する植物の名前がつけられている。

国頭郡東村の又吉コーヒー園内にあるやんばるアドベンチャーフィールドは、貴重な生物多様性を楽しめるアクティビティ施設。ジップラインやバギーで森を駆け巡り、専門ガイドの解説を聞きながら沖縄独特の自然を体感できる。

やんばる3村(国頭村、大宜味村、東村)の面積は日本全体のわずか0.1%(※1)とはいえ、自力でくまなく巡るのは難しいだろう。しかしジップラインやバギーを利用すれば、なかなかたどり着けない場所までスムーズにアクセスできる上、やんばるの大自然をよりダイナミックに感じられる。ルートはすべて生物多様性を壊さないように配慮されている点にも着目したい。

筆者が実際に体験したのは、空中を飛びながら絶景を見られるジップライン。1本目こそ景色を見る余裕はなかったが、慣れるにつれ緑の豊かさに圧倒され、自然のなかに吸い込まれそうだった。

ジップラインのコース間を徒歩で移動する際に、ガイドからやんばるの魅力や生態系についての説明を聞くことができる。日向と日陰で異なる植物が生育するなど、森の奥深さを学べるのも面白い。ちなみに2コース目の名前にもなっている「ヒカゲヘゴ」とは、その名の通り日陰に生息する植物で、日本最大級のシダ植物。なんと、恐竜がいた時代から存在しているとか。

この施設がある又吉コーヒー園では、希少価値の高い農薬不使用の沖縄産コーヒーを味わえる。海外の生産地支援のためにフェアトレード豆を販売するなど、環境にも人にもやさしいコーヒーファームだ。

壺屋焼陶眞窯 — 100年先へ続くやちむんの未来

壺屋焼陶眞工場長の相馬大作氏

中頭郡読谷村の陶眞窯は、壺屋焼の伝統を継承しながら持続可能なものづくりを実践する窯元。職人の生活向上を目指すために安定した事業運営を確立するなど働き方にも考慮し、時代に合わせた進化を続けながら次世代へ技術を伝えている。

工場長の相馬大作氏は、自身が職人でありながら、工房で働く職人の環境づくりに余念がない。そのために勉強会へも積極的に参加している。

そんな中でつながった縁から、廃棄物となったガラスの使い道を考えるきっかけを得た。現在、アップサイクルして釉薬として開発する構想を進めているという。そもそも陶眞窯では、大作さんの父であり先代の正和さんの時代から、使われなくなったものや廃棄物を利用して釉薬にしていたそうだ。いまでも可能な限り釉薬を手づくりし続けるのは、伝統工芸の窯元としての誇りと自信の表れでもある。

旅行者が参加できる陶芸体験では、絵付けだけでなくオリジナルの器やシーサーづくりも可能。100年先もやちむん文化が続くように新しい視点を取り入れながら、沖縄の伝統工芸の未来を創り続けている。

やちむんカフェ群青 — やちむんの器で味わう島の恵み

やちむんカフェ群青オーナーシェフ相馬正尚氏

陶眞窯の隣にあるのが、やちむん(焼き物)に盛り付けられたピザを楽しめるやちむんカフェ群青。店内には陶眞窯の器が並び、作品を手に取ることができる(購入可)。厨房には陶眞窯から出た陶器のかけらを使った、シーサーの顔をしたユニークなピザ窯が鎮座しており、本場イタリアで修行したオーナーがピザを焼き上げる。

ピザの種類は10種類以上あるが、とくに県産野菜をふんだんに使った「窯焼き!島野菜」が人気。まるで生命がみなぎるような勢いのある島野菜に、モッチリとしたナポリスタイルのピザ生地がベストマッチ! 香ばしさと新鮮さが織りなす一枚を頬張る瞬間は、まさに至福のひとときだ。沖縄のものづくりと食の魅力を、とことん堪能してみてほしい。

心を満たし環境をいたわるエシカルステイ

EMウェルネス暮らしの発酵ライフスタイルリゾート。建物は沖縄初のリゾートホテル「沖縄ヒルトンホテル」として沖縄復帰前(1970年〜)にアメリカの建築基準で建てられたものを、あえて壊さずにリノベーション

旅先での過ごし方はもちろん、どこに泊まるかも重要な選択のひとつだろう。宿泊施設の取り組みしだいで、旅がよりサステナブルで意義深いものとなる。「エシカルトラベルオキナワ」では環境に配慮しながら地域と共存する宿をいくつか選定しており、今回はそのうちの1つ、中頭郡北中城村にあるEMウェルネス暮らしの発酵ライフスタイルリゾートに宿泊した。

健康と地球環境の保全を目的としたウェルネス×SDGsなホテルで、とにかく“心地よさ”へのこだわりが桁違いだったのが印象的だった。その理由のひとつが、全館にケミカルフリー清掃を導入している点だ。

乳酸菌・酵母・光合成細菌などの善玉菌の集まりである「EM菌」を取り入れることで、人にも地球にもやさしい循環型のライフスタイルを実現している。他にも、客室アメニティの廃止、ウォーターサーバーを設置しペットボトル削減に貢献、リネン類の洗濯に環境にやさしい石けんを使用するなど、挙げればキリがない。

またホテルから車で5分ほどの距離に自社農場と養鶏場「サンシャインファーム」があり、今回はそちらも見学させてもらった。レストランから出る食品残渣を発酵させ、100%肥料として循環型の農業を実践。ここで収穫された野菜や卵が、ホテルのレストランやカフェで味わえるという見事なサーキュレーションだ。

宿泊することで心身が健康になり、持続可能な社会づくりに参加できる充足感は何ものにも代えがたい。観光客だけでなく、県民のリピーターも多いというのも納得だ。サンシャインファームは毎週土曜日に無料で開放され、旅行者も見学することができる。

「エシカルトラベルオキナワ」を体験して

今回の体験を通して、自分の旅の選択が地域や観光に与える影響を意識するようになった。沖縄では車移動がメインになるという現実もある。だからこそ、今後はより“エシカル”に意識を向けてみたい。

沖縄に限らず、地域に根ざした体験をすると、その土地に根付く本当の魅力に触れることができる。自然や文化、人々とのつながりを大切にしながら旅をすれば、きっとより心豊かな時間を過ごせるだろう。

取材協力/(一財)沖縄観光コンベンションビューロー 取材・執筆/河辺さや香 編集/後藤未央(ELEMINIST編集部)

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