「神髄」の自然な英訳は? 【北村一真 月曜日の「英借文」】#14
北村一真さんによる英作文トレーニング! #14
英語学習者から大きな支持を得ている英語学者、北村一真さん。英文読解についての著作の多い北村さんですが、自身の英語力の基礎は、英作文によってつくられたと言います。
真の英会話力を効率的に身につけるには、「英借文」というコンセプトで英作文のトレーニングをするのがいちばん。数々の英語学習者を「上級」に導いてきた北村一真さんの指導で、毎週英借文のトレーニングをしてみましょう!
※「NHK出版 本がひらく」より
「英借文」のコンセプトについては第0回をお読みください。
トレーニング開始!
まずは【例題】の和文英訳問題に独力で挑戦してみて下さい。この時点では瞬時に訳す必要はなく、少し時間をかけても大丈夫です。ひとまず英文ができたら、[解答・解説]に進んで、ポイントとなる表現を確認しましょう。解説を一通り理解したら、【練習問題】に取り組んでみましょう。
【例題】以下の和文を英語に訳しましょう。
それこそがこのスポーツの真髄だ。
[解答・解説]
That’s what makes this sport what it is.
That’s what this sport is all about.
2025年公開の映画『スーパーマン』の予告動画に、Your choices, your actions, that’s what makes you who you are.というセリフが出てきます。
what makes you who you areというのは意味はすぐに分かりますが、いざ文字通り日本語にしようとすると、「あなたをあなたがそうである人にするもの」というような複雑な感じになってなかなか難しいですね。日本語ではこういう場合、「あなたが何者かを決めるもの」と表現するか、もっと砕けた文脈だと「あなたらしさ」のような言い回しも使うかと思います。英語には、what makes X who he/she isやwhat makes X what it isといった表現がよく出てきますが、これは要するにXの本質となるような、それが欠けるとXの内容が変わってしまうような要素ということですから、日本語の「本質、要、真髄、醍醐味」などの様々な語の英訳として用いることができます。
【練習問題】
1. その独特の雰囲気が京都の醍醐味だ。
2. その優しさこそ、あなたという人間なんですよ。
[語句]
「雰囲気」: atmosphere
[解答]
1.
That unique atmosphere is what makes Kyoto what it is.
Its unique atmosphere is what gives Kyoto its charm.
ポイント: 1つ目の解答例は「醍醐味」の部分について、上の表現をそのまま用いたものになっています。2つ目の例では「魅力を与えているもの」と解釈して、what gives Kyoto its charmとしました。
2.
Your kindness is what makes you who you are.
That kindness is what defines who you are.
ポイント:こちらも1つ目の例は上の表現を用いたもの、2つ目では「あなたという人間」を「あなたが何者かを定義づけるもの」と考えて、what defines who you areとしました。
この1週間、【例題】【練習問題】の日本語を見て瞬時に英語に訳せるまで練習してみましょう。
プロフィール
北村一真(きたむら・かずま)
1982年生れ。2010年慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得満期退学。学部生、大学院生時代に関西の大学受験塾、隆盛ゼミナールで難関大学受験対策の英語講座を担当。滋賀大学、順天堂大学の非常勤講師を経て、09年杏林大学外国語学部助教、15年より同大学准教授。著書『英文解体新書』『英文解体新書2』(ともに研究社)、『英語の読み方』『英語の読み方 リスニング篇』(ともに中公新書)、『英文読解を極める』(NHK出版新書)、『文法知識と読解力を高める上級英文解釈クイズ60』(左右社)。共著『上級英単語 LOGOPHILIA』(アスク)など。
ヘッダーデザイン:明石すみれ