迫間浦でのイカダ五目釣りでアジにカワハギにチダイ【三重】泳がせ釣りにヒットした大物とは?
朝夕が冷え込んで、半袖での釣行が厳しくなるころ、三重県・南伊勢町迫間浦ではイカダでの五目釣りがにぎやかになる。アジは堤防ではまずお目にかかれない良型が出るし、今年は青物の回遊が多く泳がせで釣果が上がっている。ヘダイやカワハギも見逃せないターゲットだ。今回は11月1日、五目釣り実績抜群の澤村渡船にお世話になり、秋の釣りを楽しんだ。
メインターゲットはアジと泳がせの青物
数日前に澤村渡船の澤村雪美船長に電話すると、開口一番「釣れんよ。渋いで~」とのこと。出鼻をくじかれた形だが、釣果情報では青物の回遊もあり、アジの泳がせ釣りでなんとワラサや70cmクラスのカンパチも上がっている。コレはうまくいけば大物の顔も拝めるかもしれない……と思いつつ、がまかつフィールドテスターの渡邉敦さんと迫間浦を目指した。
午前5時すぎに到着して準備を済ませ、そそくさと渡船に乗り込む。渡ったのは阿口(あくち)と呼ばれるイカダ。前日にはアジがそこそこ上がったらしい。
「青物はどうですか」と聞くと、「サバフグがわいててアジを全部取られるんよ……」とのこと。秋はサバフグがわく季節だが、こんな湾奥までわくのは聞いたことはない。今ひとつピンとこないままイカダに渡り、準備を進めていく。
開始早々にアジ連釣
まずは泳がせ釣りのエサの確保も兼ねて、サビキ釣りから。仕掛けはがまかつ堤防でアジシリーズ。アジのサイズが20cm前後と聞いていたので、渡邉さんは5号をチョイス。下カゴにアミエビを詰め、まだ周囲が薄暗いなか仕掛けを落とす。
雪美船長から「アジは朝マヅメだけやで」と聞いていたので、手返し良く打ち返していくと早くも2投目でカワハギザオの穂先が震えた。上がってきたのは15cmほどの小アジ。エサにちょうどいいサイズなので、イケスに入れてどんどん釣っていく。
釣り続けるうちにアジの群れが居着いたようで、仕掛けを落とすたびにアタリが出る。しかもサイズが徐々に上がってきて、20cmを超えるサイズも交じる。さすがに青物のエサには大きすぎるが、人間のエサには最適だ。アジ大好きの渡邉さん、青物のエサと自分のエサ確保のため夢中になって釣り続ける。
泳がせはエレベーター仕掛け
イケスに20匹ほどたまった時点で、泳がせの仕掛けを準備する。仕掛けはエレベーター式。まずオモリだけをフルキャスト。その後、スナップの付いたハリス5号に伊勢尼13号を結び、アジを背掛けにしてスナップをミチイトに掛けて送り込む。潮が速い釣り場で多用される釣り方だが、今回はサビキにも集中したいので置きザオで放置できるこの仕掛けとした。
投入後はドラグをユルユルにしておく。でないと青物が掛かった場合、サオごと持っていかれることもある。そして尻手ロープは必ず付けておくようにしよう。
表層にはマルアジ
泳がせのサオ沖向きに2本出し、再びサビキ釣りに戻る渡邉さん。少し間が空いたものの、アジは待っていてくれたようでやはりアタリは続く。やがて表層にアミエビに乱舞する魚影。目をこらすと、アイゴに交じってアジらしき影も見える。
すかさず渡辺さんはアミエビを上まきし、仕掛けをその中に入れるとすぐにアタリ。上がってきたのはアジ……なのだが、やけに細長い。そう、それまで底で釣れていたマアジではなく、マルアジだ。
このマルアジ、食味はマアジに劣るが、泳がせのエサとしてはかなり優秀。渡邉さんはチャンスとばかりに表層を狙い撃ちにし、一気に泳がせのエサを稼いでいく。
サバフグの猛攻&青物のボイル
しばらくアジを釣っていると、泳がせのサオのドラグがジリジリ……と鳴った。渡邉さんは慌てて駆け寄るが、少しイトが出ただけでそれ以上がない。青物なら一気に持っていくはずだが……。上げてみると、ハリスがすっぱり切られている。
何者の仕業……と考える間もなく、新しいハリを結びアジを刺して投入。もう1本のサオを上げてみると、なんとアジが無残な姿になっていた。だが食われ方がどうにも妙だ。青物なら一気に吸い込んで持っていくし、アオリイカなら頭をかじる。ヒラメなら袈裟掛けにしたようなかみ傷がつくはずだ。だがこのアジは腹の部分を大きくかじり取られたような傷。何だろうと思いつつ、再投入する。
ほどなく再び微妙なドラグ音。今度は早めに巻き上げると、ボロボロになったアジの後ろについてきたのは……、船長が話していたうわさのサバフグ。試しにジグを投げてみたところ、見事にこのサバフグがパンパンに膨れて掛かってきた。
ここでやや遠くに激しい水しぶきが見えた。じっと見ていると、あちこちでトウゴロウイワシが水面を逃げ回り、その後ろで水柱が上がる。ハマチやツバスどころではない、確実にワラサ以上はある青物のボイルだ。
これを見て、泳がせ続行。エレベーター仕掛けなら全層探れるので、チャンスはあるはず。だが青物たちは完全にトウゴロウイワシに夢中のようで、アジには見向きもしない。
こんなときに有効なのがルアー。特にボイルが起きている状況では、トップウォータープラグが絶対有利になる。だがこの日持っているのはジグのみ……。ジグの表層引きを試したが、タイミングが合わずヒットには持ち込めなかった。
アジは刺し身サイズも
その後サビキを再開すると、アジは朝マヅメだけ……なんてことはなく、時間がたつほどに活性が上がってきているように思えるほど好調。
サイズも25cmに迫る刺し身サイズまで登場。アベレージ20cm、最大25cmといったところで、とにかく退屈しない釣りとなった。
昼からはカワハギ&ヘダイ狙い
さて昼食の後、船長の提案もあり前日にヘダイが好調だったというイカダに替わることとなった。ここでサビキは終了。仕掛けを胴つき3本バリに替え、渡船に乗り込んで次のイカダに移った。アジは泳がせ用の10数匹だけ生かしておいた。
まずはカワハギ狙いから……と、渡邉さんは冷凍アサリをハリに刺して投入。底に着いた途端、カンカンッと金属的なアタリとともに、サオが曲がった。浮いてきたのは、果たしてカワハギ。手のひらより少し大きなサイズだが、いきなりの本命にびっくりだ。
だが後が続かないので、ここで温存していたダンゴを投入。そう、五目釣りでも、クロダイ釣りで使うダンゴは有効。特にカワハギやヘダイには有効なまきエサなのだ。
渡邉さんが間断なくダンゴを投入し続けると、1時間もしないうちに魚が寄ってきたようで、アタリが頻繁に出るようになってきた。上がってくるのはチダイ、小ダイ、そしてヘダイ。
ヘダイの型が意外に良く、尾頭付きの塩焼きにぴったりのサイズ。小ダイも25cmほどあり、こちらもいい土産だ。魚種が増えて五目釣りらしくなってきたところで、1本だけ入れておいた泳がせのサオに異変が起きた。
一気に走った大物の正体は……
シーバスロッドのサオ先が不自然に揺れた後、ジャーッとドラグが鳴って、ラインが一気に出される。このスピードは間違いなく青物!この時2人ともそう確信していた。ドラグを締め、渡邉さんファイト開始。シーバスロッドがひん曲がり、ロープに巻かれないよう強引にやり取りする。
だが、手前まできてどうにも様子がおかしい。最初のスピード感は失せ、鈍重な引きに変わっている。そしてついに底にへばり着いて動かなくなってしまった。この時点で2人とも薄々は気づいていたのだが……。そこから強引に引き上げてくると、水面に現れたのは予想通りのアカエイ。
「エイってあんなスピードで走ったっけ?」と納得のいかない2人だったが、エイに文句を言っても仕方ない。イカダには上げず、恐る恐るハリを外してリリース。青物ではなかったが、十分楽しませてくれたエイに感謝だ。
危険な魚には要注意
ご存知の人も多いと思うが、エイは尻尾に強力な毒針を持つ。他にもアイゴやハオコゼ、ゴンズイ、ミノカサゴなど、イカダでは危険な魚が釣れる。いずれもヒレに毒針を持つ魚たちだ。
こんな危険魚が釣れた場合、絶対手でハリを外そうとしないこと。百均で売っている大きめのS字フックを持参し、直接魚に触れないようにハリを外そう。よくエリアトラウトのアングラーが使うリリーサーの大きめのものと思えばいい。
ハリをのまれていたりした場合は、ためらわずハリスを切って逃すようにしたい。
終わってみればにぎやかな釣果
さてその後もヘダイや小ダイ、チダイが釣れ続け、午後4時半に終了。アジは数えていないが、おそらく優に3ケタは釣っていたと思う。マルアジはほとんどエサに使ってしまったが、20cmを超えるものはキープ。十分な釣果に満足して港に帰り着いた。
サビキも泳がせもしばらく期待大
さて、今後の見通しだが、当日空振りに終わったものの、今年は青物の回遊が多い。泳がせはもちろん、ジグやトップウオータープラグで狙ってみても面白いだろう。
また青物だけではなくヒラメやマゴチなども狙いめ。家族で釣行して、子供たちはサビキ、お父さんはルアーや泳がせで大物狙いということも面白い。子供たちの前で大物を釣り上げれば、お父さんを見る目が変わるかも……。
澤村渡船のイカダは、どれも個室トイレが完備されており、女性も安心して釣行できる。また波穏やかな湾内に設置されているので、酔う心配もない。
これから晩秋にかけさらに面白くなるイカダ五目、ぜひ家族で出かけてみてほしい。
<週刊つりニュース中部版 編集部/TSURINEWS編>