【木更津市】食で地域貢献目指す・明治30年創業の老舗割烹「宝家」
木更津市の老舗割烹「宝家」は、同市出身の俳優・中尾彬さんをはじめ多くの文化人や墨客も足しげく通ったと言う名店です。2025年6月に発売した「さつまいもチップス」(今期分は完売)をはじめ、地域密着のメニュー開発にも積極的。5代目女将・鈴木希依子(きえこ)さんに、開発に懸ける思いや宝家のあゆみなどをうかがいました。
明治30年創業・宝家の歩み
現在は割烹として営業する「宝家」は、木更津市がまだ「君津郡」と呼ばれていた1897年(明治30年)、JR木更津駅西口の富士見通りに割烹旅館として誕生しました。
港町であることや花街だったことから、すれ違う人と肩をぶつけずに歩けないほどのにぎわいをみせ「木更津銀座」とも称された木更津のメインストリート・富士見通り。ハイカラだったと言う創業者の鈴木岩吉さんは、宝家で寄席を開催したり、新作映画のリリース時に俳優を招いたりと木更津の文化振興にも大いに貢献したのだそう。
そんな宝家は多くの文化人や墨家に愛されてきました。
中でも木更津市出身の俳優・中尾彬さんは、先代主人の義久さんと1学年違いという事もあり、生前は公私ともに足を運んでいたと言います。
「子どもの頃、芸能人の方とわからないながらも、生まれて初めて『粋とはこういうことなんだ』と感じた方が中尾さんでした」
と語るのは、5代目女将の鈴木希依子さん。
食通でも知られた中尾さんは「久ちゃん(義久さんの事)、県外の人は地のもんを食べたがるもんだよ」とアドバイスをしたことも。
美食にこだわっていた久義さんにとって、このアドバイスは目からうろこだったそう。そしてあさりを中心とする木更津の名産をふんだんに取り入れたメニューを開発。今も人気メニューとして愛されています。
「木更津では、あさりの串揚げはよく食卓に上がっていたので特別だと思わなかったんです。でもメニューに取り上げてみたら県外からお越しのお客さまには驚かれ、地元の方には懐かしいとご好評をいただきました」(希依子さん)
木更津と共に歴史を刻んできた宝家ですが、建物を半焼させる火事や戦争、東日本大震災や房総半島に大きな被害をもたらした台風15号にコロナ禍と、多くの危機も迎えます。
17年前に義久さんが病に倒れ、母で女将のまり子さんが義久さんの看病をしながら店を守る姿を見て、希依子さんも若女将として店を支えることを決意。
昨年からは女将となり、代表取締役の兄・崇久さんと共に宝家を支えています。
食で地域活性化に貢献したい
「宝家が苦難を乗り越えられたのは、いつでも差し伸べてくれる手があったから」と語る希依子さん。
宝家では、食で地域活性に貢献したいと、房総地区を中心に土地の食材を積極的に取り入れ、地域密着メニューの開発に取り組んでいます。
一つの縁はまた次の縁をつなぎ、2024年、希依子さんと宝家に新たな出会いが訪れます。
花味たれかつ丼開発が縁でつながったワンドロップファームが、千葉県内の農家を紹介。そこで出会ったのが千葉県産のサツマイモだったのです。
実は千葉県はサツマイモの生産量が全国第2位。希依子さんは「そのおいしさを広めたい!」と、さつまいもチップスの開発に乗り出します。
原材料はシンプルに、千葉県産有機サツマイモ・揚げ油・砂糖のみ。
食物繊維が豊富で、ビタミンA、ビタミンC、マンガン等の栄養素を豊富に含むサツマイモを、100キログラムの玄米から、わずか1キログラムしか作る事のできない「つの食品」のこめ油で揚げ、種子島のミネラル豊富なサトウキビの砂糖で味付け。さまざまな年代の人に愛される健康的なスナック菓子に仕上げました。
※今季分は完売。次回は千葉県産サツマイモの収穫時期にあたる2025年10月中旬以降を予定
実食!新商品「さつまいもチップス」
いよいよ「宝家特製 さつまいもチップス」を実食します!
封を開けるとすぐにサツマイモのいい香りがふわりと漂って来てびっくり。チップスってこんなに野菜感…いや、サツマイモ感濃厚でしたっけ?
揚げてあるのに、油臭くはありません。あっさりとした上質の米油を使用しているからでしょうか。
ぼりり!
口に入れると、ポテトチップスやスナック菓子とは全く違う、しっかりした噛み応え。形こそチップスではありますが、食感は芋けんぴに近いかも。
優しい甘みで、噛めば噛むほどサツマイモの風味が口いっぱいに広がります。どこか懐かしくて癖になる味に、次から次へと手が伸びていました。
これからの「宝家」
時代の流れやインバウンドなどで変わりつつある木更津の街。希依子さんに、これからの宝家について尋ねました。
「ここにしかない味で、房総の魅力を広く発信していきたいです。最近は食の多様性に対応し、ハラールやヴィーガン、食物アレルギーへも可能な限り対応しています。今もいくつか新しい挑戦に取り組んでいるんですよ。芯はぶれずに、時代に合わせていくことが大切だと感じています。今後もお互いに助け合い、みんなで地域を盛り上げていきたいですね」
しなやかに強く、希依子さんはそうほほえみました。
宝家
住所/千葉県木更津市中央2丁目3-4
営業時間/
平日 11:30〜13:30/17:00〜21:30(L.O. 20:30)
土曜日 11:30〜14:00/17:00〜21:30(L.O. 20:30)
日曜日・祝祭日 11:30〜14:00/17:00〜21:00(L.O. 20:00)
定休日/月曜日(祝日の場合、翌火曜日がお休みとなります)
駐車場/55台
席数/200席(テーブル大小・個室合わせ)
テーブル席ではベビーカー利用OK
問い合わせ
電話番号/0438-22-3765
ホームページ/https://takaraya.jp/