ヤクルト奥川恭伸の復活度をデータでチェック、2021年と比較して見えた課題と収穫
ケガ乗り越え、涙の980日ぶり勝利
2024年6月14日はヤクルト奥川恭伸にとって忘れられない日になっただろう。2022年3月29日の巨人戦以来808日ぶりの先発マウンドとなったオリックス戦(京セラドーム大阪)で5回1失点と好投。2021年10月8日の阪神戦以来、実に980日ぶりの勝利をつかんだ。
試合後のヒーローインタビューでは大粒の涙をこぼしながら喜びと応援への感謝を口にした。涙の復活劇にもらい泣きしたファンも少なくないだろう。
星稜高からドラフト1位で入団し、2年目の2021年には18試合に登板して9勝をマーク。規定投球回には届かなかったものの、100イニング以上の投手ではセ・リーグトップの与四球率0.86、奪三振と与四球の比率を表す指標「K/BB」は断トツの9.10(2位の大野雄大は4.54)を記録するなど抜群のコントロールで優勝に貢献した。
しかし、野球の神様は無限の可能性を秘める右腕に試練を与える。右肘痛など度重なるケガで投げたくても投げられない日々が続いた。
2022年は3月29日の巨人戦以外、二軍でもマウンドに立てず、2023年は二軍で勝ち星なしの4敗、防御率6.26。それでも奥川は歯をくいしばり、決して諦めなかった。980日ぶりの白星は野球の神様からのプレゼント。本当の復活ロードはこれからが本番だ。
奪三振率低下もコントロールは健在
実際に奥川の投球はどこまで戻っているのだろうか。2021年のデータと2024年6月14日オリックス戦のデータを比較してみた。
2024年は1試合だけのため一概には言えないが、被打率は2021年に比べると低下している。5回で7安打を打たれ、杉本裕太郎に一発も浴びた。
奪三振は3個だったため奪三振率(K/9)も7.8から5.4に低下。守備の影響を受けない被本塁打・与四死球・奪三振のみで投手の能力を評価した指標「FIP」も2.90から3.95に悪化している。数字を見る限り、やはり完全復活とは言えないだろう。
それでも無四球だったことは光明と言える。持ち前のコントロールはさび付いていない。
キレは戻っていないがスピードはアップ
続いて球種別の被打率と平均球速は下の通りとなっている。
平均球速はストレート、フォーク、スライダー、カーブとも2021年よりアップしている。まだ1試合だけということもあるとはいえ、スピードに関しては復活、もしくはさらにレベルアップしていると言えそうだ。
ストレートの被打率は.312から.364、カーブも被打率.133から.500に悪化。久々の実戦で相手打者に慣れていないことやデータ不足が響いているのかもしれないが、ボールの「キレ」はまだ戻っていないことも見て取れる。
いずれにせよ、奥川はまだ再出発したばかり。日程の関係で登板翌日の15日に抹消されたが、近いうちに復帰2戦目の雄姿を見られるだろう。課題をひとつずつ克服して復活ロードを歩んでほしい。苦難を乗り越えて大きくなった23歳の今後が楽しみだ。
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記事:SPAIA編集部