竹村実悟主演、佐野瑞樹×佐野大樹によるWBB『サムライモード』が開幕 サムライたちの信念に胸が熱くなる【ゲネプロレポート】
佐野瑞樹と佐野大樹によるWBBの第26回目となる公演『サムライモード』。6月4日(水)の開幕に先立ち、公開ゲネプロが行われた。ここでは、ゲネプロの様子をレポートする。
本作は、2008年と2016年に佐野大樹率いる*pnish*で上演された作品を佐野瑞樹の演出で新たに立ち上げた時代劇エンターテインメント。今作が単独初主演となる竹村実悟が主人公の武将ガラクシャを演じ、関翔馬と共演する。
舞台はいつかの戦国の世。領土拡大を目論む羽生賢明(佐野瑞樹)は、手始めとして隣国の伊那家を攻め落とす。勢いに乗った賢明はさらに領土を広げようとするが、そこで問題が起きる。伊那家を支えていた名将、シスイ(今井俊斗)とサイガ(川﨑優作)が反乱軍を従え、内乱を起こし始めたのだ。
神出鬼没の戦いを見せる反乱軍に打つ手がない賢明だったが、弟の羽生凌明(関)が「囚われの身となっている伊那家の武将ガラクシャ(竹村)をお貸しいただければ、2日でシスイとサイガを捕らえてみせます」と申し出た。こうして凌明とガラクシャの追跡劇が始まった。
戦国の世を舞台に主従の絆や人間ドラマをエンターテインメントとして描き出した本作。物語は、ガラクシャが賢明による兵に追い詰められる場面から始まる。竹村によるアクションは華やかで美しく、物語冒頭から会場を盛り上げる。さらに物語が進むにつれ、アクションシーンも増え、敵と味方が入り乱れての戦いのシーンはダイナミックで迫力満点だ。本作の殺陣は、肉体を使ったアクションをうまく殺陣の中に取り入れているので、迫力がありながらも軽やかで泥臭さを感じさせない。ストーリー展開が早く、テンポよく物語が進むことも相まって、終始、爽快感を感じさせた。
また、全体を通して、客席を存分に使った演出が施されており、それが臨場感を高めていた。例えば、ガラクシャと凌明がそれぞれの通路に立ち、観客越しに会話をするシーンは、まるで自分も舞台の中にいるような気持ちにさせてくれる。登場のために客席の通路を使うだけでなく、客席をステージの延長線上にあるものと捉えることで、観客はより深い没入感を味わうことができるのだ。本作のエンターテインメント性の高さはこうした演出からも感じられた。
それぞれのキャラクターの個性が立っているので、物語に入り込みやすい点も魅力の一つ。竹村が演じるガラクシャは、腕っ節が強く、勝ち気で真っ直ぐな性格。感情を大事に行動する人物だが、それだけではない一面もある。そんなガラクシャを竹村は、真摯に素直に演じた。ニカッと歯を出して笑う姿はまさにガラクシャを体現していたし、軽やかに動くアクションシーンも魅力的だった。
対照的に、関が演じる凌明は領民からも好かれる気さくな人物。穏やかで落ち着いた声で話す関の凌明は、聡明さと優しさを感じさせた。しかし、アクションになるとその印象は一転する。素早い身のこなしで敵をなぎ倒す姿は圧巻で、強さが伝わってきた。“二面性”が凌明の見どころの一つだろう。
頭の回転が早く、自由奔放で人をおちょくって楽しむサイガ、お調子者で空気は読めないが愛嬌があるトラジ(福島海太)、抜けたところがあるが剣の腕前は一流な橘(和泉宗兵)とそのほかの登場人物も皆、愛すべきキャラクターなのだが、反乱軍を率いるシスイは特に印象に残った。常にクールで冷静だが、先代への忠誠心を未だに絶やさず、復讐に燃える熱い心を持つ。まるで冷たい炎のような人物像を今井が見事に作り上げていた。
本作の演出を担い、羽生賢明を演じた佐野瑞樹にも触れておきたい。猜疑心が強く、領土拡大に力を注いだがゆえ、あちこちから恨みをかってしまう賢明。佐野瑞樹はそうした賢明をシスイたち反乱軍の仇として存在感たっぷりに演じた。登場するシーンは決して多くはないが、佐野瑞樹の重厚な芝居も相まって非常に心に残る人物になっていた。
物語は終盤に向かうにつれ、それぞれの信念がぶつかり合い、さまざまな思惑が入り乱れ、驚きの展開を迎える。誰もが自分の信念や忠誠心に従って生きて、動いている。ここに描かれるのはまさにサムライの生き様。彼らの生き様に大きな拍手を贈りたい。
WBB vol.26『サムライモード』は、6月9日(月)まで東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA、6月13日(金)~15日(日)に神戸・AiiA 2.5 Theater Kobeで上演。
取材・文・撮影=嶋田真己
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主演・ガラクシャ役:竹村実悟
無事に初日を迎えることができ、本当に嬉しい気持ちで胸がいっぱいです!
台本をいただいてからこれまでの稽古の日々を思い返すと感慨深く、今はただ皆さんに観ていただけることが幸せです。
この舞台に立つ一瞬一瞬を大切に、全力で楽しみながら演じます。この作品が皆さまの心にまっすぐ届きますように。
羽生凌明 役:関翔馬
今回は凌明、凌之介という真逆な二役を演じます。凌明は表と裏の性格を持っている役どころで、稽古場でも試行錯誤を重ねてきました。
演じ分ける上での不安も多かったのですが、無事に開幕を迎えられて今は嬉しい気持ちでいっぱいです。皆さんに楽しんでいただけるように、最後まで全力で走り切ります!
演出 羽生賢明 役:佐野瑞樹
『サムライモード』の初演は羽生凌明として出演しました。再演は1観客として観に行きました。そして今回は演出と羽生賢明です。僕が考える新説のサムライモード、そしてこのカンパニーにしか出せない個性。皆さんの目にどう映るのか? 不安もありますが、楽しみでもあります。なんにせよ、この愉快な仲間たちと全力で挑みます!! 刮目してください!!