渓流ルアー釣りで選ぶ理由がある!進化したグラスロッドの実力
しなやかな曲がりが渓流で活きる!進化したグラスロッドの魅力を田崎翔さんが実釣で解説。釣果アップのヒントも。
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写真と文◎編集部
釣り味の正体
グラスロッドといえば、「よく曲がる、軟らかい」という印象が強い。
実際、カーボン素材と比べて弾性が低く、ブランクが同じ厚みや太さならよく曲がってくれるものだ。
「感覚としてはカーボンよりもしっとりとした感じで曲がります。このグラス特有の曲がり方が独特の釣り味に繋がっているのかもしれません」
そう話すのは、渓流から本流のサクラマスまでトラウトを追って各地を駆け回る田崎翔さん。
普段は硬くて張りのあるカーボンロッドを多用しているが、グラスロッドはある意味その真逆の存在で、
だからこそ使うと非日常感があって楽しいという。
【この日のタックル】
ロッド:ティムコ
パスプルーバーPRV48GSUL-2 "Glass Breath"(小渓流向け)、
パスプルーバーPRV51GSL-2 "Spicy G"(大場所向け)
リール:ダイワ セルテートFC LT2000S-H
ライン:PE0.6 号
リーダー:フロロカーボン5lb
釣り味という言葉は曖昧だが、手もとに伝わる情報量や、魚との駆け引きを楽しめる感覚を指すのが一般的。
一尾を釣りあげるまでの過程を大切にしたいという人が渓流アングラーには多く、釣り味のよいグラスロッドは魅力的な選択肢としてコアなファンから今なお根強い人気がある。
かつてのグラスロッドには、「重くてダルい」「キャストのキレが悪い」といったネガティブなイメージもあった。
しかし近年は、UDグラスと呼ばれる縦方向の繊維だけで構成された素材が登場したことで、性能は大きく変化している。
「UDグラスは軽くて張りを出しやすい素材です。昔のダルいイメージはかなり解消されています」
と田崎さん。さらに、バット径が太く、先端が細いハイテーパー設計であれば、
グラス素材でありながらも軽快にロッド操作できるものも多い。
ダルさを排除しつつ、曲げる楽しさやブランクの粘りといったグラスらしいテイストはしっかり残されている。
つまり、現代のグラスロッドはしなやかでパワーもあるという使い勝手のよいロッドへと進化しているのである。
3月下旬、気温差が激しい日が続くなか、田崎さんは日原川に足を運んだ。
高校生の頃は自転車で通っていたそうだが、訪れるのは久しぶりとのこと。
当時よりも駐車スペースがかなり限られているようで苦労したが、あちこち回ってようやく入渓することができた。
この日、田崎さんはパスプルーバー(ティムコ)のグラスモデルである「PRV48GSUL-2」と「PRV51GSL-2」の2本を使い分けた。
ルアーを動かす際、入力はカーボンのロッドより強め。ブランクの反発が緩い分、引っ張りすぎていないからか、流れの中でルアーが少し粘るイメージと田崎さん
PRV48GSUL-2は、100%ピュアグラスを採用しており、長さも相まって小渓流向き。
一方、大場所の多いポイントではPRV51GSL-2を使用。
グラスとカーボンのコンポジットモデルでファストシンキングミノーのトゥイッチも問題なくこなせる張りを持っており、
ニジマスなどの大型魚が掛かっても安心感があるハイパワー仕様だ。
この日は気温が20℃を超すほど暖かいが活性は低いようで反応は皆無。
加えて先行者がいたようなので大きく移動したりして広く探る。
大場所でも小場所でもグッとロッドを曲げて軽快にキャストしていく田崎さん。
ナビア50FS(ティムコ)を小さな落ち込みへ静かに着水させ、優しくトゥイッチを掛けていくとロッドが曲がった。
思い入れのある川で再び美しいヤマメに出会えた田崎さんは胸をなでおろす。
「派手に動くルアーを嫌うスレた魚にも、グラスならではの軟らかいアクションが効きます。
今日は低活性で反応も少なかったですが、貴重なチェイスをモノにできたのはグラスロッドのおかげかもしれません」
グラスロッドは釣り味がよいだけでなく、性能面においてもいくつかメリットがあると田崎さんは言う。
ひとつめはヤマメ特有のローリングなどの魚の細かい動きに追従しやすいためラインテンションが保たれてバラしにくいこと。
特に奥多摩エリアのようなアングラーが多く常にプレッシャーが高い場所ではショートバイトが多くバラシも多くなりがちだ。
グラスロッドは釣果を伸ばすための選択肢としても効果的なのである。
「解禁直後の低活性な魚にもよく使います。勢いのないショートバイトでも強すぎない反発力のおかげでバレにくいんです。
あと、北海道やC&R区間でレインボーをねらうとき、カーボンだとどうしてもヒットした魚が本気になって暴れてしまいキャッチが難しくなりがち。
でもグラスなら魚も比較的大人しいまま寄せることができるので、そのクッション性に頼ってしまうことが多いですね」
その反発の弱さはキャストでも活きてくる。
その曲がりやすさから小さなモーションでも飛ばすことができ、近距離であればカーボンよりも楽にキャストできる。
また、リリースタイミングもカーボンより広いため、初心者でもロッドをしっかり曲げてキャストするという感覚を掴みやすい。
これはバックラッシュのリスクを減らしたいベイトフィネスでも役に立つ。
「ブランクを曲げてルアーを弾くように飛ばすベイトタックルは特にグラスとの相性がいいと思っています」
カーボンロッド全盛のいま、あえてグラスロッドを選ぶ理由はどこにあるのか。
それは、効率や正確性とは違った、釣りの余白を味わう感覚にあるのかもしれない。
「釣果だけじゃない楽しみ方ができるのが、グラスロッドの面白さだと思っています」
田崎さんのこの言葉は、グラスロッドの魅力をよく表しているが、
大型魚への対応力やバラしにくさなど、実釣面でのメリットも多い。
ただ単に趣味性の高いだけではないことを改めて感じた。
低活性ながらグラスロッドだからこそ手にできた一尾だ
ベイトフィネスはリールの性能が向上した分、ロッドの反発を活かして投げなくても飛ぶようになってきたが、ロッドの反発をフルに使って投げるのがベイトキャスティングの真髄だ。曲げやすいグラスロッドはベイトフィネス入門にもうってつけ。写真はFS49CUL-3J"Glass High"(フェンウィック)
この日使用したルアー。上からイメル50S、ラウド45S、ナビア50FS(すべてティムコ)。パスプルーバーのグラスモデルならファストシンキングのミノーも使いやすい