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バーテンダー日本一の大将が料理を振る舞う「昭和レトロ酒場 倉吉」(福岡市・大名)

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思いっきりノスタルジックな居酒屋「昭和レトロ酒場倉吉」

「万太郎の喫茶と定食ノスタルジア」と言うテーマで書かせてもらっているこの連載企画。今回ご紹介するのは「昭和レトロ酒場倉吉」という居酒屋。喫茶でも定食でもないが、店名から店内の雰囲気から料理内容まで思いっきり昭和イメージでこれ以上にないくらいノスタルジックなのだ。さらに大将の筑後地方出身の倉吉さんのざっくばらんで明るく楽しい性格がまさに昭和レトロどんぴしゃで、倉吉さんの存在そのものもノスタルジックなのであらためて取材させてもらうことにした。

僕が大名にある「昭和レトロ酒場倉吉」に最初に来たのは4年半前。近くの「コミュニティラジオ天神」で週に一回ラジオ番組を担当することになったので、生放送の前に関係者と食事をするためだった。大将の倉吉さんはバーテンダーとして日本国内に名声を馳せた人であることは知っていたので、逆に「バーデンダーとしてそんなにすごい人が何故居酒屋の大将に??」と言う疑問は最初からあった。

今回はそのあたりの謎解きをしながら「昭和レトロ酒場倉吉」と倉吉さんの魅力を紹介できれば良いなと思う。

オーナー倉吉さんの経歴

倉吉浩二さんは1960年福岡県瀬高町(現:みやま市)生まれ。現在は中洲と大名に「BAR倉吉」2店舗と今回紹介する「昭和レトロ酒場倉吉」のオーナーである。
1978年1期生としてホテルニューオータニ博多に入社して以来25年勤続して独立。バーテンダーとしては46年余りの経歴。
1984年23歳で日本ホテルバーメンズ協会(H.B.A.)の最高に権威のある大会に上司の勧めで参加し、いきなり HBA創作カクテルコンペティションにて全国最年少優勝したという。以後も数々の大会にて入賞の実績を積み重ねてきた日本を代表するバーテンダーのひとりだ。

一般社団法人日本ホテルバーメンズ協会(H.B.A)では九州支部長・全国常任理事を歴任し、現在は全国特別顧問・九州支部常任相談役と就任しており年2回東京・大阪で開催される全国のバーテンダーを指導育成する技術講師や各地方へのセミナーへ招致され飲料文化・若手育成に貢献する活動もされている。

その活躍が認められ、なんと、厚生労働大臣が決定する令和5年度の卓越した技能者(通称:現代の名工)に選出。九州のバーテンダーが「現代の名工」に選ばれるのは初の快挙だ。さらに令和6年秋の褒章にて黄綬褒章を受章。九州のバーテンダーが黄綬褒章を受章するのはこれまた初の快挙を成し遂げた人だ。

店のホームページより

「昭和レトロ酒場倉吉」をオープン

そんな倉吉さんは2018年11月に「昭和レトロ酒場倉吉」をオープンした。
まずは「バーテンダーとして長年活躍されて、バーを経営されているのに、なぜ居酒屋を開業しようと思われたんですか?」という疑問をストレートに聞いてみた。

「『BAR倉吉』を複数店舗経営し始めた時から思ってたんですが、当然ながら僕はどこかの店にしか居られないわけですよ。飲食店ではオーナーが店に立たなくなるとお客さんが離れて店はつぶれるとよく言われるので、それなら最初から僕がいなくても大丈夫な店にしようと思い、店長をしっかり育てて店の顔として任せたほうが良いと思うようになったんです。結局、教え子の彼たちもカクテル競技会などで日本チャンピオンになりましたからね。みんなが頑張ってしっかり店を守ってくれてます。店は法人化してますので、ゆくゆくは僕が引退しても店は継続できるという形にしてるんです」

さらに「元々若い頃からいつか居酒屋をしたいという夢もあったんですよ。まあ本音を言うと、長年頑張って働いてきたので、60歳を前にして少しゆっくりしたいというのもあったんですけどね(笑)」

「ゆっくり時間が出来たら、何をするんですか?」と聞いてみたら、期待通りの答えが返ってきた。

「とにかく釣りが好きなんでね、特にイカ釣りなんですけど、それをしっかりやりたくて、、、」とのこと。

ということでイカ釣りについて詳しく聞いてみよう。

週一回イカを仕入れに釣りに行く生活

「イカ釣りはいつどこに行くんですか?」

「毎週土曜日の営業が終わると夜食の弁当を作って佐賀県唐津市の港に行くんです。船頭さんのところに作ってもらってる僕専用の部屋があるんですが、そこに泊まって早朝から自分の舟を自分で操縦して沖まで出るんです。釣れるポイントがあるのでそこで午後か夕方まで釣って帰ってくる生活です」

「釣るのはイカだけですか?他の魚は釣らないんですか?」

「たまにアジを釣って南蛮漬けにする時があるんですが、基本的にはイカ専門ですね。『イカは買わない!』というのが僕のポリシーですから(笑)」

「潔いですね!イカが釣れなかった時はどうするんですか?」

「その時は刺身盛り合わせにイカは載りません(笑)」と断言する倉吉さん。

「倉吉さんにとって釣りは趣味じゃなくて仕入れなんですよね?」

「仕入れですよ(笑)!!でも悪天候などの理由で釣りに行けない週末は自分でも分かるくらい機嫌悪くなるので、天候が回復すれば平日に行く時もあります。まあ、仕入れですが、仕事していく上でのストレス解消というか活力になってるのは間違いないです」とのこと。

「それって、大事ですよね!!」

写真:倉吉さん提供

実は、居酒屋の前に唐揚げ店を開業していた

話は前後するが、実は「昭和レトロ酒場倉吉」を始める前に、唐揚げ店を始めたという。
「大分に釣りに行った帰りに食べた『肉の城南』という店の唐揚げが最高に美味しくて、福岡で唐揚げ店を始めたいなと思ったんです。何度も通ってレシピや作り方をいろいろやっと教えてもらったんですよ」
教わったノウハウに倉吉さんなりの味付けをしてレシピは完成。ついに南区井尻に唐揚げ店をオープンさせたそうだ。

そもそもは、ある社員のために作った店と言う意味合いもあったそうだが、その社員が辞めることになり唐揚げ店は短期間で閉めることになったという。

しかし、他のスタッフもいたしフライヤーなどの機材もあったので「だったら前々からやりたかった居酒屋をしよう!」となったそうだ。

「物件を探していたらここが見つかって、前の店が昭和レトロっぽい内装だったのでそのまま使わせてもらうことになったんです。店内の古い水屋や昭和時代の和風の食器もそのままもらえたんです。それで店名にも『昭和レトロ』というのを付けたんです」

唐揚げ店から始まった居酒屋だったが、この場所との出会いも含めていろんな縁で「昭和レトロ酒場倉吉」は完成したのだった。現在、数種類の鶏の唐揚げメニューがあるが、もちろんその味付けは大分の大将から教えてもらったノウハウが生かされているという。

おすすめメニューがたくさん

そんな倉吉さんが作る人気メニューをいくつか。まずは倉吉さんが釣ったイカが載った「刺身盛り合わせ」(1~2人前1,800円)から。イカはまさに天然のイカだが、それ以外は基本的に養殖物を仕入れている。「その方が安定して品揃えが出来るので、天然にはこだわってないです」という。「昭和レトロ酒場倉吉」に来たらこれは食べておくべきでしょう。予約の時に刺身盛り合わせの注文をしておくとスムーズに提供されます。

次に大人気の「手仕込みとんかつサンド」(1,400円)。最近バージョンアップされて分厚さ倍増だ。以前の150gから200~240gに豚肉を増量したそうだ。よくもまぁこんなに柔らかく、そしてジューシーに揚がるもんだと感動する。肉の食感を楽しんでもらうために、あえてキャベツの千切りなどの野菜は挟まずに肉とソースとパンだけにしているそうだ。

さらに「昭和レトロな鉄板ナポリタン」(1,400円)。熱々の鉄板に生卵を崩して麺と絡めながら追い焼きするとトマトの香りがふわ~~~~っと、もうたまらん。最近注文が増えてきて自家製のトマトソースも寸胴で作るようになったそうだ。

そして鶏の唐揚げは九州産のハーブ鶏にこだわって使っているそうだ。とにかく倉吉さんが作るどの料理にも言えることだが、味が濃すぎず薄すぎずというのが印象だ。唐揚げもそのまま食べても良いし、ビールのアテにもなるしご飯のお供にもなる絶妙な味加減なのだ。

他にも魚、肉、野菜を使ったいろんな居酒屋メニューがたくさんある。

最後に

「最近は外国のお客さん、特に韓国からの若い人たちがSNSを見て来られるようになりました。そしてそのほとんどがナポリタンとカツサンドを食べられるんです。あらためてSNSの力をスタッフみんなで感じてますね」

「以前は外国人客はほとんど来られてなかったそうですが、とまどいとかないですか?」

「最初は言葉が通じなくてドキドキしたりしましたが今は有難いですね。ナポリタンとカツサンド、それにもう一品二品くらいでササっと帰られる方が多いので、お店の回転は良いです(笑)」

「昭和レトロ酒場倉吉」の基本的な経営方針について倉吉さんはいつもこう言う。
「もともとどこかで料理人として修業してたわけでもないので、素人料理・家庭料理というのが売りなんです。それでも美味しいと言ってもらえるお客さんに楽しんでもらえればそれで良いんです」と倉吉さん。

確かに、それも事実かもしれないが、多分「昭和レトロ酒場倉吉」を好きなお客さんのほとんどがこう言うんじゃなかろうか。
「こんなに美味しくてお手頃価格で楽しめるなら、素人料理でも家庭料理でもなんでも良いですよ!最高ですよ!!」

今回は“ノスタルジック”という感じで倉吉さんのことをご紹介したが、本来、バーテンダー業界ではレジェンドやレガシーというべきすごい人なのだ(失礼しました)。
それでも僕は酒場の大将としての倉吉さんが大好きだ。
これからも美味しい料理をよろしくお願いします!!倉吉さんが釣ったイカも楽しみにしてます!!

昭和レトロ酒場 倉吉
福岡市中央区大名1-15-26大名マンション102号
092-726-0080

上野万太郎
ここ15年以上、外食写真日記的なブログ「万太郎.net」で福岡を中心とした飲食店の人々やお客さんと関わったエピソードを発信。著書は「福岡カフェ散歩」(書肆侃侃房/2012年)、「福岡のまいにちカレー」(書肆侃侃房/2014年)。
インスタID:mantaro_club

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