セバスチャン・スタン、難役の参考に喜劇王バスター・キートン ─ 混沌のなかで無表情を表現するため
のバッキー・バーンズ役で知られるセバスチャン・スタンは、バッキー役を再演する『サンダーボルツ*』に先がけ、野心的な新作映画2本を控えている。若き日のドナルド・トランプを演じた『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』と、A24製作のブラックコメディ・スリラー『A Different Man(原題)』だ。
スタン演じる主人公エドワードは、皮膚や骨に腫瘍が生じる神経線維腫症を患っている俳優志望の男。革新的な整形治療を受け、 別人のように美しい容貌を手にしたエドワードだったが、そこに同じ神経線維腫症を患うオズワルドが現れた。自分が演じるべきだった役柄を演じ、天性の才覚で人気者となったオズワルドに、エドワードは嫉妬心を抱き、異常な執着を見せるようになる……。
『アプレンティス』でトランプ本人を入念にリサーチしたというスタンだが、『A Different Man』では研究の限界を感じたという。米では、「どんなリサーチだってできるけれど、果たして実際に近づけるのか? どうすれば正しく演じられるのか?」という葛藤があったことを認めているのだ。
しかも準備期間はほとんどなく、数週間後には撮影に参加しなければならず、また撮影期間もわずか22日間というタイトなスケジュール。監督のアーロン・シンバーグによると、スタンは混沌のなかで無表情を表現するため、サイレント映画時代の喜劇王バスター・キートンを演技の参考にしたという。
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エドワードを演じるうえでは、ほかにもいくつかの助けがあった。実際に神経線維腫症を患うオズワルドのアダム・ピアソンは、スタンに「あなたは、僕が経験してきたプライバシーの侵害や、他者の視線と指差しを理解することはできない。けれど、世間から“何かやれよ”と思われるような状況がどういうことかは知っているはず」と助言したという。
また、ピアソン本人を参考にした特殊メイクを施すにあたっては、特殊メイクアーティストのマイケル・マリーノ(『THE BATMAN ―ザ・バットマン―』ではコリン・ファレルの特殊メイクを担当)の都合で、毎日早朝からメイクアップを受けた。特殊メイク姿で街に繰り出し、周囲を観察できることも演技の参考になったという。
「撮影が始まるのが午前11時からでも、朝5時ごろには彼(マリーノ)のスタジオかアパートに行きました。そのあとは街を歩き、どんなことが起こるのかを見てみたいと思いましたね。ニューヨークで一番賑やかな通りのひとつ、ブロードウェイでさえ、誰も僕のことを見ていない。まるでそこに存在していないかのようでした。時には人が立ち止まり、あからさまに友人を殴るようなそぶりを見せたり、指差したり、写真を撮ったりしたこともありました。」
スタンは、ピアソンの人生を見守ってきた母親とも話をしたことを振り返る。「彼女は、“私が望んでいたのは、誰かが一日でも彼と同じ思いをしてくれることだった”と話してくれました。僕が最も近づけたのは、(特殊メイクで街に出た)そのときだったかなと思います」
映画『A Different Man(原題)』は2025年、日本公開予定。配給はハピネットファントム・スタジオ。
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