2024年に発売された<淡水魚の本>おすすめ7選! 川・湖のサカナの魅力を知ろう
今年4月1日、東京都で“ガサガサ”と称される採集が解禁(東京都内水面漁業調整規則の改正ー東京都産業労働局)され、淡水魚に注目した人も多かったのではないかと思います。
そこで、サカナに特化した小さな本屋『SAKANA BOOKS(サカナブックス)』(東京都新宿区)のスタッフ・川村さんに、2024年に刊行された淡水魚に関する本をピックアップしてもらいました。
来年こそは淡水魚に触れてみたいという方、淡水魚が好きで好きでたまらない方……ぜひ今回紹介する本を読んで、淡水魚との未来を考えてみてくださいね。
ふるさとの川をめざす サケの旅│平井佑之介(写真・文)
「ガラン ガラン ジャジャジャ」本書に登場するシロザケたちが、産卵のために川底の石や砂利をほる音です。岩手県内のとある川に通いつめ、四季折々の川とその流域の方々や生きものの暮らしを取材している筆者の平井さん。
はじめに紹介する『ふるさとの川をめざす サケの旅』(平井佑之介・写真/文、文一総合出版)は、絵本としてはもちろん、サケのことを知る図鑑として、物語として、そして美しい写真集としても楽しむことができます。
シロザケたちの静かで熱い、脈々と受け継がれてきた命のつながりを垣間見ることができる素敵な1冊です。
彼らの未来をどうしたら守れるのか、身近な環境を考えるきっかけにもなります。
岩魚曼荼羅 神秘のイワナ図鑑│佐藤成史(著)
『岩魚曼荼羅 神秘のイワナ図鑑』(佐藤成史・著、つり人社)。
タイトルからしてただならぬ雰囲気を感じるこの本。巻頭ページには、全国各地の渓流にすむイワナの仲間写真満載の曼荼羅図が!
日本全国に生息するイワナたちの綺麗な写真の数々にイワナを語るその筆致も相まって、どこはかとなくイワナから神性が感じられるようです。
イワナ類における最新の学術的な知見と、著者はじめ全国の釣り人から集められた釣果写真により彩られた、イワナことはじめにおすすめの1冊です。
琵琶湖の魚類図鑑│藤岡康弘、川瀬成吾、田畑 諒一(編)
岐阜や沖縄、北海道などその土地でみられる魚のみに焦点を絞った図鑑は、SAKANA BOOKSでも根強い人気があります。地域を絞るからこそできる、地方名やより詳細な分布域の掲載、近似種との見分けや地理など、解像度の高い解説も魅力のひとつ。
そんななか今年出版されたのは、『琵琶湖の魚類図鑑』(藤岡康弘、川瀬成吾、田畑 諒一・著、サンライズ出版)。
琵琶湖に生息する魚類はもちろん、貝類や甲殻類も掲載。そして古来より淡水の魚食文化が根付いている琵琶湖だからこその、食文化や漁法までまとめられた充実の内容です。
ご当地図鑑が好きな方のみならず、琵琶湖に行く機会がある方はぜひこちらで予習してみてはいかがでしょう? 琵琶湖の見方が変わること間違いなしです。
きっかけはコイの歯から 魚と米と人のかかわり│中島経夫(著)
魚の喉(のど)に歯があることを知っていますか?
コイ科魚類の咽頭歯(いんとうし)研究を通して、魚類学、古生物学、考古学、さらには漁撈と稲作……と様々な視点から、筆者が魚と米と人の関わりを紐解く過程を追体験できる一冊が、『きっかけはコイの歯から 魚と米と人のかかわり』(中島経夫・著、サンライズ出版)。
日本における稲作とコイ科魚類の歴史や関係が気になる方にはもちろん、琵琶湖をはじめとした淡水漁撈や、琵琶湖博物館での一般の方を巻き込んだ調査研究の過程など、魚と人の関わりや地域に根差した活動に興味がある方にもおすすめです。
ミルクの中のイワナ film book│Whole Universe Publications(著)
『ミルクの中のイワナ film book』(Whole Universe Publications・著、リバーウォーク)は、今年SAKANA BOOKSにて出版記念イベントを開催したこともあり、私たちにとっても思い出の一冊です。
ドキュメンタリー映画『ミルクの中のイワナ』公式フィルムブックということで、映画を観終わったあとに読むと一層理解が深まるのはもちろん、まだ映画をご覧になっていない方にもおすすめ。
監督や劇判音楽制作者はじめ出演者の方々、イワナや河川を守る活動をしている方々のインタビュー記事は読みごたえたっぷりです。
静かだけれど命にあふれる渓流に浸かっているような気持で映画関係者の想いを追体験できる、美しい装丁も魅力のひとつです。
映画ファンやイワナ好きさんが満足する情報はもちろん、漁協や釣り、そしてイワナをとりまく河川環境の未来を考えるヒントがちりばめられています。
長良川のアユと河口堰 川と人の関係を結びなおす│蔵治光一郎(編)
川で生まれたアユの仔魚は、お腹の卵黄がなくなる前に、餌が豊富な海へ流下しなければ生き残れません。
しかし、そこに立ちはだかるは河口堰(かこうせき)。河口をまるでダムのようにせき止めて貯水するそれは、人々の暮らしを豊かにするものとして建設されますが、海と川のつながりが断絶されることで汽水域が失われるなど環境面への影響もあります。
そんな河口堰のことを学べる1冊が、『長良川のアユと河口堰 川と人の関係を結びなおす』(蔵治光一郎・編、農山漁村文化協会)。
河口堰ってなんだろう……と読み始めた読者を長良川流域の世界へいざなうのは、小瀬鵜飼をはじめとした川漁師たちの語り。川の恵みが人々の暮らしや文化に寄与しているのか、連綿と受け継がれた自然が河口堰建設後いかに急速に失われつつあるかが伝わってきます。
次章以降をひも解くとアユの生態やその放流事業、河川環境の変化、さらに河口堰とその運用や未来への考察など専門的な論考が並びますが、どれも不思議と自分事のように読み進めることができます。
それは冒頭の川漁師たちの語りが切実で真に迫るものだからなのでしょう。河川環境を未来にどう受け継ぐか、私たちへ問う1冊です。
生き物係のための淡水魚飼育ガイド│渡辺昌和(著)
『生き物係のための淡水魚飼育ガイド』(渡辺昌和・著、緑書房)は、特に学校で魚を飼育している先生や生徒さん必見! 淡水魚飼育の分かりやすく丁寧なガイド本です。
「水槽に持ち込んだものは、絶対に最後まで面倒を見ること」を念頭に、安全で楽しい飼育のノウハウを掲載しています。
飼育方法はもちろん、飼育難易度の解説も充実した図鑑パート、野外で採集した魚の運搬方法まで掲載。多方面から実用的な1冊です。
川のサカナたちの新たな姿を発見!
淡水魚にはさまざまなドラマがあります。
海に出て川に還るサケや、全国各地に生息するイワナ、日本人の原風景として存在するアユ……。
2025年はこれらのサカナについて学び、会いに行ってみてはいかがでしょうか。
(サカナト編集部)