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試合に出られないから休むという息子、休むとますます出れないのではと不安と焦りで悩みます問題

サカイク

ある時突然スタメン固定の方法になり、息子は試合に出られなくなった。「試合に出られないから行きたくない」と先日は公式戦を休んだ。

出席率が悪いとますます出れないのではという不安と焦り、上の子もいるのに出場しない息子のサッカーに何時間も拘束されるのもしんどい...... というお悩みをいただきました。

スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、先日報道された「全国大会で2割が出場機会なし」という情報も踏まえ、アドバイスを送ります。
(構成・文:島沢優子)

 

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<強豪チーム加入も周りとレベル差があって選抜から外されそう、前より勢いもないしどうしたらいいの問題

 

<サッカーママからのご相談>

1年生から地元のサッカーチームで始めて、今年度4年生になりました。

技術の伸びはイマイチですが、始めてからはずっと夢中で楽しんでやっていました。

でも2年生の冬の試合から突然公式戦にはスタメンのみ試合に出すという形になり、3年生のときは1年間のうち3回骨折やら捻挫やらでギプス状態が続きました。

スタメンと違い自分で考えて動くと怒られ、指示通りに上手く動けなくても怒られ、チームなのでスタメンしか出さない試合でも「全員で行きましょう」と言われ、ただ見てるだけなのが辛いようです。

ただ楽しくサッカーがやりたい、試合がやりたい、でも出席率が悪いと試合に出してもらえない、やりたいポジションが出来ない、サッカーのチームとはそういうものなのでしょうか?

スポーツの世界は全くわからなくて......

最近は友達と遊ぶことが楽しいみたいで、休みたいということが増えました。でも休むと試合に出れないかもという不安と焦りで、ついつい「また休むの!?」と問い詰めてしまいます。

先日も公式戦がありましたが、「行っても出れないから行きたくない」と休みました。

応援も大事、人のプレーを観るのも大事なのはわかります。でも私も試合に出ない息子の為に4時間も5時間も付き合うのは正直しんどいです。年子の姉を放っておくのも嫌ですし、夫は土日休みですが子育てにはほぼ協力してもらえません。

チームを辞めると試合の機会がなくなってしまうし、でも練習や試合に参加するのは息子なので無理強いも出来ず悩んでいます。

運動の機会として始めたので、ゆっくり続けて欲しい気持ちと、出席率を考えると頑張って欲しい気持ちと複雑です。どうしたらいいのでしょうか。

 

<島沢さんからの回答>

ご相談ありがとうございます。

お母さんに3つほどご提案があります。ただ、その前にこのお話はコーチの皆さんにも伝えたいので少しだけ書かせてください。

 

■試合に出てる子の親たちに「一丸となって」と言われてもしんどい気持ちは理解できる

お母さんが書かれた「行っても出られないから行きたくない」と息子さんが休んだことも、「応援も大事、人のプレーを観るのも大事なのはわかります。

でも私も試合に出ない息子の為に4時間も5時間も付き合うのは正直しんどい」というお気持ちも、もっともだと思います。

指導者や試合に出ている子どもの親たちは「全員で勝とう」とか「一丸となって応援してひとつになろう」などと全員参加を促します。かつて一時期ではありますが、私もそういう親でした。今思えば本当に恥ずかしい限りです。

その後、中学生になってジュニアユースクラブでプレーした息子はスタメンではありませんでした。ずっとずっと出られません。付き合うしんどさを経験しました。

ただ、本人は仲間もいましたし、参加することに意味を見出して続けていました。中学生なのでそのあたりは自分でコントロールできたのだと思います。

しかし、息子さんは小学生です。しかも、私の息子が少年サッカーをしていた十数年前とは時代が違います。

 

■全国大会の調査でわかった「試合に出てない子が2割」の事実

今は日本サッカー協会も出場機会の均一化を呼び掛けています。先日、朝日新聞で、12歳以下の全日本選手権で選手登録した小学生749人のうち、18.56%にあたる139人が未出場だった事実が報じられました。

すなわち2割が1分も試合に出ずに遠い鹿児島(開催地)から家に帰って行ったということです。日本協会の指導者養成ダイレクターの「危機感がある。子どもたちにはプレーする権利がある」とのコメントが出ていました。

日本の小学生の頂点を目指す全国大会では2割でしたが、もっともっと山のすそ野の市や町は、試合に出られない子どもは2割どころではないはずです。

この子どもたちに試合出場機会を平等に与えない実情は、世界の潮流に逆行します。記事によると、サッカーの本場、欧州ではすべての子になるべく等しくプレー機会を与えることが常識です。

デンマーク連盟の担当者は「様々な研究から、どの子がトップに到達するかは分からないのが明確だ。だから、我々は全員に投資する」と話し、スイス連盟の担当者も「遅咲きの子もいる。(国の競技力を高めるために)潜在性を持った人材を見逃す余裕はない」と語ったと書かれていました。

お母さんは「サッカーのチームとはそういうものなのでしょうか?」と書かれましたが、本来は違います。

日本の育成は世界と逆行しているのです。ただ、そのことがなかなか浸透しません。そのうちに子どもはどんどん子どもではなくなっていく。サッカー界の進化を待ってはいられません。

加えて「自分で考えて動くと怒られ、指示通りに上手く動けなくても怒られ」とあります。お母さんだけの話しか聞けないので客観的な意見は言えませんが、真実であれば通わせないほうがいいと思います。

 

■アドバイス①今のチームを辞めて、全員出場できるチームを探そう

したがって、そんなチームはやめましょう。

これが1つめの提案です。全員試合に出られるチームを探しましょう。

もし見つからなかったら、スクールだけ通ってもいいかと思います。土日の試合はないけれど、今のチームに行っても「彼の試合はない」わけです。

したがって、今のチームは「やめたらどうかな?」と尋ねてみましょう。チームはやめるけれどサッカーをやめない。それができる方法を一緒に考えてあげてください。

 

■アドバイス②まだ4年生、何か一つに決めることはないし、何もしないという選択もあり

2つめ。サッカーがなくても友達と遊んだり、楽しく過ごしているとのこと。

息子さんには、サッカー以外にもちゃんと居場所があるようです。まだ4年生です。何かひとつに決めることはありません。

他のスポーツをしてもいいし、何もしなくてもいいのです。いくつかある選択肢の中から息子さんに選ばせましょう。

その際、お母さんの意見は言っていいと思います。お姉さんもいるということなので、お母さんも無理せず過ごすことを優先してください。

  

■アドバイス③「家族」というチームであなた自身が楽しく快適になることを考えてみて

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

最後の3つめは、お母さんが所属するチームのことです。それは家族というチームです。

お父さんが子育てにまったく参加しないと書かれていました。理由や背景、またそのことに関してお母さんがどう感じているのかは実際わかりません。しかし、ご相談文からは、旧型の家庭は妻に任せっぱなしで仕事をするだけの夫に映ります。

今の状況でよいのか、ご自分一人ではなく周囲の信頼できる人や相談機関などで事情を説明し、どうしたらお母さんが楽しく快適に子育てを含むご自分の人生が楽しめるのかを一度考えてみてはいかがでしょうか。

 

■指導者へのお願い 選手に成長をもたらす指導者を育成年代でも増やしてほしい

最後に。読んでくださった指導者の皆様へ。

選手に成長をもたらす指導者を、少年サッカーでもっと増やす必要がありませんか。子どもは減る一方です。

2024年度の18歳人口は100万人を越えていますが、24年に生まれた子どもは約72万人です。であれば18年後は72万人です。しかも、出生数は今のところ年率5%減なので、例えば2030年ごろには50万人しか生まれない計算になります。

この超少子化社会でサッカーを選んでくれた子どもを、もっと大事にしませんか。

沈黙は賛同です。隣りのクラブに「もっと大事にしようよ」とぜひ声をかけませんか。

 

島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産 彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。

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