都会の友人に〝下品な田舎料理〟を出した母 息子は思わず怒ったが...若人たちを魅了した「新潟のおもてなし」
あまりに身近にあったから、その魅力に気づかなかった――。皆さんにはそんな体験があるだろうか。
新潟県で生まれたとあるXユーザーは、東京都内の大学に在学中、まさにそれを痛感したらしい。
その人、ビバ松(@vivamatu)さんが2025年6月5日に投稿したのは、お皿に盛られたとうもろこしと山盛りの枝豆の写真。蒸し暑さを感じる今日このごろ、冷たいビールで一杯、といきたくなる光景だ。
......それにしても、枝豆の量が半端ではない。この写真とともに、ビバ松さんは枝豆にまつわる思い出を語っている。
それは大学生だったビバ松さんが、関東の友人たちを実家に連れてきた日のことだ。ビバ松さんの母親は、若人たちにザルに盛った枝豆を出してあげたという。
「田舎じみたもんでなく気の利いた洋菓子でも出せ」(ビバ松さんの投稿より、抜粋)
ビバ松さんは、母にそう怒った。では、出された側の反応は? それは、ビバ松さんにとって思いもよらぬものだった。
「皆奪い合うように食べていた」
「戻ったら皆むさぼり食ってて。こんな美味い豆は初めてだと。親はわかってるんだなと思いました」(ビバ松さんの投稿より、抜粋)
関東から来た大学生たちは、ビバ松さんが「田舎じみたもん」と感じたザル盛りの枝豆のおいしさに、打ち震えていたのだ!
ビバ松さんのポストには3000件近い「いいね」(6月10日夜時点)が寄せられ、新潟県民と思われるXユーザーからこんな声が寄せられている。
「枝豆は新潟県民の夏のソフルフード、 枝付きを買ってきて茹でまくる」 「ガチで他んとこの枝豆と全然違う、茹でてる時からすげーいい匂いするし味も甘みと旨味がすごい そんでそれをザル一杯に食うのが最高の夏」 「新潟あるある 枝豆はザルじゃないと満足できない」 「ずっと新潟にいたら、これが普通で気づかないことなんだよね」 「これぞ新潟のおもてなしですね」
新潟県民の共感をがっちり掴んだ、投稿者・ビバ松さんは、〝新潟島〟育ち。新潟島というのは、信濃川河口に囲まれた、新潟市のど真ん中(新潟市中央区)の俗称だ。
Jタウンネットの取材に応じ、投稿の体験をしたのは1995年頃だったと振り返る。研究室メンバーと車で東北方面へ向かっていたところ、同行者が皆新潟に行ったことないというので、途中小休止で急遽実家に立ち寄ることになった。
「私としては、新潟も東京にひけをとらない都会だぞというお国自慢をしたかったのですね(若い)。 ところが母がおもてなしのつもりで枝豆出してきて。新潟はざるで山盛りで出すのですが、お茶うけというより手づかみでもりもり食べる日常のおかず扱いです」 「母が引っ込んだところで、都会の若者にこんな下品な田舎料理だして! と説教したのです。で、戻ったら、皆奪い合うように食べていたと。やたらうまい、香りがよい、このボリュームは初、止まらない、お土産に買って帰るとか言う始末でした」(ビバ松さん)
えだまめ県、新潟。
実は、新潟県は全国でも有数の枝豆産地だ。
農林水産省・総務省統計局の調査で、新潟県の枝豆の作付面積・消費量は全国1位。JA全農にがたの公式サイトによれば、枝豆が一番成長する時期の日照時間が長いため、たっぷりと日光を浴びて糖分をしっかり蓄積した旨味のある枝豆が育つという。品種も豊富で、県内の生産者同士もよりおいしい枝豆を作るための努力を重ねているそうだ。
しかし出荷量は全国7位と順位を落とす。これは「あまりに美味いので自分のところでたべてしまうから」という説もあるらしい。実際、農林水産省の「令和5年産野菜生産出荷統計」を見ると、新潟の枝豆の収穫量と出荷量の差は、1000トンもあった。
ただ、大学時代のビバ松さんには、枝豆が新潟名物だという認識はなかった。近所の農家がお裾分けで持ってくるようなありふれたものなのだったという。それを大喜びで食べる友人たちを見て「きょとんとしましたよ」とビバ松さん。
しかしその後、東京の居酒屋で枝豆を食べた時に、自分でも新潟の枝豆のおいしさを痛感したそうだ。ついでに、量の多さも。
「新潟の枝豆は、なんでうまいんですかね。豆系は採った瞬間から鮮度がおちていくという方がいましたが、これなのかと。 朝取りで枝付きを買い、そのまま房をもぎ、塩もみしてさっとゆでるだけ。とてもおいしいです」(ビバ松さん)
ビバ松さんのお母さんがそんな新潟の枝豆のおいしさを、若人たちに伝えようとしてから、約30年。ビバ松さん自身も当時の振る舞いは若気の至りだったと反省し、今では率先して地元の産物のPRに努めているそうだ。
そして2025年6月4日、新潟県も県産えだまめをさらに広めるために動き出した。
「えだまめ県、新潟。」――そんなキャッチコピーを携え、県外に向けてもアピールを行っていくという。
新潟で、採れたての枝豆をザル盛りで食す。一度は経験してみたいものだ。