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60代ふつうのおばさんが資産家シニア男性を虜にした「2つのモテ」【後妻業の女・筧千佐子#1/この世はカネと男!女犯罪者調書】

コクハク

筧千佐子死刑囚(2014年撮影)/(C)日刊ゲンダイ

「いつまでも可愛い女性でいたい」「男性から大切にされたい」――誰もが思うことだろう。ところが、男性を狙って凶行におよんだ女犯罪者には、なぜか男性を魅惑する可愛い女性が多い。
 私は、女犯罪者の心理と魅力の秘密を研究するZINEを作りはじめて「男を捕獲するのは顔でも若さでもない」という驚きの事実を知ってしまった。
 例えば、「後妻業の女」として世間を驚かせた筧千佐子死刑囚(77)は事件発覚当時、60代のふつうのおばさんだったのだ!

【この世はカネと男!女犯罪者調書】

後妻業の女・筧千佐子死刑囚#1(高齢男性4人への殺人、強盗殺人未遂罪で死刑判決)

 結婚を語って男性に近づき、遺言を書かせてから相手を殺して財産を乗っ取る後妻業の女。2013年末の京都の夜、「夫が倒れている。息をしていないみたい」と、前月に結婚したばかりの妻・千佐子から119番通報が入った。

 救急隊員が駆けつけた時には75歳の夫はすでに死亡。外傷はなく、司法解剖すると体内から青酸化合物が検出された。女の身辺で10人の男性がなくなっていること、合計10億円を超える資産を手にしてきたことが判明、2021年に死刑宣告を受けた。

  ☆  ☆  ☆

狩り場は結婚相談所

 疑惑の妻・筧千佐子にTVメディアが群がって囲み取材を行ったとき、世間が驚いたのは、彼女がすでに67歳のおばさんだったことだ。より多くの男性と知り合うために、千佐子は複数の結婚相談所を利用していた。

 相談所で作ったPRデータには、お花のコサージュをつけて微笑んだ写真に、趣味は読書と料理、性格は気さくで明るく、尽くすのが好き、家のことをするのは苦にならない、などと書き添えられていた。

 誰もが振り返る美魔女というわけではなく、おとなしい顔立ち。でも、年齢の割に髪も肌もきれいで、身なりも小綺麗。「こんなきちんとした人が、お金目当てに人を殺したりするかなあ?」という印象だ。

 ところが事件について質問されると、立て板に水のごとくペラペラしゃべる。用意されたシナリオを一人で読んでいるみたいに、相手の反応を見ないで一気に話そうとする。「やはりこの人、やってるな」と誰もが感じた。

理想の女房を演じて

理想の女房だった(写真:iStock)

 パートナーを求めるシニア男性には共通の特徴がある。特に資産を持っている男性はプライドが高く、家事やご近所づきあいが苦手だったりする。相談所やサイトに登録しているシニア男性の多くは、心の底では若くてきれいな女を好む。

 でも、現実には若い女性は男に対して手厳しいから、怖い。そこで、やさしくて家事をやってくれそうな女を選ぶことになる。

 そんな孤独なシニア男性のニーズを、千佐子はしっかり把握していた。派手すぎない程度におしゃれ、近隣の人とも気さくにやり取りできる社交性があり、料理がうまく、家もゴミ屋敷にならないように片付けてくれる理想の女房だ。

 その一方で千佐子は男性の家に住みつかず、数日ごとに賃貸マンションに帰っていた。こうすれば複数の男性と親密になり、後妻業のかけもちができる。

 千佐子のモテの秘密はもう一つあった。性的に男性を拒絶しないことだ。

私はセックスもできる、とメディアで発言

夜のことも…(写真:iStock)

 日本人女性の平均閉経年齢は50.5歳、そのあたりからセックスがしんどくなったり、挿入が痛くなったりする人は多い。

 だが千佐子は「私は男好きってわけじゃないよ」「体が丈夫だから夜のこともできる」と、笑いながら取材に答えている。60代後半になっても、千佐子にはそんな悩みはなかったのだろうか。

 女性の体はデリケートだ。でも、「したくないのに求められる」「乾燥ぎみで痛い」というときには、便利な方法がある。

 ドラッグストアで売っている乳酸菌入りの膣内洗浄剤を行為の前に膣内に入れておくと、時間をかけて少しずつ出てくるため、自然にうるおったのと同じ状態になるのだ。

 ゼリーやローションのようにばれないし、PHバランスを壊さずに内部を洗って匂いを消してくれるので、もしかしたら千佐子も使っていたかもしれない。

 男性は、加齢で射精や勃起が起きなくなっても、女性の体に触れたがる人が多いそうだ。「いい年をして!」「キモイ!」と怒らず、「ええよ」と笑って応じてくれる千佐子は、シニア男性にとっては菩薩のような存在だったのだろう。

完璧な殺害のルーティン

サプリと偽って(写真:iStock)

 殺意などおくびにも出さず、明るく楽しい愛の生活を演出する千佐子。しかし、その殺害方法は冷酷そのものだ。青酸化合物をカプセルに詰め、サプリだと称して飲ませる。

 胃に入った青酸化合物は、胃酸と反応して青酸ガスを発生、このガスが肺に達して全身の臓器細胞が低酸素になって壊死する。

 手を汚さず、血も見ずに確実に命を仕留める。胃に到達するまでの時間差が千佐子のアリバイとなり、事件性が疑われることはなかった。

 被害男性の中には、千佐子との生活を「人生で今がいちばん幸せだ」と語っていた人もいた。そんな男性たちの命をためらいなく奪うなんて、いったいどんな陰惨な人生を送ってきた女なのか。

 …と思いきや、青春時代の千佐子には、そんな毒婦の影はまったくなかったのだ。

【#2へつづく:千佐子18歳、最初の挫折「女に学歴はいらない」】

【参考文献・映像】

・「筧千佐子 60回の告白 ルポ・連続青酸不審死事件」(安倍龍太郎/2018年/朝日新聞出版)
・「全告白 後妻業の女: 「近畿連続青酸死事件」筧千佐子が語ったこと」(小野一光/2018年/小学館)
・「脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体」(中野信子/2014年/幻冬舎新書)
・「サイコパス」(中野信子/2016年/文春新書)
・「ザ!世界仰天ニュース 連続殺人犯・筧千佐子…夫・交際相手を次々毒殺!カメラ前で嘘並べる」(日本テレビ/2023年8月29日放送)
・「後妻業の女」(大竹しのぶ主演・鶴橋康夫監督/2016年/東宝)
・「関西連続青酸殺人事件 筧千佐子死刑囚が泣きながら語った出生の秘密」(日刊ゲンダイDIGITAL/2022年3月13日配信)
・「「後妻業」で高齢男性を次々と籠絡、心の隙間に忍び込む毒婦の手口」(ダイヤモンドオンライン/2018年7月27日配信)
・「筧千佐子被告、死刑確定 被害者に「幸せ」といわしめた骨抜きテクと秀才少女時代」(週刊女性PRIME/2021年7月7日配信)

(神田つばき/作家・コラムニスト)

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