第二期、ライヴ・バンドとしての凄み! “Damian Hamada’s Creatures 魔界小学校 修学旅行〜魔界巡礼〜
血のように真っ赤な照明で不気味に浮かび上がるのは、バックドロップとして掲げられた魔法陣のごとき紋章。あたりには交響曲も流れ、儀式を待つ者たちは誰一人として口を開くことなく紋章を拝み、厳粛な雰囲気が会場を包み込んでいた。儀式の始まりが近づいた頃、会場の空気を切り裂いたのは姿を見せぬシエル伊舎堂(vo)の声。集った者たちを大歓迎し、遠慮せずに声援を飛ばしてほしい…という。また“D.H.C.コール”が666デシベルに達したら、儀式は開幕するというではないか。 先ほどまでの雰囲気はどこへやら。シエル伊舎堂のお導きにより、集った者たちから起こり続けるのは、もちろん“D.H.C.コール”だ。常軌を逸したように声が大きくなっていく中、声量が666デシベルを超えた瞬間だった──流れる交響曲は「聖詠」へと変わり、真っ赤な照明はブルーへと変化。その幻想的な光を浴びながらステージに登場したのは、アックスKAZUMA(g)、リリス一ノ瀬(b)、シエル伊舎堂、RENOファウスト(g)、KAZAMIクロウリー(dr key)。人類への悪魔による洗脳をより強固なものにすべく改臟されたシモベ=第二期のDamian Hamada’s Creaturesである。 魔暦26(2024)年6月、第二期D.H.C.にとって初の単独ツアー“Damian Hamada’s Creatures 魔界小学校 修学旅行〜魔界巡礼〜”を開催。各地を巡る旅の3箇所目となったのが、この6月8日(土)Zepp Shinjuku(Tokyo)のライヴ。
呼吸の合ったプレイでみせたバンド感の高さ
KAZAMIクロウリーが銅鑼を轟かせた直後、照明が一気に光量を強める中、D.H.C.が今宵の一発目に選んだのは『審判の日』。力強いイントロと共にシエル伊舎堂が煽りたて、フロアからの歓声がイントロを激しく演出。アックスKAZUMAのキレのいいリフに、リリス一ノ瀬とKAZAMIクロウリーがキメを入れ、RENOファウストもリフでハーモニーを刻む。重厚にしてタイトなD.H.C.のバンド・サウンドは、オーディエンスの興奮と高揚を一気に頂点まで引き連れていった。
リリス一ノ瀬
KAZAMIクロウリー魔暦25(2023)年に開催したデーモン閣下とのカップリング・ツアー“地球魔界化計画”で、人間界に姿を現した第二期D.H.C.。華のある存在感と実力の高さでヘヴィ・メタル・ファンを刺激しまくったわけだが、そこから時間を重ね、今ここで現メンバーが発揮するのはバンド感の高さ。呼吸の合ったプレイは各楽曲の持つスリリングさもドラマティックさもイキイキと引き出す。そして、演奏にただ終始するのではなく、激しいライヴ・パフォーマンスも繰り出す改臟人間たち。そのたびに起こる声援と歓声は、メンバーのヴォルテージをさらに高めることになり、テクニカルなプレイをよどみなくキメまくる。興奮の相乗効果を起こしながら、ライヴ・バンドとしての凄みも放ち続けるD.H.C.がステージにいた。
「東京、最高ですよ。でも、まだまだ盛り上がれる、と私は知ってます。私たちは死ぬ気です。みなさんも死んで帰ってください!」(シエル伊舎堂)
シエル伊舎堂
ライヴへのすさまじい気迫を伝え、3曲目『悪の華』へ突入。フロアではメロイック・サインとコブシがつき上がり、悪の華畑が広がっていく。曲のエンディングでアックスKAZUMAとRENOファウストが華麗にツイン・リードを決めたと思えば、そのまま展開されたのはギター・バトルだった。RENOファウストがロング・トーンからクラシカルな速弾きフレーズで酔わせ、今度はアックスKAZUMAがピック・スクラッチから抑揚あるフレージングで攻める。それを受けてRENOファウストは、敢えて高崎 晃を思わせるフレーズで高崎ファンのアックスKAZUMAを燃え上がらせていく。となればアックスKAZUMAは両手タッピングで応酬。ここから気持ちをひとつに2名でキメる高速フレーズは、まさに狂宴といった様相だ。オーディエンスの興奮を代弁するようにKAZAMIクロウリーが銅鑼を何発も響かせる中、次の曲へと続いていった。
アックスKAZUMA
RENOファウスト
陛下顕現、トリプル・ギターによる厚いハーモニー
またライヴが中盤を迎えたころ、鳴り響いたのは不気味な旋律。そして起こるどよめき。メロイック・サインを掲げながら顕現したのはダミアン浜田陛下である。ヒョウ柄のSTシェイプ・ギターを手にした麗しい陛下の御姿に歓喜するオーディエンス。皆の者に陛下とD.H.C.が浴びせかけたのは聖飢魔Ⅱの『魔王凱旋』だった。さらに続く『天使と悪魔の間に』では陛下もギター・ソロを披露。ステージ中央で威風堂々たる御姿で弾く陛下に心を奪われ、悪魔教を崇拝する熱心な信者へ変貌するオーディエンスでもある。
「諸君、私だ。そう、魔王、ダミアン浜田である。盛り上がっておるな、トウキョウ! このキョウというのは“狂う”という字の“東狂(東京)”である」(ダミアン浜田陛下)
ダミアン浜田陛下話し始めるとコミカルな一面もにじみ出てしまうが、それは人間を油断させるためにわざと演じているのだろう。けして陛下の地が出ているわけではない。自身たちのラジオ番組のコーナーも絡めたトークなど、笑いという魔力で四方八方から人間を浸食し続ける陛下でもある。陛下の加わった『美女と魔獣』や『魔界美術館』では、トリプル・ギターによる厚いハーモニーや掛け合いのソロ・パートもあり、練り上げたフレージングで官能的アンサンブルを聴かせるなど、作曲へのこだわりもプレイで垣間見せた。 『魔界美術館』のエンディングではメロイック・サインでコール&レスポンスも起こしながら陛下はステージから去り、再びメタリックにD.H.C.はライヴ後半を攻め立てる。冒頭で“死ぬ気”と宣言したシエル伊舎堂の言葉どおりだ。フロアは最高気温を更新し続けるがごとく、D.H.C.のサウンドと曲に場内の熱狂は増していった。 そしてアンコール──『天空の放浪神』で幕を開け、「Black Swan」で飛翔感も描き出したD.H.C.。アンコール3曲目の『嵐が丘』ではダミアン浜田陛下が再降臨し、陛下、RENOファウスト、アックスKAZUMAの流れでソロ回しも炸裂させ、そのフレーズに合わせて大海原のように激しく揺れるオーディエンス。その熱狂ぶりも含め、世仮で教員だった陛下から100点満点をもらえるライヴであり、また6月6日に御発生日を迎えた陛下に、シエル伊舎堂の音頭で祝福の万歳六唱も起こるなど、結びつきをより深めた一夜でもあった。
Damian Hamada’s Creatures “Damian Hamada’s Creatures 魔界小学校 修学旅行〜魔界巡礼〜” @東京Zepp Shinjuku 2024.6.8 セットリスト
1. 聖詠(SE)〜審判の日 2. Babel 3. 悪の華 〜Guitar Battle〜 4. Walküre 5. Eternal Sinner 6. 夢幻の扉〜The Darkest Hope 7. SE〜魔王凱旋〜天使と悪魔の間に 8. 美女と魔獣 9. 魔界美術館 10. Tempest 11. The Beginning of the End [encore] 12. 天空の放浪神 13. Black Swan 14. 嵐が丘
(レポート●長谷川幸信 写真●山田晋也)