「ハッキングで交通インフラ壊滅」「事故多発で死者数千人」サイバーテロか国内陰謀か?Netflix『ゼロデイ』
もし特大のサイバーテロが起こったらアメリカはどうなる?
Netflixのドラマシリーズ『ゼロデイ』がついに配信。かねてから話題を呼んでいた本作だが、やはりロバート・デ・ニーロのドラマ初主演というトピックが大きかった。どうやって彼を口説き落としたのかも気になるところだが、自身が納得すればコメディでも何でも出てきたデ・ニーロなので、本作への期待値を証明したとも言える。
デ・ニーロが元アメリカ大統領を演じる本作はタイトル通り、ソフトウェアの脆弱性を突いた<ゼロデイ攻撃>にさらされたアメリカを舞台に繰り広げられるサイバー攻防戦を描く。あらゆる通信インフラが乗っ取られたことにより全米の交通機関で大事故が発生し、デ・ニーロ演じるマレン元大統領が対応を求められることになる。
なぜデ・ニーロが“元大統領”の主人公を演じるのか
Netflixにはオリジナルのサスペンス作品がたくさんあるが、本作はその中では地味な部類になるだろう。なにしろ高齢なデ・ニーロなので主人公としての派手なアクションは期待できない。しかし、そこにこそデ・ニーロが起用された大きな理由があって、色んな意味で信頼が失墜した最高権力者のポジションに代わる、どっしりと存在感のある“リベラルな大物”が不可欠だったのだ。
冒頭からパニックに陥るアメリカをざざっと描き、早々に本題へと入る。ただし尺の限られた映画のようにすぐさまドタバタ展開には持っていこうとせず、“パニックの渦中にはいない人たち”が原因や犯人を突き止めるべく対策に動き出すまでを、じっくりねっとりと描いていく。ゆえに序盤は会話劇がメインとなるが、政治サスペンスが苦手でなければ退屈せず惹き込まれていくだろう。
あの人が元ネタ? 気負わず観られる政治サスペンス
デジタルを司るはずの公人に度々ガックリさせられてきた我々としては高齢のマレンに何ができるのか首を傾げてしまうが、なぜ周囲が引退した彼を頼るのか、その“役目”はすぐに理解できる。超党派の政治家として国民を団結させ、内輪揉めを極力回避しつつ事件の解明に当たる……それができるのは信頼の厚かったマレンのほかにいない、というわけだ。
本作(に限らず近年の政治サスペンス)はトランプ政権を無視して観ることは出来ないかもしれないが、赤か青かを明確に描かないところに制作陣の意図があるようにも感じる。現大統領ミッチェルやマレンの娘アレクサンドラのようにポジション(とモデルになったであろう実在の政治家)が明確な人物もいつつ、ドラマチックな展開のためだけに分断を促すような描写は極力避けているようにも見える。
ロシアやテロリストなどの存在もチラつかせ、そんなベタな展開には陥らないであろうと視聴者に予想させつつ、じわじわと巨大な陰謀が浮かび上がってくる様子を見守ることになる。そしてやはり、デ・ニーロ演じるマレン自身の抱えた問題が物語を大きく揺さぶる。とはいえ政治サスペンスとしては重すぎず、各種ネタ元への風刺という意味ではかなりの遠慮も見られる。
デ・ニーロ以外のキャストも豪華で、マレンの元側近のカールソンを演じるのはジェシー・プレモンス。『シビル・ウォー アメリカ最後の日』での怪演とのギャップにニヤリとさせられるが、怪しさレベルではカールソンも負けていない。アンジェラ・バセット、マシュー・モディーン、ビル・キャンプ、ジョアン・アレン、ダン・スティーヴンス、クラーク・グレッグなどなど、実力派たちの競演も大きな見どころの一つだ。
Netflixシリーズ『ゼロデイ』独占配信中