【量子テレポーテーション】安全な通信を可能とする量子通信の実力は?【眠れなくなるほど面白い 図解 量子の話】
安全な通信を可能とする量子通信の実力!
現代の情報社会の発展は高速で安全な通信環境に支えられています。インターネットにつなげられない状況ではパソコンやスマホはかなり無力です。パソコン同士が通信できるおかげで、出張先でも会社のファイルを確認し、銀行口座のお金を移動したりとさまざまなことができます。逆に盗聴やパスワードが盗まれる可能性が高いと、誰もインターネットが使えなくなりこの便利さは一瞬で消えてなくなります。つまり、安全な通信というのがこの便利さのすべてを支えているわけです。
量子力学の原理を使って絶対に盗聴が不可能な通信方法や量子コンピュータ同士の情報のやり取りを可能にするのが「量子通信」です。中でも長距離通信で重要な技術の1つ「量子テレポーテーション」です。テレポーテーションはSF映画などで描かれる一瞬で月に飛ぶような瞬間移動です。ただし、量子テレポーテーションはものではなく情報を飛ばします。仕組みは少しむずかしいので大雑把に説明します。
量子テレポーテーションでは、例のもつれバナップルペア(PART1-6)が活躍します。アリスとボブがそれぞれ地球と月でペアとなっているバナップルを持っています。地球にいるアリスがバナップルと送りたいフルーツ、たとえば「イチゴ」を一緒にミキサーにかけると混ざったフルーツはなんとオレンジに。月にいるボブに「オレンジになったよ」と電話します。ボブは自分のバナップルだけをミキサーにかけますが、手元には「オレンジ=3秒、モモ=5秒、マンゴー=8秒」といったレシピがあります。地球ではオレンジが出てきたので、バナップルを3秒間ミキサーにかけてみると、ミキサーには「イチゴ」が出てくるのです。ここではイチゴでしたが、オンベリーやマンジといった「量子重ね合わせフルーツ」も送ることができます。理屈がわからない魔法のような話なのですが、実は科学者にとっても量子テレポーテーションはマジックのようです。
離れた量子コンピュータ同士にミキサーを設置すると、量子コンピュータ同士で量子フルーツの
通信が可能になります。同様にもつれバナップルペアをたくさん用意して多くの人に配れば、量子情報を誰にでも量子テレポーテーションで送れる量子インターネットが構築できるのです。
量子テレポーテーションではアリスの持っている情報(イチゴ)が消えて、ボブの持っているバナップルがイチゴに変身する。なので「もの自体」は送っていないけれど、バナップルを変身させることで、アリスからボブに好きなものが送れるようになっている。
現在のスーパーコンピュータはたくさんのパソコンを通信用のLANケーブルでつなげたものだね。それがいまでは量子コンピュータを同じようにたくさん量子通信網でつなげた量子インターネットの開発研究が進められているんだよ。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 量子の話』著:久富隆佑、やまざき れきしゅう