Netflixで好評配信中!『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』の見どころ
SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回はNetflixで配信中の『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん
新たな視点から見るガンダムを好評配信中!
今回ご紹介するのはNetflixで配信が始まった『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』です。最初の『機動戦士ガンダム』が描いた、地球連邦とジオン公国の戦争を「1年戦争」というのですが、『ガンダム』シリーズにはこの「1年戦争」を題材にしたスピンオフがたくさん作られていて、それぞれの時系列が重なっているところが面白いポイントです。
また今回は「Unreal Engine」というゲームエンジンを使ったCGで、手描き・セルルック3DCGなどと違いディテール感がすごく細かいのと、モビルスーツの重さを非常によく表しているところがおもしろいです。そこはやはり3DCGならではの表現ですね。
敗残したジオン軍の部隊を束ねているイリヤ・ソラリは、元バイオリニストの女性ですが、しっかり筋肉がついた体つきをしていて、体幹もしっかりした感じのキャラクターとして描かれています。そういうアニメの主人公はなかなか日本では見ないので、それも新鮮だなと思いました。
作品は東欧のクルジュ=ナポカ基地をジオン軍が攻め落とすというところから始まります。この第1話に「11月6日」という日付が出てきます。これは「1年戦争」の転機といわれるオデッサ作戦の前日なんです。オデッサ作戦とは、ずっと劣勢だった連邦軍が、ジオン軍が地球上に保有する資源採掘基地オデッサを奪還するための作戦です。
ここで勝利を収めた連邦軍は、その年(宇宙世紀0079年)の年末、12月31日に行われる宇宙要塞ア・バオア・クーでの決戦めがけて、快進撃を続けていきます。つまり11月6日は、ジオン軍が劣勢に転じるターニングポイントともなる日付なんです。
この作品のポイントは、ジオン兵の視点で描かれているところです。圧倒的な強さの「ガンダムEX」という機体がジオン軍を襲撃してきますが、「ガンダム超怖い、このままでジオン兵生き残れるの?」という話になっているんです。
ちなみに、ジオン兵の視点で描いたガンダム漫画は80年代にも既にありました。1984年にコミックボンボンで連載されていた『MS戦記』という作品で、単行本も『MS戦記 機動戦士ガンダム』などいくつかのタイトルで出版されています。原作は高橋昌也さん、漫画は近藤和久さんです。
近藤さんは自己流のアレンジでいろんなタイプのモビルスーツを描くことでも人気の方で、彼の初連載作だったように思います。ジオンの若い兵隊が1年戦争に参加して少しずつ偉くなっていき、オデッサ作戦でガンダムと初めて出会って一命を取り留めるという展開があります。オデッサ作戦は大きい作戦なので、いろんな作品の中で節目として登場する感じです。
3DCGで『ガンダム』世界を描いたOVA『MS IGLOO2 重力戦線』第3話「オデッサ、鉄の嵐!」でも、オデッサ作戦の様子が描かれます。こちらは連邦軍視点でオデッサ作戦が描かれ、陸戦強襲型ガンタンクの奮戦が描かれます。オデッサ作戦は架空の話ですが、時間とともにいろんな作品が作られるようになって、こんなふうに「そのころ、こちらではこんなことが」など、ひとつの事件をいろんな角度から見られる側面が出てきたんです。
例えば、OVAでは『機動戦士ガンダム第08MS小隊』という「1年戦争」中の東南アジアを舞台にしたシリーズがあるのですが、ここに出てくるユーリ・ケラーネというキャラクター、あるいはモビルスーツのグフカスタムも、今回の『復讐のレクイエム』に出てきます。『第08MS小隊』を知っていると「グフカスタムはこの頃、東南アジアですごい働きをしていんだよなー」などと思えるわけです。
CGで作られたリアルな映像にも注目!
『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』に出てくる「ガンダムEX」は、いわゆる陸戦型ガンダムのバリエーションのひとつという位置づけです。メカデザインは山根公利さんなのですが、肩のパーツの形など陸戦型を思わせる形状をしていて、その辺りも『第08MS小隊』と同じ時空を共有している印象が強まっているのも面白いです。
『ガンダム』シリーズは“戦争もの”としてももちろん面白くできているのですが、細かなディテールを知っているとなお面白い部分も多く、マニアホイホイという感じがしますね。