写真家が本気でおすすめのシグマ最強の標準ズームレンズ!?「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」 「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art」とも比較してみた【実写チャートレビュー】
発表された時から多くのプロ、ハイアマチュアが「ほしい!」と思ったであろう「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」。その性能を実写チャートで検証する機会を得ました。「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art」とも比較。
レンズラインアップの“要”標準ズームレンズの現状最高の答え
24-70mmF2.8か、24-105mmF4.0か問題に終止符を打つ1本
筆者個人としても、いまいちばん使いたい標準ズームレンズといえる「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」。多くのプロにとって長年の悩みが解決する1本です。
レンズ交換式カメラを購入して本格的に撮影を楽しむようになると、頭を悩ませるのが、自分のレンズラインアップです。メインで撮影する被写体によって違いはあるのですが、多くの場合、15mm前後の超広角から、200mm程度までの焦点域を埋めるように数本のズームレンズを組み合わせて用意し、これにプラスして超望遠レンズやマクロレンズなどの特殊レンズを使うのが一般的です。
そして、多くのプロやハイアマチュアは、できるだけ明るいズームレンズで15mm付近から200mmを構成しようと考えるので、16-35mmF2.8、24-70mmF2.8、70-200mmF2.8といったF2.8通しのズームレンズでこの焦点域を構成し、これを大三元レンズなどと呼んでいます。
これに対して、同じように15mm前後から200mm程度までを3本のF4.0通しのズームレンズで構成する組み合わせを小三元レンズなどと呼ぶのですが、この中心となる標準ズームレンズが24(28)-105mmと24(28)-70mmのF2.8よりも暗いのですが、ズーム倍率が高く、より望遠撮影に強いレンズになっていることが多いのです。
そのため、プロの多くは撮影する環境・条件に合わせて、大三元レンズや小三元レンズをさらに複雑に組み合わせて使用しています。明るさよりも標準ズームレンズの望遠性能が重視されるシーンでは24(28)-105mmF4.0、逆に室内などで暗く、レンズの明るさが重要視されるシーンでは24(28)-70mmのF2.8といった具合です。
写真:右から「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art 」「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art 」。当たり前ですが、それなりに大きいです。
ただし、室内でのアップの撮影(人物や料理、グッズなど)では、望遠端の105mmと70mmの差は、普通の方が思う以上に大きく、しかもレンズの明るさのF2.8とF4.0はちょうど1段分なのですが、シャッター速度やISO感度にすると倍の差となるので、多くのプロユーザーは多少高くても24-105mmのF2.8があればいいのにと思っていました。
そんな要望に応えて、2023年末に「Canon RF24-105mm F2.8 L IS USM Z」が発売されたのですが、実勢価格が約45万円、レンズの重量が約1.3kg。高性能と評判ですが、コストパフォーマンスと機動力の面から、プロの間でもさほど普及率の高いレンズにはなっていません。
「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」は、そんな状況のなか、2024年9月末に発売されました。広角端は28mmと、最近では多くの標準ズームレンズが24mmスタートなのに対して、やや弱さは感じるものの、F2.8通しで実勢価格は20〜25万円程度。重量はソニー Eマウント用で990gと1kgを切り、最短撮影距離はズーム全域で40cmと近接のアップ撮影にも強いレンズに仕上がっています。
今回はプロやハイアマチュアも頭を悩ます24(28)-70mmF2.8もしくは24(28)-105mmF4.0のどちらか問題を一気に解決する夢レンズともいえる「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」の性能について詳細に実写チャートでみていきましょう。
最高級標準ズームレンズとして十分以上の解像力を発揮
1段以上絞った「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art 」と同等レベルの解像力
筆者は半ばライフワーク的にレンズ性能を各種実写チャートでテストしており、筆者だけでは手に余る部分は、筆者のレンズテストの師匠である小山壯二氏(https://note.com/photo_ojisan)にフォローいただきながら、Amazon Kindleで「レンズラボ」や「レンズデータベース」といった電子書籍を出版しています。この電子書籍シリーズも150冊を出版、150本以上のレンズデータが集まりました。
このなかには、このところSIGMAが立て続けに発表・発売した最高峰レベルの性能を誇る標準ズームレンズ「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art レンズデータベース」(https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9QDBF14/)や「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art レンズデータベース」(https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9QC2R7N/)が含まれていますので、これらのデータと、最
新刊である「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art レンズデータベース」(https://www.amazon.co.jp/dp/B0DWV9D3RY/)を比較しながら、解説を行いたいと思います。
「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」広角端28mmの解像力チャート
「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」の広角端28mm、絞り開放F2.8とF3.2で撮影した解像力チャートの結果です。カメラはSony α7R III。
「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art 」広角端28mmの解像力チャート
「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art 」の広角端28mm、絞り開放F2.0とF2.8で撮影した解像力チャートの結果です。カメラはSony α7R III。
解像力チャートは、小山壯二氏のオリジナルです。カメラの有効画素数から画素ピッチを計算、その画素ピッチの約1.4倍の太さの線で書かれたチャートを基準値とすることで、有効画素数による解像力限界付近の描写がレンズの影響をどのように受けているか、観察できるように工夫してあります。
おかげで、画像数などが異なるカメラで撮影した解像力チャートのデータであっても、有効画素数による解像力限界付近の描写を観察することで、レンズの傾向が確認できるのです。ただし、本記事に掲載したチャートはすべて「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」のチャートも「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art 」と「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art」のチャートも同じSony α7R III、有効画素数約4,240万画素で撮影しています。そのため、ストレートに比較して問題ありません。
有効画素数約4,240万画素のSony α7R IIIで撮影した解像力チャートの基準値は0.8です。この0.8のチャートを基準に1つ大きな0.9と、1つ小さな0.7の描写の様子も確認すると描写の違いがわかりやすいと思います。
中央部分の解像力については「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art 」は開放F値がF1.8なので、約1段以上絞ったF2.8で比較していますが、「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」の開放F2.8の描写とほとんど差異はみられない、どちらも優秀な結果といえるでしょう。
周辺部分の解像力チャートの結果についても、基準となる0.8のチャートの描写はほとんどの変わらず、強いていうならズーム倍率の高い「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」のほうがやや解像感が高いとすらいえる結果です。
広角端の比較の対象とした「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art 」は、現在最高峰クラスの性能を誇る24-70mmF2.8の1つである「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art」と互角以上に性能を誇る標準ズームレンズです。「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」の広角端28mmは、そんな「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art 」と同等以上の解像力を発揮します。
「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art」を超えるシャープな望遠端
「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」望遠端105mmの端解像力チャート
「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」の望遠端105mm、絞り開放F2.8とF3.2で撮影した解像力チャートの結果です。カメラはSony α7R III。
「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art」望遠端70mmの解像力チャート
「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art」の望遠端70mm、絞り開放のF2.8とF3.2で解像力チャートを撮影した結果です。カメラはSony α7R III。
同じ開放F値2.8の標準ズームレンズである「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」と「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art」の解像力のチャートの傾向はかなり似たものになると予測していたのですが、思った以上に異なりました。
どちらも中央部分、周辺部分ともに基準となるチャートである0.8を十分に解像しています。しかし周辺部の描写がかなり異なります。「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」は周辺光量落ちの影響で周辺部のチャートのほうがやや暗くなるのですが、解像力チャートの描写自体は絞り開放からかなりシャープです。
これに対して「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art」の周辺部分のチャートは周辺光量落ちの影響は少ないのですが、やや紗がかかったような解像はしているのですが、ソフトな描写になります。
純粋な解像力という点では「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」のほうが優秀だといえるでしょう。ただし、女性ポートレートなどの撮影には周辺部に紗のかかるような描写が得られる「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art」が好みという方もいるかもしれません。
どちらにしても「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」はズーム比約3.75倍と高倍率でありながら、ズーム比約1.6倍の「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art 」や同約2.9倍の「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art」に匹敵する解像力を発揮することがチャートから読み取ることができます。すばらしい高性能です。
単焦点中望遠レンズを彷彿させる美しいぼけ
望遠端105mmのぼけはズームレンズのものとは思えないレベル
「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art」望遠端105mm玉ぼけチャート
「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art 」の望遠端105mm、絞り開放F2.8とF3.2で撮影した玉ぼけチャートの結果です。カメラはSony α7R III。
「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art 」望遠端45mm玉ぼけチャート
「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art 」の望遠端45mm、絞り開放F1.8とF2.0で撮影した玉ぼけチャートの結果です。カメラはSony α7R III。
「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art」望遠端70mm玉ぼけチャート
「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art」の望遠端70mm、絞り開放のF2.8とF3.2で玉ぼけチャートを撮影した結果です。カメラはSony α7R III。
「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art 」の実写チャートテストを行っていて、筆者がもっとも驚いたのは望遠端105mmのぼけの美しさです。ちなみに解像力や玉ぼけのほかに周辺光量落ち、軸上色収差、最短撮影距離といったチャートも撮影し電子書籍に掲載しています。
今回比較した「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art 」も「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art」も高級標準ズームレンズとしては十分以上にぼけの美しいレンズです。広角端については、それぞれ複数枚の非球面レンズを使っているにも関わらず、非球面レンズが原因といわれることの多い玉ぼけのなかに同心円状のシワが発生するタマネギぼけの影響も小さく、滑らかで美しいぼけが得られます。
また、望遠端についても、すべてのレンズで似たような傾向の美しいぼけが得られるのですが、特筆すべきは「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art 」の望遠端105mmのぼけの滑らかさです。5枚もの非球面レンズを使っているためか、タマネギぼけの傾向はゼロではありませんが、「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art 」や「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art」が小さな粒状のクレーターが並ぶ同心円状のシワが発生するのに対して「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art 」は細い同心円状のシワが観察されるものの、玉ぼけの中自体はかなりフラットになっています。
筆者の経験からいえば、単焦点のポートレートレンズやマクロレンズに近い玉ぼけの傾向で、ズームレンズとは思えないレベルの滑らかな玉ぼけが観察されるのです。また、実写でも「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art 」は、ザワつきを感じない非常に美しいぼけが得られる点に筆者は強く引かれています。
なお「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art 」以前に発売された「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art 」と「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art」の絞り羽根が11枚です。これに対して「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art 」の絞り羽根が、さらに1枚多い12枚となっているのは、この美しいぼけをさらに強調したいという設計者の意図なのではないかと思っています。
当然12枚羽根の絞りの影響で「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art 」は形も、質も美しいぼけが得られることはいうまでもありません。高い解像力にプラスして、頭1つ抜け出した美しいぼけが「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art 」の魅力といえるでしょう。
予算さえ確保できれば、すべての人におすすめしたい標準ズームレンズ
SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art / Sony α 7R III / 105mm /シャッター速度優先AE(F2.8、1/80 秒)/ISO 800 /露出補正:+1.0EV/ WB:オート/クリエイティブスタイル:ビビッド
レンズを向けると謎のポーズを披露してくれた長男を望遠端105mmの開放F2.8で撮影。4歳児の産毛まで描写する解像力と単焦点レンズのようななめらかなぼけが魅力です。
初心者からプロまで誰が使っても性能を発揮してくれる1本
SIIGMAを代表する高性能標準ズームである「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art 」や「SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art」と比較しても、同等以上の解像力を発揮し、単焦点中望遠レンズを彷彿させるような美しいぼけが得られる「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art 」は超おすすめのレンズです。
実際に人物をメインとした室内イベントの撮影にも実戦投入したのですが、24-70mmF2.8でちょっと寄り切れないシーンでも望遠端の105mmは多くのシーンで力を発揮してくれます。また、やや暗いシーンでも開放のF2.8は確実にシャッター速度を稼いでくれます。
広角端が28mmで24mmスタートの24-70mmF2.8クラスに比べると物足りないのでは? という意見もあると思いますが、確かに24mmと比べると28mmは実際のところやや画角が狭いです。しかし、筆者の場合、28mmよりも広角が必要なシーンは24mmがほしいというよりは20mm以下の超広角がほしいシーンであることが多く、広角ズームレンズへの交換で問題を感じることはありません。
それよりも「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art 」はズーム全域で最短撮影距離がわずか40cm。望遠端の105mmでは最大撮影倍率が1:3.1(0.32倍)と近接のマクロ性能が非常に高いのが予想以上の使い勝手のよさにつながっています。人物メインの撮影なら表情をアップでとらえるのはもちろん、瞳や手、口などといったパーツのアップもより印象的に撮影可能です。
SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art / Sony α 7R III / 28mm /シャッター速度優先AE(F2.8、1/80 秒)/ISO 1250 /露出補正:+1.0EV/ WB:オート/クリエイティブスタイル:ビビッド
広角端28mmの絞り開放F2.8で撮影した1枚。掲載したサイズではわかりづらいかもしれませんが、肌の質感はもちろん、水面に浮かんだ髪の毛1本まで描写しています。
また取材用レンズという意味では、お店取材などでフードや小物の簡単なテーブルトップ撮影では一般的な標準ズームでは焦点距離やクローズアップ性能の不足で100mmマクロレンズに交換していたシーンでも「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art 」はレンズ交換なしにそのまま撮影できてしまいます。非常にラクです。
高解像でぼけも美しく、ズーム倍率が高いのに明るく、近接撮影にも強い「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art 」は、プロやハイアマチュアにとっては理想の標準ズームレンズですし、これから撮影をはじめるような初心者が使ってもあらゆるシーンで、その高い利便性と高性能を発揮してくれます。
弱点は実勢価格が20万円を超える点とほぼ1kgとなるレンズの重さだけに思えます。しかし、筆者は8時間以上ほとんど休みなしの撮影に「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art 」を使用しましたが、重さが気になることはありませんでした。
そうなるとハードルは価格だけということになるのですが、細部までを指摘するなら、広角端の周辺光量落ちと望遠端では開放付近の軸上色収差はまったく気にならないレベルとはいえないでしょう。
とはいえ「SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art 」は、使い勝手と高画質・高性能がいままでにない高いレベルでバランスしたすばらしい標準ズームレンズに仕上がっています。予算が確保できれば、筆者が現在もっともおすすめする標準ズームレンズです。すごくいい。