マッツ・ミケルセンが「母国の映画」の強みを語る!『愛を耕すひと』公開記念“間違いない”デンマーク映画4選
マッツ・ミケルセン主演『愛を耕すひと』
アカデミー賞 国際長編映画賞デンマーク代表
あのマッツ・ミケルセンが母国デンマーク開拓史の英雄を演じる主演最新作『愛を耕すひと』が、2025年2月14日(金)より全国公開となる。
第62回ベルリン国際映画祭でふたつの銀熊賞に輝いた、18世紀デンマーク王宮を舞台にしたラブストーリー『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(12)以来となる、ニコライ・アーセル監督と“北欧の至宝”マッツ・ミケルセンの二度目のタッグが実現した本作。ふたりが再び描くのは、時を同じくしたデンマーク開拓史の裏に隠された、ある愛の物語だ。
原作は、イダ・ジェッセンによる史実に基づく歴史小説「The Captain and Ann Barbara(英題)」。発売前に読んだアーセル監督が感銘を受け、マッツに声をかけたことで本作の企画が動き出す。そして、『悪党に粛清を』(14)、『ライダーズ・オブ・ジャスティス』(20)など、これまで多くのマッツ出演作に携わってきたアナス・トマス・イェンセンも脚本に加わり、壮大で美しい一大叙事詩を見事に映画化した。
本作はアカデミー賞国際長編映画賞デンマーク代表に選出、ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に出品されるなど、北欧のみならず世界で高く評価されている。マッツ演じる主人公ケーレン大尉の、荒野を覆いつくす冷たい氷がやがて溶けていくかのような繊細な感情の移ろいと、言葉以上に多くを物語る豊かな表情ひとつひとつに観客は息をのみ魅了されることだろう。
マッツが母国の映画を語る!「物語さえ、しっかりしていれば」
いまやハリウッド作品で活躍の場を広げるマッツ・ミケルセンだが、最新作『愛を耕すひと』をはじめ母国デンマーク映画にも定期的に出演。“北欧の至宝”と称されるだけあって、国際的な俳優となった現在も北欧の作品に出演し続けるマッツは、デンマーク映画の魅力ついて以下のように語る。
デンマークは小さな国だし、デンマーク語を話す人も多くない。だから必然的に観客も限られている。さらに壮大な映画を作る予算もないから、ストーリーがしっかりしていないといけないんだ。
物語さえしっかりしていて、そこに意識を集中させれば、自然といい作品に仕上がる。デンマーク映画は何十年もその手法を貫いてきた。必要だからでもあるが、それがデンマーク映画の強みとも言えるね。
デンマーク映画の「物語力」の強さを強調するマッツ。たとえばアカデミー賞国際長編映画賞を受賞した『アナザーラウンド』(2021年)では、“血中アルコール濃度を一定にするという実験を行うと何が起きるか?”という風変わりなネタを扱ったり、豪華キャストでハリウッドリメイクもされた『THE GUILTY/ギルティ』(2018年)では緊急通報ダイヤルの音声をメインに最小限の挙動で濃密なサスペンスを構築するという、唯一無二の作家性や感覚を駆使した語り口が話題となった。
また、ある青年の過酷な難民体験をアニメーションだからこその革新的な表現で綴った傑作ドキュメンタリー『FLEE フリー』(2021年)は、アカデミー賞で長編アニメ・長編ドキュメンタリー・国際長編映画賞に同時ノミネートという快挙を達成。そして“デンマーク史上もっとも不穏な映画”と評された『胸騒ぎ』は、日常のありふれた場面から発展する恐怖を衝撃的な展開と不穏な作風で描き、ハリウッド版リメイクも今年スマッシュヒットした。
どの作品も自国に留まらず、様々な海外映画祭で高い評価を得て世界中で話題となったデンマーク映画たちだ。リメイク作がことごとく高評価を得ていることからも、脚本やストーリーテリングの質の高さがうかがえる。
ということで、『愛を耕すひと』の公開を記念し、これまで世界中で高評価を得てきた“間違いない”デンマーク映画を4作、紹介したい。
“物語力”がウリ!高評価&面白いと話題のデンマーク映画4選
『アナザーラウンド』(2021年公開)
2012年アカデミー外国語映画賞にノミネートされた『偽りなき者』のトマス・ヴィンターベア監督と主演マッツ・ミケルセンで再タッグを組んだコメディ。冴えない高校教師マーティンと同僚3人は、“血中アルコール濃度を一定に保つと、仕事の効率が良くなり、想像力がみなぎる”という理論を証明するため、実験を始めるが……。
第73回カンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクションに選出されたほか、第78回ゴールデングローブ賞の最優秀外国語映画賞にノミネート、第93回アカデミー賞ではトマス・ヴィンターベアが監督賞にノミネートされたほか、見事、国際長編映画賞を受賞した。
監督:トマス・ヴィンターベア
出演:マッツ・ミケルセン、トマス・ボー・ラーセン、マグナス・ミラン、ラース・ランゼ、マリア・ボネヴィー
『THE GUILTY/ギルティ』(2019年公開)
「電話からの声と音だけで、誘拐事件を解決する」というシンプルな設定ながらも、予測不可能な展開で観る者を圧倒させ、第34回サンダンス映画祭では、『search/サーチ』(NEXT部門)と並び、観客賞(ワールド・シネマ・ドラマ部門)を受賞。その後も第47回ロッテルダム国際映画祭 観客賞/ユース審査員賞、第44回シアトル国際映画祭 監督賞の受賞などに加え、世界中の映画祭で観客賞を総なめにした。第91回アカデミー賞®外国語映画賞 デンマーク代表にも選出された。
視覚情報がない中、劇中に溢れる様々な“音”の中から、犯人を見つけ出すことができるのか―。これはあなたの予想を遥かに超える、未だかつてない映画体験となる。
監督・脚本:グスタフ・モーラー
出演:ヤコブ・セーダーグレン
『FLEE フリー』(2022年公開)
第94回アカデミー賞にて、史上初となる国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞の3部門同時ノミネートの快挙を成し遂げた、デンマークほか合作によるドキュメンタリー映画。
英題である“FLEE”とは危険や災害、追跡者などから(安全な場所へ)逃げるという意味。主人公のアミンをはじめ周辺の人々の安全を守るためにアニメーションで制作され、いまや世界中で大きなニュースになっているタリバンとアフガニスタンの恐ろしい現実や、祖国から逃れて生き延びるために奮闘する人々の過酷な日々、そして、ゲイであるのひとりの青年が、自分の未来を救うために過去のトラウマと向き合う物語を描く。
監督:ヨナス・ポヘール・ラスムセン
アニメーション監督:ケネス・ラデケア
『胸騒ぎ』(2024年公開)
第38回サンダンス映画祭でワールドプレミア上映されるや「今年最も不穏な映画」、「ミヒャエル・ハネケを彷彿とさせる」と、想像を絶する衝撃的な展開と不穏な作風が大きな話題になり、各国の映画祭を席巻。メガホンをとったのは、デンマークの新たなる鬼才クリスチャン・タフドルップ監督。脚本も手がけた本作で描くのは、ある善良な家族が過ごす悪夢のような週末――。そんな本作に『M3GAN/ミーガン』、『ゲット・アウト』など数々の大ヒットホラー映画を手がける米ブラムハウス・プロダクションズが惚れ込み、ジェームズ・マカヴォイ主演のリメイク版も日本を含む世界でスマッシュヒットした。
監督・脚本: クリスチャン・タフドルップ
出演:モルテン・ブリアン、スィセル・スィーム・コク、フェジャ・ファン・フェット、カリーナ・スムルダース
『愛を耕すひと』 2025年2月14日(金)より全国公開
孤独で寡黙な男が“家族”の存在で変化する姿に感涙
18世紀デンマーク。退役軍人のルドヴィ・ケーレン大尉は、貴族の称号を懸け、ひとり荒野の開拓に名乗りを上げる。しかし、それを知った有力者フレデリック・デ・シンケルが、ありとあらゆる手段でケーレンを追い払おうと躍起になる。
襲い掛かる自然の脅威とデ・シンケルからの非道な仕打ちに抗いながら、彼のもとから逃げ出した使用人の女性アン・バーバラや家族に見捨てられた少女アンマイ・ムスとの出会いにより、ケーレンの頑なに閉ざした心に変化が芽生えてゆく……。
本作でマッツが演じるのは、母国デンマーク開拓史の英雄ケーレン大尉。“貴族の称号”を懸けてひとり荒野の開拓に挑んだケーレンは、自然の脅威と有力者からの非道な仕打ちに抗う中で、同じ孤独を抱えた女性たちと出逢い徐々に心を通わせていく。ケーレンのそんな人間らしい変化を、言葉ではなく繊細な表情で魅せるマッツに注目だ。
監督:ニコライ・アーセル
脚本:アナス・トマス・イェンセン、ニコライ・アーセル
原作:イダ・ジェッセン「The Captain and Ann Barbara(英題)」
出演:マッツ・ミケルセン、アマンダ・コリン、シモン・ベンネビヤーグ ほか
『愛を耕すひと』 は2025年2月14日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開