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災害時のためだけに用意しないで! 日常の延長上から取り入れる、正しい「食料備蓄」の方法

月刊総務オンライン

災害時のためだけに用意しないで! 日常の延長上から取り入れる、正しい「食料備蓄」の方法

今大災害が起こったら、ライフラインが使えない中で1日、3日、1週間と生きていくことができますか? 本連載では、十分な備蓄がない中でも、身近にあるものをうまく活用することで自分や大切な人の命を守るライフハック、防災グッズのレビューなどを防災士がお届けしています。今回のテーマは、特に冬には必ず備えておいてほしい防災グッズと、正しい食料備蓄の方法についてです。

ガスボンベ1本で約60分使用可能。備蓄は1人1日1本程度を目安に

前回取り上げた通り、冬の防災を考える上で重要なのは、寒さによる低体温症を考慮し、事前に対策をしておくこと。そこで必ず備えておきたいのは、カセットコンロとガスボンベです。

カセットコンロとガスボンベは、被災経験のある方の多くが「あってよかった。助かった」という防災グッズの一つです。災害時にもしもこれらがあれば、お湯を沸かせます。つまり、災害時の食の選択肢が増えるということ。特に冬場は、温かい食事を取ることで体も温められます。また、第1回でご紹介した簡易湯たんぽなども用意できるようになり、低体温症対策にもなります。

お湯が使えると食事の幅が広がり、ライフラインの寸断中も暖を取ることができる

人命救助のタイムリミットが72時間(3日間)であることを理由に、企業には努力義務として、帰宅困難者などが最大3日間滞在できる程度を備蓄しておくことが推奨されています。ガスボンベは、1本で約60分使用可能。1人当たり1日に1本、もしくは2日に1本を目安に、適切な本数の備蓄を進めていきましょう。

食料備蓄はローリングストック&健康維持が基本

そのまま食べられるもの、水だけで食べられるもの、お湯で調理して食べられるものなど、食料備蓄は幅広く取りそろえておくことが重要です。そして、さらに大切なポイントが2つあります。

1つは、「ローリングストック」です。ローリングストックとは、災害時のためだけに非常食を備えるのではなく、日常的に食べるものを少し多めに買っておき、常に3日~1週間分の備蓄がある状態をつくり出す備蓄管理の手法です。賞味期限が近いものや長く保存できないものから先に消費し、なくなった分だけ新たに買い足すことを習慣にすれば、日常の延長上で自然に備蓄していけます(図表)。

図表:ローリングストックのポイント

もう1つは、災害時でもできるだけ「健康」を心掛けることです。近年注目されている言葉に、「健康二次被害」があります。健康二次被害とは、災害時に必要な栄養素が十分に取れず、体調を崩してしまうことをいいます。野菜や生物が手に入りにくい災害時には、どうしても炭水化物過多になりやすく、そのほかの必要な栄養素が不足しがちになります。

防災食は日常消費が原則。普段から食べていれば、好みを把握しておくこともできる

とはいえ、差し迫った状況下においては、健康など二の次になってしまうものです。だからこそ、日頃から栄養バランスを考慮して備蓄をしておくのがとても重要です。「まごわやさしい」をキーワードに、以下のようなものを普段から多めに買ってストックしておきましょう。

 ・ま:豆類。タンパク質や食物繊維が摂取できる。豆の乾物や水煮、缶詰など

 ・ご:ごまやアーモンド、クルミなどのナッツ類。ミネラルが摂取できる

 ・わ:わかめなどの海藻類。ビタミンやミネラルが豊富。乾燥したものがオススメ

 ・や:野菜類。ビタミンやミネラルが豊富。根菜類や水煮、フリーズドライがオススメ

 ・さ:魚類。タンパク質やミネラルが摂取できる。缶詰や煮干しなどがオススメ

 ・し:しいたけなどのキノコ類。ビタミンや食物繊維が豊富。乾物や水煮など

 ・い:イモ類。ビタミンやミネラルが摂取できる。そのままで長期保存可能

オススメの防災食「五養粥」をレビュー

5種類の味があるため、飽きずに食べやすい。それぞれ栄養バランスも考慮されている

日常的に食べられる、そして、災害時にも健康を維持しやすいという2つのポイントを考慮し、今回は養命酒製造株式会社の「五養粥」を試食してみました。五養粥は、お湯を注ぐだけで手軽に食べられるフリーズドライのおかゆです。5種類の味があり、それぞれに体を整えてくれる和漢の素材がバランスよくブレンドされています。

五養粥 赤 三種のハーブ&トマト味。洋風な味わいで、チーズなどを入れてもおいしそう

さまざまな栄養素がバランスよく含まれるため少量でも満足感があり、何よりどの種類も味がおいしいのは、防災食としてもうれしいポイントです。フリーズドライなので、最大19か月保存可能な点も◎。

ただし、もともと置き換えダイエット用の食品として開発されているため、災害時にはチョコレートやようかん、ナッツなど、ほかのものでもしっかりとカロリー補給が必要になりそう。これだけ用意しておけば十分というわけではないものの、日常食の延長として、ストックに取り入れてみても良さそうです。

  

普段から口にしないものは、災害時にもなかなか食べられないものです。そのような意味では、防災食に「慣れておく」ことも大切です。期限が近い備蓄品を活用し、ローリングストックの一環として、定期的に試食会などを設けるのも良いでしょう。近年では防災食やレトルト食品、缶詰なども非常に多様化していますので、ぜひいろいろと試してみてください。

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