青少年援助ホーム「夢見館」 行き場ない若者に食住提供「実家のように過ごして」
貧困や虐待、非行などさまざまな事情で行き場所を失った若者の自立を支援しようと、一定期間、安価に食住を提供している場所が横須賀にある。NPO法人「FlyingtotheFuture」(同市長瀬)が運営する青少年援助ホーム「夢見館」だ。昨年4月に開所し、これまで7人の自立を後押してきた。「次世代を担う若者が社会からこぼれ落ちないように」。浜田修理事長(44)は巣立った子らが未来に羽ばたく日を願い、手を差し伸べ続けている。
市街地を望む丘の上にたたずむ築約50年の一戸建て。ここが困難を抱える若者らが集う砦だ。
木造2階建てで、1階は食事をしたり休息するスペース、2階には入居者が自室として使うための6〜7・5帖の洋室3室があり、生活に必要な家具や家電を備える。
定員は原則3人。対象は概ね22歳までを想定しているが、子育て中の一人親など世帯での入居も可能だ。平日の朝夕は食事も提供し、光熱費やインターネット使用料などは無料。月々の家賃は「実家暮らしの若者が家に納める程度」を想定し、下限を3万5千円に設定した(収入などに応じて最大5万5千円)。
「ここは入所者にとっての”家庭”なんです。僕が父親、料理を作るスタッフが母親。時々小言もいうけど、温かく見守る存在が若者には必要だと思う」。若者の境遇を説明しながら、浜田理事長が目を細める。
養護施設の「後」は
かねてから地域貢献の一環として市内の児童養護施設に関わってきた。開所のきっかけは、施設を出た後の支援が行き届いていない現実を知って。「施設職員に出所後の子どもたちのことを尋ねたら『知らない』と返ってきた。社会を知らず施設に出戻りする子もいる。出所後のケアが圧倒的に足りていないと気が付いた」。知る限り、市内にある自立援助ホームはわずか1カ所だ。新たな宿り木を作ろうと、2022年12月にNPO法人の認可を取得した。
重視するのは、入居者にどう自立してもらうか。ホームはあくまで一時的な場と位置づけ、職員は24時間常駐せず、洗濯や片付けなど日頃の生活に必要な作業は入居者自身にやってもらう。
今年5月から入所する女性(19)は鑑別所を出所後、家族から身元引受を拒否され保護観察所づてに辿り着いた。「ここの大人はみんな優しくて居心地が良い」と関係者への感謝を口にする。
「みんな本当に良い子なんです。次世代を担う若者の苦難を見て見ぬ振りをしたくない」。施設の運営は赤字続きで昨年は100万円以上を自費から充てた。それでも未来のためと、できる支援を続けていくつもりだ。
問い合わせは浜田理事長【メール】ftf.23.oh@gmail.com、またはインスタグラム(「jiritsusien.npo」で検索)へ。