「出戻り転職」成功のコツは?【motoさんのお悩み相談室】
ビジネスパーソンが抱える仕事やキャリアの悩みに、転職・仕事のプロがお答えする「お悩み相談室」。
今回のテーマは「『出戻り転職』成功のコツは?」です。労働人口の減少を背景に、一度退職した人を再度雇用する「アルムナイ採用」が注目を集めています。企業側は即戦力人材を採用でき、人材育成のコストを削減できるといったメリットがあります。
求職者にとっても「新たに仕事を覚える手間が少ない」「よく知っている人間関係の中で仕事ができる」などのメリットがある一方で、一度辞めた会社に戻ることに不安を抱く人も少なくないでしょう。
今回質問にお答えいただいたのは、新卒で地方ホームセンターへ入社後、マイナビやリクルート、スポットライト(現:楽天ペイメント)など7社を経験されたビジネスパーソン・motoさん。
「安易な出戻り転職はおすすめできない」と話すmotoさんに、出戻り転職が頭をよぎったときに何を考えるべきか、お話を伺いました。
Question
「出戻り転職」成功のコツは?
2年前に3度目の転職でECのベンチャーにマネージャーとして入社、現在新卒から7年勤めた大手アパレルヘの出戻り転職を検討しています。1社目は会社も仕事も好きではありましたが給料面が不満で、2社目でIT企業に転職し年収アップを果たしました。そこでは3年勤務し、リーダークラスにもなれました。
出戻り検討の経緯は、現職での悩みが転職でしか解決できず、それを1社目の部長に相談したところ、フィットするポジションを紹介してもらえたためです。仕事内容や職場環境はおそらく満足できる一方で、年収ダウンする点、部長ヘの昇進が険しい道のりになる点がデメリットとしてあります。
新卒からずっとマーケティング・PR系の仕事で、今後もマーケ職のキャリアを極めたいと考えています。出戻り転職でマネージャーを目指す場合のキャリア構築のコツ、気をつけるべきことはありますか。
(EC/PRマーケティング/2年目/35歳男性)
安易な出戻り転職は危険。出戻り転職にあたって、まず考えるべきこと
前提として、「よく知っている会社で安心感があるから」と、居心地の良さを求めて安易に出戻り転職をするのはおすすめできません。出戻り転職は本来、一度外に出て経験やスキルを身につけ、それを持って元の会社に戻ることで一気に年収やポジションを上げるのが目的です。例えば新卒でリクルートに入社した人がGoogleに転職してキャリアを積み、マネージャーとしてリクルートに戻ってくる、といった状況です。
それを踏まえ、出戻り転職をするときには、この先のキャリアにおいて出戻り転職がプラスになるかどうかをよく考えてみるべきです。もし出戻り後に「やっぱり年収の低さに納得できない」といって、また転職することになったらどうでしょうか。
次の転職先を探そうとしても、職務経歴書を見た企業からすれば「あっちこっち行って、この人は何がしたいのだろう」と見えてしまいます。キャリアに一貫性がないと捉えられかねません。ですので、出戻り転職によって自分が理想とするキャリアを築いていけるのか、しっかりと考えた方がいいと思います。
安心できる環境と理想のキャリア、どちらを取るか
今回のケースを見ると、理想のキャリアとしてはこれから年収も役職も上げていきたいのだと思いますが、出戻り転職ではそれを実現できません。むしろ年収は下がってしまうため、客観的に見ると出戻り転職をするメリットはないと感じます。
昇進に関しても、おそらく今回は役職なしでの転職ではないでしょうか。アパレル業界の役職者の平均年齢は低いでしょうから、同年代の社員はすでに役職に就いている可能性が高いです。その中で自分だけが役職なしで働くことに耐えられるのか、よくよく考えてみてください。
もちろん、以前働いていたため仕事内容や人間関係、会社の内部事情などにも精通していて、安心して働ける環境ではあるでしょう。安心できる要素と年収や役職を上げたいという理想のキャリアを天秤にかけたときに、どちらを選ぶのかという話だと思います。
出戻り先のオファーを持ちつつ、ほかの転職先も考えてみては
個人的には、出戻り先のオファーを確保した状態で、ほかの転職先も探してみるのがおすすめです。今後のキャリアにおいて年収アップと昇進が目標なのであれば、それが叶う転職先がないかどうか、一度視野を広げてみるのもありではないでしょうか。
ほかの企業からもオファーをもらった上で、どの企業を選ぶか考えましょう。もし出戻り転職を選択するのであれば、年収アップや役職といった自分の理想を叶えられないか、出戻り先の企業と交渉してみると良いのではないかと感じています。
プロフィール
moto(戸塚俊介)
1987年長野県生まれ。新卒で地方ホームセンターへ入社後、マイナビやリクルート、スポットライト(現:楽天ペイメント)など7社を経験。自身の転職経験をもとにした転職ノウハウやキャリア観などの発信がSNSを中心に話題に。現在はmoto株式会社、HIRED株式会社の2社を経営。
代表著書 『転職と副業のかけ算(扶桑社)』『WORK価値ある人材こそ生き残る(日経BP)』 企業サイト moto株式会社/HIRED株式会社 X(旧Twitter) moto (戸塚俊介) ブログ 転職アンテナ